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86:入浴(前)シーン。出血大さーびす。

「えーっと、もう一度説明してくれる?」


 から揚げを買い、ピザを買い、それから果汁100%ジュースを買い宿へと戻る頃、丁度ナツメもやってきて合流した。

 合流するやいなや、俺に肩車されたアオイを見て硬直。

「娘さんですかーっ!?」なんてアホな事を抜かすので、アオイだと説明したが首を捻って納得できないご様子。

 人通りのある所で変化させるのもなんだし、宿に戻って変化させてから軽く説明したのが数秒前だ。


「だから、アオイは月光の森に住む聖なる獣って奴の子供で、母親は九尾なんだって」

「うん。それは解った。解ったけど、人化できるわけ?」

《できるわけだぉ〜》


 っと言って白煙を上げて幼女に変化するアオイ。

 幼女に化けるというより、人の姿だったらアオイはこういう容姿――というものらしい。

 かーちゃんすっげー美人だったし、巨乳だったし、アオイも将来あんな風になるんだろうか。


「……カイト君。胸の大きな人が好きだって話だったけど、実は貧乳ロリ好きだったのか!」

「っちげーし! なんでそういう解釈なんだよ。俺はただこいつの母親に頼まれて、外の世界を見せてやってるだけだし!」

「外の世界にはから揚げがあって凄いんだぉ!」


 ……から揚げ以外にも興味を持ってください。

 このまま里帰りさせて、外の世界の感想をお袋さんが聞いた時「から揚げが美味しい」なんて答えてみろ……俺、絶対喰われるぞ。


「九尾って、つまりNPCなんだよね?」


 ナツメはアオイに聞えないよう、ぼそっと呟く。

 そこはなぁ、やや疑問ではある。


「モンスター扱いだったら、じっと見ればレベルとか名前が表示されるはずなんだよな。けど――」

「出てこなかったの?」


 出てこなかった。当然、アオイもそういったデータ的なものは表示されない。

 出てこないからNPCと判断するしかない。


「まぁ戦闘可能だとしても、勝てそうに無い雰囲気だけどな。例えるなら、レイドボスみたいな」

「ははは。それは勝てないや。レイドはまだ未実装だし、そうだとしても今は戦闘になったりしないだろうけど」

「だな」


 はははとナツメと笑い合い、チラっと受付嬢を見る。こいつの反応次第でレイド戦の実装の有無が解るかもしれん。

 で、受付嬢はというと――目線を逸らしやがったっ!

 じ、実装予定……いや、もしかして近日中とか?


 レイドなんて糞食らえだ!

 ぼっち……いや、ギルド未所属なソロプレイヤーや小規模ギルドなんかには、縁の無いコンテンツだからな。

 あんなもの、大手ギルドがレイドボスを独占しちまうし、人数揃えないと攻略できねーし、しかも雑魚ばっか集めてもやっぱクリア出来ないしで、一部のプレイヤーにしか恩恵が無いんだぜ。


「レイドなんて一部ギルドがレア独占するだけだから、いらねーコンテンツなんだよ。な? ナツメもそう思うだろ?」

「え? ボクは知り合いのギルドに混ぜて貰ってレイドやってたから……あると嬉しいなぁ〜」

「え?」


 な、仲間だと思っていたのにぃー!

 他所のギルドに混ぜて貰う……そんな事できるのか?

 どうやって? 自分から混ぜてって頼むのか? ソロやぼっちプレイヤーもレイドに参加できたりするのか?


「え? え? ボ、ボクの場合、野良パーティー組んでフレ登録した相手が、たまたま大手ギルドのギルドマスターになっちゃった人だったんだよ」

「おおおおおぉ! 大手ギルドマスターとお友達だったのか!」

「正確には、フレになった時点ではまだギルドすら立ち上げてなかったんだけどね」


 なるほど。たまたま知り合った相手が、後に大手ギルドのマスターになったってパターンか。

 ちょこちょこパーティーを組んだりして遊んでいたらしく、ギルドにも誘われたが気楽なソロが良いって事で断ったらしい。

 レイド戦が実装されると、人手が足りないからと向こうから誘ってくる事があったと。

 誘いを断った相手なのにレイド戦に呼んでくれるとは、なかなか親切なギルドマスターだな。


「中堅ギルドとかもね、案外外部から人を呼んでレイド戦するなんてこともあるんだよ」

「マ、マジか!」

「まぁある程度見知った相手限定だけどね」

「……だよなぁー」


 やっぱ顔見知りぐらいか、誘われるのなんて。


「やっぱぼっちには無用なコンテンツじゃないですかぁー!」

「あははははは。やっぱりカイト君でもレイドは参加してみたいんだ」

「そりゃあ、激レア装備が手に入るかもしれぇんだぜ? 俺に限らず、誰もがやってみたいだろう」


 攻略できるかどうかはおいといて。

 俺の中のレイド戦っていえば、超巨大モンスターが暴れて、それを倒すのに何時間も戦闘を続けるってイメージだ。

 複数のパーティーで連携し、戦闘不能者続出して攻略困難な事も多々ある。

 そんなギリギリのやりとりが何時間も続くとか……


『カイト様。興奮なさっておいでですね』

「っぷるっぷるしてるぅ〜」


 脳内妄想を妨害するかのように、アオイが俺の尻尾の先を掴んでは離し、掴んでは離しと遊びだす。

 止めて差し上げて。そこ、敏感なんだからっ。






 持ち込んだ飯を食い終わり、宿の一階にあるという風呂へと向った。

 いやぁ、まさかゲーム内で風呂に入れるとは。バスタオルなんかは宿で用意されているからと、従業員NPCが言っていた。


「そういえばボク、ずっとお風呂なんて入ってなかったなぁ」

「あぁ、俺もだ」

『ワタクシもです』

「アオイも〜」


 ……全員風呂に入ってなかったのか。臭いとかは未実装なんだろうか。

 いや、植物や料理の匂いはあるんだ。体臭が未実装なだけか。このまま体臭は未実装なままでいてください。


「えーっと、女風呂が向こうで、男風呂はこっちだね」

「ゲーム内でも流石に男女分かれてるのか」

『ご一緒のほうが良かったですか?』


 俺とナツメが同時に振り向く。

 受付嬢の奴。普通にサラっと、凄い事を言いやがったぞ。

 見ろっ、ナツメの耳の先まで真っ赤じゃないか。俺の耳は毛に覆われているから、赤くはならないぞっ。その代り、尻尾の毛が逆立ちまくってるが。


 別に男女別な事に苦情を言ってるわけじゃない。ゲームなんだから入り口だけ同じで、風呂エリアが自動生成されるなんて仕様でもいいじゃん? その方が宿の間取り的にも優しいだろ?

 っと言いたかったのだが。まさかここで混浴がよかったかなんて聞かれたら――いいいいいや、何も考えまいっ。


「じ、じゃ、また後でな」

『はい』

「アオイもカイトと入るぅ〜」

「「ダメです!」」

「ぶぅ〜」


 アオイを連れてなんかいけるかっ。この中にはプレイヤーという野獣がひしめき合ってるかもしれねーってのに。

 ナツメも同じように考えているのか、全力でダメ出しをしている。

 受付嬢にアオイの事を任せ、俺はナツメと男湯の扉を開いた。


【お好みの風呂タイプをお選びください】


 扉を開いて真っ先に飛び込んできたのはシステムメッセージ。続くメッセージは――


【檜風呂|(14)】

【五右衛門風呂|(3)】

【露天風呂|(19)】

【ジャグジー|(7)】

【普通の風呂|(15)】


 だ。

 括弧内は中に入っている人数だろうな。


「ナツメ……一番気になるのは、普通の風呂なんだが」

「奇遇だね。何がどう普通なのか、ボクも気になってるところだよ」

「じゃあ……」

「うん。行こう」


 宙に浮かぶ選択肢から【普通の風呂】を選んで一歩を踏み出した。

 その先にあったのは……木の棚。それと、棚の中には見た目がプラスチックな網カゴだ。なんつーか、昭和の銭湯みたいなイメージだな。

 棚の前に行きカゴに手をかけると、突然カゴの中にバスタオルが現れた。

 なるほど、用意されてるってのはこれの事だな。親切にバスタオル以外にもう一枚、普通サイズのタオルが置いてある。


「さて、どうやって服を脱ぐのかね――」

「脱ぎ方はここに書いてあるよ」


 そう言ってナツメが壁を指差す。

 そこには大きなポスターに、服の脱ぎ方が丁寧に説明されていた。


「えーっと、まずはタブレットで装備を解除する。……はい、したっと」


 装備を解除すると、親父シャツにトランクスという出で立ちになる。なんだこの、リアルでも定番のチェック模様は。しかもチラ見したナツメのとは、柄が違うぞ。無駄に凝ってんじゃねぇよ。

 あとは親父シャツとトランクスを普通に脱いで、タブレットのに突っ込む――っと。


「つまりシャツもトランクスも、アイテム扱いなのか」

「みたいだね……」


 ならば、タオルを腰に巻いてトランクスを脱ぐか。


 ……あ?


 巻け、ないぞ?

 タオルが、こう……腰に巻きつけられない。届かないのだ。

 おかしい。もしかしてカロリー摂り過ぎて太ったのか!?


「っぷ。カイト君。その尻尾……」

「尻尾? ……あぁぁぁっ!」


 尻尾の分だけおヒップがアップしていましたとさ。

さーびす終わり。

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