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シボラの雪  作者: 新条満留
第三章 戦いの中へ
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混迷する世界

混迷する世界


首都ワシントン・国際連邦――

 『国際連邦』は国際連合の弱体化による解散後に、『北アメリカ連邦』が盟主国となって世界を新たな形で結束させるための国際機関として発足した。それは歴史の反省から単なる国際機関に留まらず、国際連邦政府によって統括し加盟国を一つの連合国家と見なして運営するより強力な国際組織であった。

 しかしその頃、既に世界のパワーバランスは崩れてしまっていた。特に国力を付けて新たに世界の表舞台に台頭してきた国が多いユーラシア大陸の国々は、アメリカ大陸を中心に結成した国際連邦に対する反発心が強かった。そこでユーラシア大陸の国々は国際連邦に対抗するため『ルーシ連邦』という大陸最大の国家を盟主国として、緩やかに結束した連合国家である『革命連合』という国際組織を成立させた。

 これら二大陣営のどちらにも加盟することを躊躇ちゅうちょした多くの国々もあった。それらの国々はそうした共通の利害の一致から新たな国際機関を幾つか発足させて二大陣営にくみしない意志を示したが、結局は長続きせず僅かな中立国を残して殆どの世界の国々はこの二つのどちらかの陣営に吸収される形で収束した。

 その後、世界は『限界問題』という人類存続の危機を巡る世界論争が起こり、火星への移住計画が急速に推進された。だが新鉱物『ブリオングロード』が火星で発見されたことから情勢は急転し始めた。地球の二大陣営がその所有権を巡って争い始めたのだ。最初は小規模な局地戦で始まったこの戦いは、やがて世界のあらゆる地域を戦場にして争う全面戦争へと発展していった。二度に及んで行われたこの戦争は、主戦場が宇宙だったことから『宇宙戦争』と呼ばれた。また、それらの戦争は『ブリオングロード』に端を発した戦いであったことから別名『ブリオングロード戦争』とも呼ばれている。

 そして地球で二大陣営が争い合っている間に、火星の『コロニー・シボラ』が地球の支配からの独立を表明した。地球の二大陣営はそれを承認せず、シボラはそれら双方からの攻撃を受けることになった。その戦争を『シボラ戦争』という。だが火星が謎のシールドに覆われ地球からはその姿も存在も確認できなくなってしまい、その戦争はそのために頓挫とんざせざるを得なくなった。地球からはそのシールドが虹色に見えることから地球側ではこれを『レインボーシールド』と呼んだ。

 だが今、地球は『限界問題』の他に新たな脅威がこの数ヶ月の間に世界を混乱に陥れていた。局地的な原因不明の嵐の後に白い雪が降り、人々がそれに触れると紅い鉱物化――つまりブリオングロード化されて、そして雪が集まってできた謎の怪物が出現し、鉱物化した人々を跡形もなく消し去るという事件が相次いだ。

 『国際連邦』は世界非常事態宣言を発令し、連邦軍を加盟国の主要都市に派遣したが、その怪物は攻撃を受けてもその身体が再生されてしまい、連邦軍の攻撃は通用しなかった。そして怪物の身体に生えている刺による攻撃で軍は全滅してしまうという悲惨な状態だった。それは『革命連合』側も同じだった。

 『国際連邦』と『革命連合』はそのために十六年に及んだ『第二次ブリオングロード戦争』を休戦すると共に軍事同盟を締結し、互いに事態の原因究明と打開のための相互提携条約を結んだ。だが、事態は一向に好転せず悪化するばかりだった。通常攻撃が全く通用しない敵では何の対策も施せず、そうかと言って核攻撃では被害も大きく環境汚染の問題も出て来る、その正体、発生原因、そして倒し方も分からずに世界は混迷していくばかりだった。

 『国際連邦』のネール大統領は連邦議会の席で演説を行った。

 「世界は今、人類滅亡の危機を迎えています! 『限界問題』は解決するどころか火星がその姿を消してしまったことで、『ブリオングロード』が手に入らず汚染は拡大しています。その上、正体不明の怪物が突然現れ人々をブリオングロード化して食らうという事件が世界を闇に包み込もうとしています。その怪物は『ブリオングロード』が多く存在する場所にやって来て人々を襲う、ということがこれまでの調査で明らかになってきています。つまり、あの怪物は火星と何らかの関係があることは明らかです。もしかするとこの怪物事件はシボラ人の陰謀かもしれません。いいえ、そうに違いないのです! 従ってシボラ人を滅ぼさない限り、あの怪物は人類を襲い続けるでしょう。

 シボラ人は人類の敵です! そして火星は地球のものです。我々は一刻も早くシボラ人の手から火星を奪い返し、地球に平和を取り戻さなくてはなりません。そこで火星に最も近い『宇宙ステーション群アーズ』の一つ『ゼーナ』に、地球の技術の粋を集めた『プロトンミサイル』を地球から移送し、火星への攻撃を準備しておくことをここに提議致します!」

 議場に大きな拍手が鳴り響いた。議員は全員が立ち上がってネール大統領を讃えた。


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