シールド消滅
シールド消滅
シボラの地下シェルターには、人々が避難した際に人間の生活に必要な物の他にも臨時の公共施設やクラン財閥の関連施設などが設けられている。
シボラ宇宙局の臨時観測所もここに設けてあり、スタッフ全員でメインスクリーンに映し出されている小惑星の映像をじっと見守っていた。
「シールド到達まで後六十秒、…四十秒、……時空振動確認、……シールドが消滅します」
オペレーターがレーダーの解析データを読み上げた。
「何だと!! 破壊ではなく消滅だと? 一体何が起こった!?」
所長が勢いよく席を立ち上がって叫んだ。
「原因は不明、コンピュータ解析にも回答なし、大きな振動エネルギーを確認」
オペレーターも必死にデータ分析のためキーボードを打っていた。
アナム小隊は空間円陣の陣形を保って待機していた。小惑星は摩擦熱によって徐々に赤く変色し、そのあまりの巨大さに隊員の誰もが恐怖を感じていた。
「シールドが消滅した! オールウェポンズフリー! インサニア発射!!」
アナムの号令で全機が小惑星に向けてインサニアを集中照射した。だが一射目では小惑星の一部が砕けただけで、小惑星の外形は全く変化がなかった。
「クソッ、全然駄目だ!! 全員、拡散に切り替えろ!!」
アナムはいつになく冷静さを失っていた。彼はまるで厚い巨大なコンクリートの壁を、拳で破壊しようとしているような気分になっていた。
「駄目だ!! 落下速度が思ったより速い、このままだと置いて行かれる!! シボラが焼かれる!!!」
レアードはインサニアを乱射しながら大声で叫んだ。
「少しずつ破壊できてるけど、形は殆ど変わってない!!」
ナディムは怯えて自分の声が震えているのを感じた。
「このままじゃ、摩擦熱でも溶けない! そのまま落下しちゃうぞ!!」
レックスは身体中が汗塗れになっていることに気づいた。
「俺がやる!! 俺が止めて見せる!!」
シャナスはスラスターを全開にして小惑星の前にアウルムを進めた。
「何をする気だ、シャナス!!?」
アナムにはシャナスの行動の意図が理解できなかった。
「……皆、後のことは頼む! もう破砕は無理だ! こうなったら一か八かしかない。俺は死んでも皆を守ってみせる!!」
シャナスは小惑星の底部のほぼ中心に取り付いた。彼は両手で小惑星を持ち上げるような姿勢になり、スラスターを全開にして押し返そうとしていた。
「止せ、シャナス!! 止めろ!! 無理だぁあ、無茶なことをするなぁあああ、シャナスぅうううう!!!」
アナムの涙がヘルメットの中に飛散した。
「イヤァアアアア!!! 止めてぇええええ!!!」
クレアは大粒の涙を散らしながら甲高い叫び声を上げた。
「駄目だ、作戦は失敗だ!! 作戦を中止する! 全員、退避ぃいいいい!!! アーマードクーラーで機体を冷やしつつ降下姿勢を取れ!!」
アナムは隊員の生命を優先するため作戦の中止を宣言した。
「ラジャー!」
電波状態が悪く、誰が応答したのか分からなかった。モニターの映像も乱れ、小惑星の状態もシャナスがどうなってるのかも見えなかった。
小惑星は真っ赤に燃えながら、物凄い速さで地表へ向かって落下して行った。
宇宙観測所ではメインスクリーンに映っている巨大な小惑星を、誰もが呆然と見上げていた。
「小惑星、さらに加速。落下推定地点、シボラ北東部約十一km。後九十秒ほどで地表に衝突します。全員、衝撃に備えて下さい! …六十秒、…三十秒、……」
オペレーターも緊張しながらデータを読み上げていた。だがカウントが中断された。
「ど、どうした!? 何も起こらんぞ!!?」
所長はスクリーンに映る巨大な小惑星の映像を凝視したまま動かなかった。
「小惑星、……停止しました」
時間が止まったような静寂の中で、オペレーターの音声だけが部屋に響いていた。




