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70:娘が出来ました。

「さっさと村に戻ってクエストを終わらせるか」

「でももう23時過ぎちゃってるわよ? 寝てるんじゃない?」

『左様でございますね。現実と違い、ゲーム内には電気などもありませんし、暗くなれば寝るというスタイルがほとんどだと思います』

「マジかよ。明日までクリアはお預けか……」


 一度カジャールに移動して、宿でも取るか? って話をしている最中、ふとある事に気づいた。

 さっきからココット先生の声が、一度も聞こえないんですが?


「まさか、ココットの奴……」

「え? ココット? あれ、そう言えばあの子、随分静かに……あっ」


 ココットを探して周囲に目をやると、地面で丸くなって寝てるじゃねーか!


『我に、何故自分で助けに行けないのかと尋ねた直ぐ後に、眠っておったぞよ』

「うへっ、その頃から!?」

『睡魔ゲージが既に出ていたのでしょうね』

「もう信じられない。こんな所でぱったり倒れて寝るなんて」


 エリュテイアがココットの下に駆け寄り、揺すって起そうとするがビクともしない。

 熟睡モードです、はい。

 担いで帰るにしても、森の中をモンスターと戦いながらじゃちと厳しいな。しかもココットは回復の要だし。

 担ぐとなると……俺かクィントがその役になるだろう。

 俺にしてもクィントにしても、ココットに次ぐ回復要員だ。しかも2人揃ってもココット並みの回復量は出せない。

 うーん、こりゃ森を抜けるのは至難の業だぞ。

 

「どうする? ココット抜きでの戦闘は、正直厳しいと思うんだけどよ」

『カイト様、クィント様が『リターン』をお持ちなのでは?』

「おぉ! そうじゃん!! そういやあいつも神官だったんだよな。破壊僧っていうまったく別の職業なんだって思い込んでたぜ」

「じゃ、2人の所に戻りましょ」


 エリュテイアが眠ったままのココットを担ごうと、肩に手を伸ばしている。

 いくらケモミが小さいとはいえ、エルフもそれほど大きくは無い。

 俺が寄ってって、おんぶを促すポーズをして見せると、エリュテイアが眠ったままのココットを背に乗せてくれた。


「大丈夫?」

「あぁ。ナリが小さいから、やっぱ軽いな」


 そしてもと来た道を引き返そうと一歩を踏み出す。

 ――が、足に何かが絡まって重い。

 言わずと知れた幼女子狐だ。


「ははさま、わたし、ととさまと外の世界行きたいっ」

「おい、俺はお前の親父じゃねーと言っただろ。それに、お前みたいなちびっこが外の世界なんて、危ないからダメに決まってるだろ、ですよね九尾さん?」


 笑顔(のつもり)で九尾の方を見る。

 娘を叱って諭してやってくれよ。


『カイトというたな?』

「あ、はい」

『娘を頼むぞよ』

「あ、はい。……えぇー!? ちょ、え? なんで?」


 嬉しそうに跳ね回る幼女子狐の尻尾が、右に左にと大きく揺れるのが見える。

 俺の尻尾は今、尻の付け根から垂れ下がっているに違いない。






 聖なる獣は一つ所に留まっている訳ではないらしい。

 知識を広める為に外の世界を旅し、多くを学ぶ事が必要なのだと。

 異種族の事であったり、世界の理であったり、いろいろ見聞きする為に旅をする。

 その旅は主に、成長期に行われる。

 つまり人間でいうところの、子どもの頃だ。

 本来はもう少し大きくなってからというが、面倒を見てもらえそうな人が居れば頼んで連れ出してもらっているとも話してくれた。


 つまり、俺は子守役にさせられてしまったのだ。


 断っても良いと九尾が言ったが、唾液を覗かせた牙を見せられては、とてもじゃないが断れない。

 

「それで、カイトは、ロリコン、に、なったのね。っくす」

「ちげーよ。なってねーから。それよりも、だ」


 ウンディーネの泉の所までココットを背負い、頭に子狐を乗せて戻ってくると――

 星空を見上げていたみかんと、地面に寝そべっているクィントが居た。


「ゲームやってる時は4時ぐらいまで起きてるんじゃなかったのか?」

「エロ神官は、昨日、徹夜、してたそう。wikiとか掲示板とか、見てて寝てなかった、って」

『現実での睡眠不足が影響されているのですね。『リターン』使いが2人も眠ってしまうなんて、どう致しましょう?』

「どうって……2人も担いで森を抜けられねーぞ」


 担ぐだけなら出来る。クィントもエルフだからな、細いし、普通の男よりは軽いだろう。

 けど、そうすれば回復要員が皆無な状態で戦闘する事になる。エリュテイアや受付嬢はまだしも、HPが低く紙装甲のみかんは生きて森を出られないのは確定してる。


 もういっそ死に戻りでもするか?

 っと話し合って居た時に、泉の水が膨れ上がった。


《寝る、ここ、居てもいい。朝、まで、安全》


 盛り上がった水から声だけが聞こえてきた。

 ウンディーネがこの場所を寝床として提供してくれるっていうのか。

 この――何も無いただの芝の上で寝ろ、ってか。

 皆と顔を合わせて、俺とエリュテイアは大きな溜息を吐いた。もうそれっきゃ無いよな。

 エリュテイアに手伝ってもらいココットを下ろし、草の上に寝転がせた。エリュテイアは横に座り、もう一度溜息を吐く。

 俺は――どうすっかな。


 辺りを見渡し、時間をどう潰すか考える。

 睡魔ゲージはまだ表れそうに無いし、する事も無く暇でしょうがない。

 いつの間にか隅のほうにワープゲートのようなものが出来上がっていた。あれを潜れば迷宮の外に出れるだろう。外に出ればレベリングも出来る。

 けど、またここに戻ってこなきゃならないしなぁ。


「はぁ、せめて採取ポイントでもあればな」

「ととさま、採取って何?」


 足元でじゃれつく子狐。こいつ、こんな時間だってのに寝なくていいのか。

 あ、そういや狐って、夜行性だっけか?

 いや、でも昼間でも行動してる狐の写真とかあるよな。どっちなんだ。


「俺は親父じゃねーって。採取ってのはなさ、薬草を摘み取る作業の事だ」

「薬草? 薬草ある。いっぱい、あっちもこっちも、あるよ」

「んあ? あっちもこっちも? 本当か? うーん、まぁやってみるか。『ポイント発見』」


 技能を使うと、そりゃもう、目が眩むほど辺りが光りだす。

 す、すげぇ……。


『どうですか? カイト様』

「すげぇぞ。かなりの採取ポイントがある。よし、睡魔ゲージが出るまで、毟りまくってやるぜ!」

『ではワタクシもお手伝いします』

「わたしも手伝うぅ」

「暇。私も、やる。後で、ポーションに、して」

「あ、じゃあ私も」


 寝ているココットとクィントを放置して、俺たちはそれぞれ眠くなるまで草を毟りまくった。

 時間が時間なだけに『エナジーポーション』の素材になる『ソーマ草』が良く取れる。

 明日は村でクエストを終わらせたら、カジャールに戻って製薬するぞっ。

 その為にも、村での報告で連続クエが終わって欲しいと願う。

*前話の幼女化シーンに服装を加筆。

といってもワンピースって書いただけですが。

間違っても全裸じゃないですからねっ!

うっかり書き忘れて全裸認定されたら困るので……。

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