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91:どうやら変態が現れたようです。

 ナツメを探して彼の下に行くと、周囲のプレイヤーと職員NPCを交えて談笑なんかやっていた。

 う、羨ましい。知らない連中と、こうも簡単に話しができるなんて。


「ナ、ナツメ。何の話、してんだ?」


 俺、頭いいな。知らない奴等に声書けるのは緊張するんだから、知ってる奴に声掛けて、それでしれっと輪に入ればいけるんじゃね?

 っという下心など知らないナツメは、俺たちに今上がってる話題について教えてくれた。


「ハウスシステムについて話してたんだ。せっかくだしさ、自分達が住む家が欲しいねって」

「お、おおおお! 俺もつい先日、要望出そうと思ってたシステムだぜっ」

「あ、やっぱり思うよねぇ〜」

「俺なんて、もう要望済みだ」


 キ、キタアァァァ!

 早速知らない人に声を掛けられたぞっ。


「んねぇねぇ、ハウスシステムって、なぁにぃ?」



 相変らず肩車から降りようとしないアオイが、後頭部に顎を乗せて興味深そうに尋ねてくる。

 うーん、NPCのアオイにどう説明したものか……。


『ハウスシステムというのは、冒険者の皆様が快適にこの世界を過ごせるよう、住居を建てる事を言うのです。冒険者の間での、通称のようなものですよ』


 っと、クラウドがアオイに説明してくれた。

 さすがNPC。上手く説明したもんだ。


「お家!? カイトはお店屋さんの出来るお家が欲しいんだぉ!」

『はい。カイト様はポーション屋さんをやりたいそうですので、店舗兼住居案を提案いたします』


 アオイと受付嬢の言葉で、ハウスシステムの話題が更に盛り上がる。どうやら『家』の事ばかりで、店舗の話題はまだ出ていなかったらしい。

 まぁ技能持ちじゃないと、必要の無い部分だもんな。


 集まっているプレイヤーの中にも生産技能持ちはいた。ナツメもだ。


「でもさ、ずっと店番してると、狩りに行けなくなるじゃん? だからさ、自動露店みたいな機能は欲しいよな」

「お、俺は、自動露店使ったことなな無いけど、やっぱ便利ななのか?」


 き、緊張する。

 でも頑張るぞっ! ここで好印象与えておけば、友達大量ゲットのチャンス!!


「そりゃー便利だよ。接客しなくていいんだぜ」

「そ、そうか。接客しなくていいのか――ん?」


 接客しなくていい。つまり他人と関わらない。

 あれ?

 俺のぼっち脱却計画としては、無駄な機能じゃね?

 店番する必要が無いなら、俺が生産する意味、あんのか?

 ぼっち脱出計画を見直さなきゃならなくなる……。

 

『カイト様。自動店番機能が備わった店舗だとしても、それを利用するかしないかは店主の自由ですから』

「え?」

『あ、いえ。カイト様は人との関わりを持ちたくて、生産を選択されたのですし、もしかして人と一切関わらないシステムになるのではないかと危惧しておいでのようでしたし』


 な、なんだと!

 俺の心を見透かしやがった!


 い、いや、そんな事より。そうだよな、システムがあるといっても、店舗イコール無人システムって事じゃないんだ。

 狩りと店舗を両立させる為には、今まで通り空いた時間にちょこっと店を出せばいいんだよ。うん。


「サンキュー。お前の言う通り、自動機能オンリーのハウスシステムになるんじゃないかって、ちょっと不安になった」

『いえ。カイト様がご安心してくださって、よかったです』

「アオイもお店やさんするぉ〜」

「あぁ。お前が店番したら変な客増えそうだけどな……」


 っと、ぼそりと呟く。

 が、今までは受付嬢やアオイのお陰で、本当に速攻で完売していた。だから直ぐに狩りにも行けてたし、自動機能使わなくても不便だとも思っていない。

 まぁ俺一人で店番する時にも、あのぐらいの速度で完売できればいいんだが……。


 更に店舗案は進化していく。

 工房に通うのが面倒。――なら、店舗奥にでも自分専用工房を取り付けられるようにする。

 家を何処に建てるのか。――プレイヤー専用のタウンはどうか? 各町から自由に移動が出来るようにするば、拠点は一つでも行動範囲は自由にできる。

 共同店舗。――複数のプレイヤーが一軒をシェアし、店舗スペースもシェア出来る様に。


「店舗のシェアが出来るなら、生産してないプレイヤー用にもシェアハウス欲しいわね」

「だな。正直、一人で一軒の家とか意味ねーよ」


 っという意見も出てくる。

 うんうん解るぜ。他のネトゲでハウスシステムあったが、夢のマイホームってのは建ててる最中は楽しいもんだ。

 リビングは広い方がいいとか、2階にアイテム置き場作って、コレクションルーム作って、寝室作って……

 が、結局利用するのはリビングに置いたアイテム収納棚だけっていうね。

 1LDKあれば十分だな。いっそアパートでいいよ。


「俺はギルドルームにしたいから、大きな家が建てられると助かる」

「家を建てるとなると、まずは土地の購入ってのが定番じゃん? その土地を複数同時購入すれば、それにあったサイズの家を建てられればいいんだよ」

「建てるのが面倒くさい人用に、建売住宅も欲しいなぁ」


 そんな話を聞いていると、ふと妄想が浮かんだ。


 1階は共同店舗。飯屋も開けるほどの広さ。2階部分はアパート的なシェアハウス。

 ポーション屋より、ぼっち脱却率が高そうだよなっ!

 しかも友達に囲まれて三食昼寝付きだぜ!


『なるほど。解りました。今お話し頂いた内容は、全てリアルタイムでマザーがお聞きしておりました。

 なかなか楽しいシステムになりそうだと仰っております。皆様のご要望全てにお答えできるかは解りませんが、早急にハウスシステムの実装を行うとお約束してくださいましたよ』


 金髪を掻き揚げ、クラウドがふっと笑う。

 何故か周囲で湧き起こる黄色い歓声。

 だが同時に俺も内心では歓声を上げた。


 ハウスシステムの実装。


 これが確定したのだから。






「アオイちゃんにもさ、受付嬢さんみたいにメイド服着せれば、ポーションが何千本あっても即完売しそうだね」


 なんていうナツメの言葉が事件を起す。

 

 そろそろ会場を閉鎖するというクラウドの言葉に、素直に従ってギルドの建物へと戻っていくプレイヤーたち。

 俺たちも移動しながら、店舗兼住宅の話題で上のような会話に。


「いやいや、こいつにメイド服とか着せたら犯罪だろ。ただでさえ変なのに目を付けられやしないかと、心配だってのに」

「お父さんだねぇ〜」

「ちげーって」

「うふふぅ。カイト、やっぱりアオイのととさまかもぉ〜?」

「違う(キリッ」


 結婚もしてないのに親父とか、嫌ですからあぁっ!


『アオイ用の衣装ですか……残念ながらサイズ的に……』

「いや、真剣に考えなくていいから」


 顎に手を充てて考え込む受付嬢に横からツッコム。


「でもさ、ずっとこの服――いや、肌着? のままじゃアレでしょ。これじゃまるで、ほら、昔のアニメでさ、北欧かどっかの高山に住んでる女の子が出てくる……誰それが立った〜みたいな。あの女の子みたいだよ」

「――うわっ。そう言われてみると、まさにソレじゃん!」


 小さい頃にはアニメなんか見れなかったのもあって、じいさんが死んでからたまに放送されてた「懐かしのアニメ」系は全部見ていた。

 懐かしいなんてレベルを超えた古い物だったが、必ず紹介されるアニメに今のアオイとそっくりな服装の女の子がいた。


「女の子なんだし、可愛い服も着せてあげなきゃ」

「か、可愛い……ねぇ」


 自慢じゃないが、女の子の服のセンスなんてまったくねーぞ。

 ちらっとアオイの方に目をやると、尻尾をぶんぶん振ってキラキラした眼差しでこっち見てやがるしっ!


「か、可愛い服、アオイも着たいのか?」

「うんっ」


 即答ですか!

 更に――


「だったら私に任せて!」


 っと、鼻息の荒い女が目の前に立ちはだかった。

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