5:蒸着! いえ情弱の間違いです。
【アイテム名】クィーン・ニードル ☆
【備考】素材。雷属性を武器に付与する事が出来る。
【アイテム名】ハニィ・ティアラ ☆
【装備レベル】5
【効果】甘い香りのするティアラ。防御力+5。昆虫型モンスターから受けるダメージ10%OFF。
【アイテム名】ソルジャー・ソード
【装備レベル】4
【効果】片手剣。攻撃力+24
【アイテム名】ビーの羽
【備考】素材。
【アイテム名】ニードル
【備考】素材。
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クィーンハニィとビーソルジャーからのドロップだ。
素材はいいとして、ティアラってのが微妙すぎる。なんか見た目がなぁ……。
「なぁ、ドロップアイテムの名前の後ろにある星マークはなんだ?」
『はい。アイテムの等級を示すマークです。星が無いものがノーマル。星一つでレア。二つでミドルレア。三つですとレジェンドとなります』
あー、なるほど。
よくアイテム名の色なんかでレア度をあらわしてるゲームがあるが、『レッツ』では星マークなのか。
これはこれで解りやすい。
『ソルジャーソード』はノーマルか。手持ちの『初心者用の短剣』が攻撃力+7なので、それから見れば破格の攻撃力だ。
暫くはこれを装備してよう。
『ビーの羽』が16枚、『ニードル』は三つゲットしている。
レベルも6になってるし、ステータスを振っておくか。ついでに技能のチェックもしておこう。
「ちょっとステータスと技能のチェックしてるから」
『かしこまりました』
そういうと、受付嬢はその場に座り込む。
マザーとやらに死体の待機時間について報告でもするんだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:カイト
レベル:6
職業:初心者 / 種族:ケモミ族
HP:900 → 1750
MP:330 → 480
STR:18 → 28+8
VIT:17 → 17+12
AGI:18 → 23+8
DEX:15
INT:5
DVO:5
LUK:10
SP:10
●アクティブスキル●
『石投げ』
●パッシブスキル●
●修得技能●
【格闘:LV1→8】【忍耐:LV1→12】【瞬身:LV1→8】
【薬品投球:LV1】
【岩壁登攀:LV1】【ポイント発見:LV1】【採取:LV1】
○技能スキル○
『巴投げ:LV1』『ポーション投げ:LV1』
●獲得称号●
【レアモンスター最速討伐者】
◆◇◆◇◆◇◆◇
技能によるボーナスが有り難い。
俺が目指す盗賊職は基本、素早さが命だからVITに振ることはマズ無い。前衛職なのに、ヘタすると支援職よりHPが低いなんてザラだ。
【忍耐】技能のお陰でVITが増えるし、無駄に打たれ強い盗賊になれるかもな。
ただ問題は、ダメージを受ける事で【忍耐】がレベルアップしていたのを見ると、回避型職業にとってはレベルの上がり難い技能とも言える。
暫くはAGIにポイント振るのを我慢して、【忍耐】を上げるか。
称号の効果は――っと。
【レアモンスター最速討伐者】レアモンスターからのレアドロップ率の上昇。
うはっ。これ最高!
どのくらい確率が上がるのか要検証……はもう獲得しちまった称号だし、出来ないか。
ま、普通に考えたらゴミみたいな確率だろう。でなきゃゲームバランス的にまずいし。
たとえ1%の上昇だったとしても、0よりはマシって事だ。
次にレアモンスターと遭遇するのが楽しみになる。なるが――
今俺がすべき事は、
「うおおおぉぉぉぉぉっ」
『おめでとうございます。【採取】技能のレベルが上がりましたね』
1時間ぐらい採取しまくっただろうか?
アイテムボックスを確認すると、『小さなライフ草』が345枚、『小さなソーマ草』が75枚になっていた。
他にも『腐った草』が82枚あるが、何に使うか解らないが素材になるかもしれないし……捨てずに取っておくか。
「素材アイテムぐらいは、スタック数を増やしてほしいもんだな。いまだとアイテムボックスの1マスに99個までしかスタックできねーから、すぐに草でアイテムボックスが埋まってしまうし」
アイテムボックスは8×5マス、合計40マスが用意されているが、装備なんかは一つにつき1マス埋めてしまう。
初心者系の装備は一通り用意されているので、これだけでも9マス使っちまってるし。
素材だけでも6マス分だ。狩りをすればモンスターからのドロップアイテムがここに加わる。
「うん。やっぱ素材のスタック数増やしてくれねーと、アイテムボックスが圧迫するぞ」
『……シミュレートしました。確かに長時間、外で行動する為には所持数の上限を増やすか、スタック数を調節などが必要ですね』
「だろ?」
NPCも納得のこの状況。
アイテムボックス問題が解決するのを祈って、今はプレイ続行だ。
素材を持っていざ生産!
の前にレベルを10にしなきゃ、生産技能を獲得するクエストが発生しないからな。
「そっちの作業は終わったか? そろそろレベリングに戻るつもりなんだが」
『はい。マザーへの報告も済んでおりますし、大丈夫です』
「よし。じゃー下に下りるか」
足を踏み外す事無く崖を降りきると、【岩壁登攀】技能のレベルがあがった。
次は獲物となるモンスターを探すわけだが……ここいらはレベル5モンスターが生息するエリアだし、少し移動しねーとな。
タブレットの地図を開いて移動場所を決める。
できれば最初の町の近くに行きたいが……南東に移動するか。
『カイト様。ご質問よろしいですか?』
「なんだ?」
タブレットを投げ捨てるような動作をすれば、そのまま電子の藻屑となって消え去る。
南東に進路を取って歩きながら受付嬢の質問を聞いた。
『カイト様はチュートリアルを行わないのでしょうか?』
チュートリアル。
ネトゲなんかには必ずと言っていいほど存在する初期コンテンツだ。
任意だったり強制だったりあるが、このゲームは任意式なのでやるもやらないも自由だ。
当然俺は――
「やらない。必要ないからな。戦闘の仕方も他のVRと変わらないし、チュートリアルをクリアしたからって何か報酬がある訳でもないからな」
あんなもん、情弱な奴がやるもんだろ。
アイテムの取出し方、収納の仕方。戦闘の仕方にドロップの回収の仕方。
ゲームによって多少の違いがあっても、基本は変わらない。
プレイしてりゃそのうち覚えられる事だ。
っという事を歩きながら話す。
『なるほど。カイト様は適応力が高い方なのですね』
「そうか? 普通じゃね? まぁ俺もMMOやらVRMMOを10年やってるしな、慣れるのは早いのかも」
森を抜け草原へとやってくると、ようやくレベル6モンスターが見えた。だがこいつはスルーだ。
更に東に進んで、レベル8、9と新たなモンスターを目にする。
もう一度マップを開いて、アイシスの真東まで来た事を確認。
この東エリアは未実装だったのもあって、モンスターの分布図もまったく解らない。
進み過ぎるのも危険だし、何よりアイシスまでが遠くなる。
「ここでレベリングしよう」
『はい』
お互いに武器を構え、最初の獲物『ホワイトラビット』に斬りかかった。
《ッキュオ》
っく。無駄に可愛い声で鳴きやがって。
でも容赦はしねーっ。
俺のEXPになりやがれ!
新武器の威力は……なんとも微妙なものだ。
レベル4武器に対して、相手はレベル9だからな。まぁ仕方ない。
兎を躱し、後ろからソルジャー・ソードで斬り付ける。
短剣と違って、モーションがやや遅い。
やっぱり俺は短剣のほうが好きだな。
俺と受付嬢がそれぞれ3回攻撃したところで、ホワイトラビットのHPがゼロになった。
近くにもう一匹いるな。
足元の小石を拾い上げ、それをホワイトラビットに向って投げつけた。
これで奴はこちらに向って跳ねてくる。
接触前にドロップを回収し、すぐさま剣を構えなおした。
30分後、レベルが10になりアイシスの町へと向った。
レア武器の戦利品は無い。
ノーマル以上のドロップを通常のモンスターから出たっていう情報が無いんだよなぁ。
もしかしてレアモンスターやボスクラスの奴からしか出ないとか?
受付嬢にそれを聞いたが、答えられませんで一蹴されてしまった。
「唯一のレアはティアラだけか。これは売ってしまうか」
とはいえ、今の時点で所持金をいっぱい持ってる奴なんて居ないだろうし。
だからって先々で売ろうと思ったら、レベル5装備なんてゴミ屑化してるだろうしな。
自分で使うわけじゃないレアとか、スタートダッシュ直後だと微妙すぎんだよ。
いっそ受付嬢に装備させるか?
「これやるよ。男がティアラとか恥ずかしくて装備できねーし。売るにしても金持ちが居ない今だと、カスみたいな価格でしか売りに出せないし」
アイテムボックスから取り出したティアラを受付嬢に押し付ける。
彼女はきょとんとした顔でティアラを見つめたが、すぐに鉄仮面に戻って俺に視線を戻した。
『よろしいのですか? レア級の貴重な装備ですよ?』
「俺が装備したって似合わねーだろ。カスみたいな金にしかならねーなら、使ったほうがマシだ」
『……一度装備すると譲渡不可になりますが。よろしいですか?』
「よろしいよろしい」
さっさとアイシスの町に到着したい。
生産して転職して、それからまたレベリングして。やる事は幾らでもあるが、接続時間には限りがあるからな。
早足で西のアイシスに向け歩いていると、途中で受付嬢の声がした。
『あの、似合うでしょうか?』
早速装備したのか、俺にそう尋ねてくる。
似合うでしょうか……っと聞かれてもなぁ。
その頭装備は、どうみてもメイドキャップなままだ。
まさか遂に冗談を学習しやがったのか!?
『っは。も、申し訳ありません。ワタクシはどのような装備になろうと、見た目が変わる事が無いというのを忘れておりました』
早口でそう説明した受付嬢。
どうやら冗談ではなかったようだ。
「おいおい……じゃー、ちゃんと装備は出来てるのか」
『は、はい。カイト様に頂いたハニィ・ティアラはちゃんと装備できております。お見せできないのが残念でなりません』
両手を胸元で組み、まるでお祈りするようなポーズで熱く語ってくる。
心なしか頬は紅潮しているように見える。
いや、きっと気のせいだろう。
その証拠に、今は紅潮しているようには見えないからな。
それから5分ほど歩いてアイシスの町が見えてきた。
町の周辺は流石にプレイヤーも多いな。
特に壁に囲まれているとかいう訳でもなく、幾つもの建物が密集するアイシスの町。
比較的質素なイメージの木造住宅が多く、レンガ造りの建物は少ない。
一通りの店は揃っているので、最初の町としては十分だ。
俺は目的の場所、町の隅にある工房を目指した。
サブタイトルのネタってどうすればいいんでしょうね?
通し番号だけでタイトルつけなきゃよかったとか後悔することもあるとかないとか。
SF/VRMMOジャンルで10位に入れました!
ありがとうございます。
本日はあと1、2話更新しようかなーっと思っております。
明日から1話ずつの更新で暫くは毎日の更新が続くと思われます。
今後ともよろしくお願いいたします。