表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/160

4:ハニーフ○ッシュ♪

サブタイトル変更しました。年齢がバレるとかもうどうでもいいんですハイ。

 見た目は完全に蜂。

 ただし、でかい。

 頭から尻の先っぽまで、俺の身長と同じぐらいだ。

 189センチの高身長な俺サイズの蜂だぞ。しかも頭には豪華な冠まで被ってやがるし。で、手にはほっそい槍みたいなのを握っていた。

 指は無さそうだが、どうやって握ってんだ?


 とか考えてたら先制攻撃を食らう。


 手にした槍を突き出し、俺目掛けて突進してきやがったのだ。


「あっぶね! こっちはまだ戦闘準備も出来てないってのにっ!」


 横に跳んで咄嗟に攻撃を躱す。

 AGIステのお陰か、なんとか回避に成功。


《【格闘】技能がレベルアップしました》

《【瞬身】技能がレベルアップしました》


 おぉ、無駄に技能レベルが上がったぞ。回避行動で上がったみたいだな。


『カイト様。どうされますか?』


 どうされますかって、戦うしかねーだろ。

 それに、クィーンなんて名前がついてて冠まで被ってるとなると……。


「こいつ、レアモンスターだよな」


 レアモンスター。各エリアに極少数生息しているモンスターで、同レベルのノーマルモンスターより強く、倒す事でレアアイテムを落とす事がある。

 っと、公式サイトにも書いてあった。クローズドベータでは一度も見た事が無かったけどな。


『左様でございます。クィーンハニィ、レベル5のレアモンスターでございます』


 っち。レベル5か。

 戦闘状態になった奴の頭上に青いHPバーが表示される。

 勝てるか?

 いや勝つっ!

 レアアイテムが俺を呼んでいるっ!


 再び襲ってきたクィーンハニィの攻撃もギリギリで回避。

 左手でタブレットを呼び出し、アイテムボックスの画面を開く。そこに映し出される武器アイコンから、急いで『初心者用の短剣』をタップしてから手を画面に突っ込んだ。

 何かに触れた感触を確かめると手を引き抜き、その手に短剣がしっかりと握り締められている。


「ぶっ倒す!」

『カイト様。パーティーを組みますか?』

「へ? ……あ、そうか。お前も戦闘に参加するんだよな……じ、じゃー」


 パ、パーティーを作るなんて、俺、生まれて初めてなんですが?

 だが結成方法は知っている。

 どのゲームをプレイする時にも、ぼっち脱却に成功した時の事を想定して脳内シミュレーションしているからな。

 クィーンハニィの攻撃を躱しつつ、震える手でタブレットを操作。


「ま、まずコミュニティーアイコンをタップして――あー、蜂がウゼェ」

『ではワタクシが暫くクィーンハニィの注意を引きつけますので』

「あぁ、助かるよ」


 受付嬢は何食わぬ顔で短剣を掴むと、そのままクィーンハニィに躍りかかった。

 よし、今のうちだ。

 コミュニティー一覧から『パティー情報』をタップし、次に『パーティー結成』をタップ。

 パーティーを組むメンバーの名前を入力するんだが……本当に、受付嬢でいいのか?


「お、おいっ。メンバー名の登録しなきゃならないんだが、お前の名前って……」


 クィーンハニィの攻撃を華麗に躱す受付嬢に叫ぶと、返ってきた返答はまさに「受付嬢で結構です」というものだった。

 いいのかよ、本当にそれで……。

 命名しちまってなんだが、もう少しまともな名前を付けてやればよかったと後悔。

 ま、いいや。


[パーティーメンバー:受付嬢|…]――っと。


 OKボタンを押すと、マジでパーティーが組めた。

 視界の隅に所属メンバーの簡易ステータスが表示される。

 俺のステータスをコピーした物だって言ってたが、マジでHPとMPが俺と同じ数字だ。


『ありがとうございます。EXP(経験値)の獲得方法を公平に設定して頂けますか?』

「あ、あぁ。そうだな」


 言われて思い出した。このままだとEXPは、与えたダメージ量に応じて各々に分配される事になるって事を。

『パーティー情報』画面でEXPの獲得方法を公平に設定。

 確かレベル差が7以内なら公平設定にできるんだったよな。


「よし、これでオッケーだ」

『はい』


 っしゃー!

 人生初のパーティーだぜぃっ。

 但し相手はNPCだけどな……。






 クィーンハニィの攻撃は単調だった。

 所詮レベル5モンスターって事か。この辺りはまだ戦闘慣れしてないプレイヤーも多いレベル帯だし、それほど複雑な行動パターンは無いんだろう。

 槍を構えて飛んでくるだけのクィーンハニィの攻撃はわりと躱しやすい。

 時々回避しきれなくってダメージを受けるが、配給されている『初心者用ポーション』を飲んで凌ぐことができる。

 ――が、俺も受付嬢もゴミ火力だ。

 戦闘を開始して10分は経つが、やっと敵のHPを50%まで削ったところっていうね。

 途中、技能レベルが上がったというメッセージが何度か流れた。


「これでレアアイテム出さなかったら、正直泣くぞ」

『ハンカチ、必要でしょうか?』


 ……。いらねーし。

 なんていうか、さすがと言うべきか。受付嬢には冗談がまったく通じない。

 全てが糞真面目な返事ばかりだ。

 ちょっと疲れる。


 だが今は文句も言ってられない。

 俺と同じステータスのお陰で回避は6割以上をキープできてるし、ゴミ火力とはいえ戦力にもなっている。

 正直、これソロだとクィーンハニィのHP5割削るのに20分は掛かってる計算だしな。


 クィーンハニィが上空に舞い上がり、槍を突き出して降下してきたところを、体を反転して躱し、返す刀でもって斬り付ける。

 奴が振り向き様に懐に飛び込むようにして更に一閃。

 そのまま奴の体を蹴り上げ、ばくてんの要領で距離を取る。

 着地と同時に奴の懐へと飛び込み、気合と共に叫んだ。


「お前をぶっ倒す!」

《ブブブブ。キシェーーッ》


 お?

 こっちの言葉でも解ったのか、やけにご機嫌斜めなご様子だ。

 っふ。親衛隊の居ない女王様なんて、哀れなもんだな。


《ブブブブブブ》

《ブブブブブブ》

《ブブブブブブ》


 前言撤回。

 親衛隊の居る女王様は、まるで勝ち誇っているようです。


 クィーンハニィの雄叫びと共に出現したのは、三匹の蜂。

 体長はクィーンの半分ぐらいだが、手には剣を握ったりしている。

 だからどうやって握ってるんだっつーの。


「取り巻きとクィーンを同時に相手するのは回避率が下がって拙い。お前はクィーンのタゲを頼む」

『了解しました。カイト様は『ビーソルジャー』を倒されるのですね?』

「あぁ、そうだ」


 取り巻きは『ビーソルジャー』っていうのか。確かに兵士ソルジャーだな。


 降下してきたビーソルジャーの攻撃を横っ飛びで躱し、続いて降下してきた奴の剣を受け流して地面に叩き落す。

 そのまま背中に短剣を一突きし、降下してきた三匹目に向って投げつけた。

 よし、正面衝突してくれたぞ。

 双方が衝突ダメージと落下ダメージを食らって、これで奴等のHPバーが2割にまで下がった。色は青から赤に変色している。


 羽を切り落とし、飛行能力を奪うとあとはこちらの独擅場だ。

 チクチクした剣での攻撃をたまに受けつつ、一匹にだけ攻撃を集中させ、やがて羽を失ったビーソルジャーが絶命した。


 ――ッピコン。

《レベルが上がりました》

《【格闘】技能のレベルが上がりました》

《【忍耐】技能のレベルが上がりました》

《【瞬身】技能のレベルが上がりました》

《レベルが上がりました》



 っというシステムメッセージが浮かぶ。

 一匹で随分と上がったな。取り巻きとはいえ、レベルが俺より高かったんだろう。


 この調子で二匹目、三匹目も倒し終えると、レベルは4まで上がっていた。

 急いでステータスポイントを振って、ゴミ火力を少しでも強化だ。

 ステータスポイント15を、STRに10、AGIに5振る。

 雀の涙ほどの攻撃力しか上がらないが、そこは気にしない。


「第二ラウンド、行くぜ!」


 一人でクィーンハニィと対峙していた受付嬢の援護へと向う。

 彼女のHPはやや削れているが、持ち堪えてくれているようだ。

 

 取り巻きを召喚させまくってレベリングという手も思いついたが――


『それは不可能です。このレベル帯のレアモンスターは、取り巻きを一度しか召喚しませんので』

「っち。安易なレベリングはやらせないってシステムか。まぁその方がレアモンスターの独占とかされなくっていいんだけどな」


 急降下してくるクィーンハニィの勢いを殺すようにして鷲掴みし、巴投げの要領で投げ飛ばす。

 羽をばたつかせている間に、受付嬢が駆け寄って奴の羽を切り裂いた。

 よし、上手いぞっ。


《【格闘】技能のレベルが上がりました》

《技能スキル『巴投げ』を修得しました》


 はいはい。技能はあとでチェックするから、視界を塞ぐなっ。

 奴は既にHPバーが真っ赤になり、羽も失って細い足で立ち上がって槍を構えている。


「うらぁっ。死にやがれ!」

『死んでください』


 俺と受付嬢が交差し、クィーンハニィを切り刻んでいく。

 残った羽が取れ、足が取れ、そして――

 

「これで最後だどりゃっ!


 そう言って、奴の懐に飛び込んで短剣を突き立てた。


《ギエエエエエエエェェ》


 昆虫の癖に断末魔の悲鳴を放つクィーンハニィが地に倒れた。

 途端に鳴り響くシステム音。


《レアモンスターの最速討伐者となりました。称号『レアモンスター最速討伐者』を獲得しました》

《レベルが上がりました》

《レベルが上がりました》


『おめでとうございます、カイト様。現時点でレアモンスターの討伐に成功したのは、カイト様のみです。よって、称号が与えられました』


 称号……クローズドには無かったシステムだな。

 現時点でレアモンスターの討伐に成功って、まぁ普通に考えれば当たり前だろう。

 今の時点でレベル5のプレイヤーなんてまだ居ないだろうし、この場所だってクローズドでも知られてなかったんだ。


「なぁ、レアモンスターの配置って、ここ以外にも初期エリアにあるのか?」


 この問いに受付嬢はやや間を置いてから答えた。


『今のご質問に関してはお答えできません』


 つまり、それを答えることで俺が他のプレイヤーにとって優位な立場になるから――だろう。

 まぁいいや。


「さっさとドロップを回収するか。レアがあると良いんだが」

『左様でございますね』


 俺と受付嬢は互いにタブレットを呼び出し、倒れているクィーンハニィへと向ける。

 こうすればドロップアイテムを回収できるし、回収が終わればモンスターの死体も消える仕様だ。

 けど、あんまり長く死体を放置しすぎると、勝手に消えてしまうので回収し損ねないよう注意が必要になる。


「っと、取り巻きの分もさっさと回収しねーと。制限時間って何分に設定されてたっけ?」

『5分です。しかし、この度の経験から見るに、高レベルになればなるほど召喚モンスターを倒してから本体を倒すまでに有する時間も長くなるでしょうし、調整は必要かもしれません』

「そうだな。ソロだったり今みたいなペアみたいだと、オチオチ回収してる余裕もないもんな。改善されればプレイヤーが喜ぶだろう」

『はい。マザーにご報告申し上げて、改善の検討をお願いしてみます』


 お、なかなか臨機応変に対応してくれるじゃねーか。

 人工知能の役目が、不正行為の即時発見やシステムの改善っていうが、対応が早いとそれだけプレイヤーにとっても有り難いからな。

 なんでも改善すりゃーいいってもんじゃないが、何もしないよりはしてくれるほうが嬉しい。


 受付嬢に感心するのを終わらせ、どきどくわくわくなドロップ確認タイムだぜ。

『PTM』

パーティーメンバーの略。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ