表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/160

75:友情の証。どうしてこうなった?

 俺、もしかしてやっちまっただろうか?

 掲示板の反応を見る限り、おっぱいが重要視されているようにしか見えない。

 だだだだだって仕方ないだろっ!

 装備画像が必要なんだぞ?

 受付嬢の装備っつったら、ブレストアーマーとショルダーガードじゃん? その二つが映るように撮影したら、どうしてもバストアップばっかりになるじゃねぇか。

 俺が悪いんじゃない!

 下心があった訳じゃない!

 俺は、俺はあぁぁぁっ。


『カイト様。掲示板の反応はどうでしょうか?』

「っはひ!? あ、え、あ……」


 こいつにはまだ掲示板を見られてないようだ。み、見せる訳にはいかない。


「な、流れが速いからな。少し触れられただけだが、まぁ上々じゃねえかな。うん」

『左様でございますか。ワタクシもどんなコメントが寄せられているのか、見て――』

「あぁぁぁぁぁっ! ほほほほら、北の村にもう一度行こうぜ。な? 豚骨貰いにさっ」

『博子様へのお土産ですね。解りました』


 っほ。

 なんとか話題を逸らせたな。


「よし、じゃ……おい、アオイ。行くぞ」

「ん? はいおぉ〜」

「んじゃソルト。ちゃんと宣伝はしといたからな。客が来るかどうかは、お前の武具のデザインセンス次第だ」

「それに関しては何の心配もいらないな」


 どこからそんな自信が湧いてくるんんだ? まぁ確かにデザインセンスはいいけど……。

 なんとなくモヤっとする。

 まぁいいや。

 今度こそ目的を忘れないように、しっかり豚骨をGETしねえとな。


「んじゃ露店でおやつでも買って、出発するか」

『はい。しかしカイト様よろしいのですか?』

「ん? 何がだ」


 店を出ようとする俺に、受付嬢はソルトを指差して告げた。


『ここへ来た目的は、装備の強化素材を聞くためだったのでは? 情報料の変わりにお店の宣伝まで引き受けましたのに』


 ……あ。


 はっとなってソルトに視線を向けると、奴はニヤニヤ笑いながらこっちを見てやがった。

 こいつ、知ってて何も言わず送り出そうとしてやがったなっ。


「ちゃ・ん・と、教えやがれっ」

「わかったわかった」


 詰め寄ってソルトの首根っこを掴むが、意外な事に赤い警告メッセージは出てこない。

 別に殴ろうという意思は無いが、それをちゃんと判断して警告の有無を出してんのか。


 ソルトから教えてもらった強化素材は何種類かあった。全部が必要なんじゃなく、その内のどれかがあれば良い。もしくは複数用意できれば、その分良い物が出来る。

 っという話だ。


「採掘で取れるものもあるし、モンスターから奪えるアイテムもある。北に行くってんなら、森に生息するバーニングニードルの針とかお勧めする」

「バーニング……随分かっこいい名前だな」

「その森には裁縫素材を落とす奴もいたはずだ。親父は今、お袋と買出し行って居ないから確認は出来ないけど」

「イチャラヴだな」

「あぁ……2人で店番するようになって、更に……な」


 なんか疲れたような顔をするソルト。両親が仲良すぎると、子供は大変みたいだな。

 そのうち弟か妹ができるかもしれん。という愚痴をソルトから聞いていると、後ろの扉が開いた。


「あ、あのー。よ、鎧を見せてくれませんか?」


 扉からひょっこり顔を覗かせたのは、犬耳の女の子だった。

 え? まさか掲示板の書き込み見て来たのか?


「ど、ど、どうぞっ!」

「あ、ありがとうございます。あ、あのぉ、ケモミ族サイズの鎧で、その、可愛いのじゃなく、かっこいいデザインのとか、ありますかね?」

「ケモミ族用か。そ、そうだなぁ。ケモミ族だと小さいサイズだから、どうしても、その、子供っぽいのが多いな。あ、でも、ご希望があれば手を加えたり、いちから作るぜ?」

「本当ですか!? あの、レベルは――」


 おぉ、早速客かよ!

 あんなおっぱいスレみたいな所から、まさか女の子が来るとはなぁ。

 それとも偶然か?

 なんにしても、ソルトの奴、嬉しそうだな。


『お客様が来て、よかったですね』

「感謝しろよ」

「するのだぁ〜」


 恩着せがましく俺たちが揃って言うと、ソルトが満面の笑みを浮かべてやって来た。

 よっぽど嬉しいんだな。

 そして俺の肩に腕を回すと――


「感謝してるぜ、友よっ」


 っと、白い歯を光らせて言った。


 ん?

 今、『とも』っつったか?

 それはお友達の『友』でつか?


 にこにこ笑っているソルトの顔に、【『ソルトとの友情』称号を獲得しました】というメッセージが浮かぶ。






------------------------------------------


【ソルトとの友情】

 鍛冶職人ソルトと友情で結ばれた証。

 

------------------------------------------



 意味不明な称号をゲットしてしまった……。NPCと友情を築いてどうするんだ、俺。

 もやもやしたまま店を出て露店通りへと向う。その途中、俺たちをガン見するプレイヤーと何度もすれ違った。そいつらが向っているのも、あの防具屋方向だ。

 工房にっていう可能性もあるが……まさか掲示板の記事のお陰で奴の店が大繁盛――なんて事に?

 もしそうなったら、今度たっぷりお礼をして貰おうかね。


『カイト様、何か良いことがございましたか?』

「尻尾ぉ〜、ぶんぶんだよぉ」

「良いことがあった訳じゃない。だが、未来で良いことがあるかもしれない。っさ、北に向うぞ。どうせだから、北の森関係のクエストを探しに支援ギルドに行って見るか」

『左様でございますね。報酬のあるクエストがあればよろしいですね』


 そこ、大事だよな。

 昨日の連続クエストは報酬無しだったからなぁ。昨今のネトゲじゃ、手紙を届ける程度のお使いだって経験値やらアイテムやら、金の報酬があるってのに。

 経験値は俺個人としては要らない。モンスターと戦って得る方が、なんかレベルアップしてるなぁって実感湧くからな。

 でも、金やアイテムは正直欲しい。特に今だと豚骨なっ!


 露店で食い物を物色する前に、冒険者支援ギルドへと寄る。

 昨日に引き続き、建物前はギルドメンバー募集広場と化してるな。

 手当たり次第――な感じの連中数人から声を掛けられ、その度に尻尾が嬉しそうに反応してしまう。

 でも直ぐに、『声を掛けるのは誰でもいい』な連中だと知ると、尻尾はしゅんっと垂れてしまう。

 やっぱ『俺』を必要としてくれる方が嬉しいもんな。

 必要とされてるからと言って、昨日の『ムーンプリンセス』みたいなギルドは願い下げだけど。


 建物内に入ると、こっちも昨日同様に列が出来ている。

 ちらっとカウンターを見て、昨日のオレンジ色の髪のNPCを見つけ、反応が面白いのもあって彼女の列に並ぶ。


「昨日より人が多いな」

『はい。ギルドがようやく機能し始めましたので、日増しに利用者は増えていくでしょう』

「ここで何するか?」

「ん〜、何と言われても。えっとな、ここはその……冒険者に仕事を紹介する場所なんだ。あと、冒険者同士の仲間を探したりとかな」

「ふぅ〜ん」


 頭上から聞えるアオイの声は、興味無さそうな有りそうな、よく解らない声だった。

 あっちこっち見てるようで、体が揺れるたびに俺の首に負担が掛かる。狐モードだったらもう少し軽いからまだ良いんだが、幼女モードはちょっときついな。

 ここで狐モードに変化されても困るが、あとで人気の無い所に出たら狐に戻ってもらおう。


 ようやくオレンジNPCの前まで進むと、俺と受付嬢が並んで椅子に座った。


『こんにちは、カイト様。昨日のクエストは無事にクリアされたようですね。おめでとうございます』

「あぁ、ありがとう。んでさ、昨日のあの村か森で出来るクエストが無いかと思って」

『了解いたしました。ではカイト様のレベルで受諾可能なクエストを検索いたします』


 そう言ってオレンジNPCがタブレットを操作する。

 検索はすぐ終わったようで、タブレットを俺たちのほうに向けて一覧を見せてきた。

 幾つかあるみたいだな。


『一番上のクエストは、村の復旧作業です。これは村と、周辺の町の食品組合の方々が雇い主となるクエストです』

「食品組合?」

『はい。食品を取り扱うご商売をされている方が所属する組合ですね。もちろんプレイヤーの方では――』


 そこまで言うと、彼女の後ろから男が割って入って来た。


『『E-11111SA』……あ、いや…………』


 色白で金髪碧眼の男は、まるで執事のような服を着ている。男版のサポートNPCって訳か。

 受付嬢を見ているようだったが、イーイチイチイチ……なんの暗号だ?

 男は暫く黙って受付嬢と見つめあうと、今度は受付嬢の奴が立ち上がって頷いた。


『カイト様。所用がございますので、少しだけ席を外させて頂きます』

「え? あ、ああ。どうぞ」

『10分ほどで戻ってきますので、お待ちください』


 そう言ってスタスタと建物奥へと歩いていった。

 別にNPC専用の扉ではなく、プレイヤーも普通に入っている扉を潜り――そして見えなくなった。

 同時に金髪の男も、NPC専用だろうカウンター奥の扉を潜って見えなくなる。


『『E-1111……』あ、いえ、受付嬢様には、その……』


 オレンジNPCは小声で俺にだけ聞えるように囁く。


『先ほどからデータの不具合が出ておりまして。あ、プレイヤーの方にどうこうという不具合ではありません。自動的に処理できる伝票データが自動にならず、手動でしか登録できなくなっていたんです』

「事務処理的なものか。それをあいつに直して貰おうと?」

『はい。『E-11111SA』は最初期からのスタッフですので、とても優秀なのですよ』

「へぇ〜。君にとっちゃ先輩にあたるのか」

『先輩? 先輩とはなんでしょうか?』


 真顔でずいっと近寄ってくるオレンジNPC。

 先輩後輩の言葉も知らないのか。いや、まぁNPCには必要ないか。


「えーっと、先輩ってのはなぁ」


 言葉の意味を教えようとしたら、何故か物凄い量の視線を感じた気がする。

友達増えました~っ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ