妹
妹
シャナスが帰宅すると、家の中から話し声が聞こえてきた。彼は母と二人暮らしで、来客があるのは珍しいことだった。話し声はあまり使用されたことのない応接間から聞こえてきた。彼は話しの邪魔にならないように静かに二階にある自分の部屋に向かった。
彼は部屋に入ると、山から持って来たブリオングロードの原石をポケットから取り出した。彼はベッドの縁に座って、それをしばらく見つめていた。
「こんな物が争いの元になるなんて…」
シャナスがそう呟いた時、部屋の扉が突然勢いよく開いた。
「ねえ、そんな物見つめて何考えてるの?」
見知らぬ少女が部屋に入って来るなり、彼の手にしている石を見て訊ねた。
「! …お、お前は誰だ!?」
シャナスは突然のことに驚いて、石をベッドに置いて慌てて立ち上がった。
「初めまして、シャナス! 私の名前はリアよ」
少女はそう名乗って部屋を見回した。
「一体何者なんだ!? どうしてここにいる!? ここは僕ん家だぞ!」
シャナスは怒鳴った。
「今日からは私の家でもあるのよ」
リアと名乗った少女はそう言ってズカズカと部屋の中に入って来た。
「な、何を言ってるんだ!?」
シャナスは呆然としてリアを見つめた。その時、彼の母カレンが部屋に入って来た。
「シャナス、帰ってたの? リアちゃん、ここにいたのね?」
カレンはリアに近づいた。
「母さん、これは一体どういうこと?」
シャナスは事態が呑み込めず母に訊ねた。
「あら、ごめんなさいね、紹介するわ。今日からあなたの妹になるリアちゃんよ」
カレンはそう言ってリアの背後に立つと彼女の両肩に手を乗せた。
「どういうこと…、そんなこと聞いてないぞ!」
シャナスは眉根を寄せて声を荒げた。
「私も今日、初めて知らされたのよ。『アルフ細胞研究所』から連絡があったの」
カレンはリアを見下ろしながら言った。
「…『アルフ細胞研究所』って…それじゃあ…」
シャナスはリアに憐れみの目を向けた。
「安心して、シャナス。私は実験体じゃないよ」
リアは笑顔で言った。
「リアちゃん、シャナスは今日からあなたのお兄さんよ。『お兄ちゃん』って呼ばなくちゃね」
カレンは優しくリアを諭した。
「はい! お兄ちゃん、今日からよろしくね!」
リアは無邪気に言った。
「ちゃんと話してくれ、母さん! 訳が分からないよ!」
シャナスはリアをちらっと見てから、母に視線を移して言った。
「そうね。じゃあ、下に行きましょ。丁度、夕飯の時間よ。皆で食べながら、お話ししましょう」
カレンはそう言うとリアと共に彼の部屋を出て行った。
「妹って……」
シャナスはそう呟くとベッドに置いた石の方に視線を移した。




