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47:見た目って大事だよね?

 地下2階の雑魚モンスターはレベル25。

 とはいえ、1階の中ボスだったゴブリンリーダーよりは圧倒的に弱い。


「3匹までは二人でもなんとか行けるな。っかし流石ダンジョンだぜ。同格のフィールドモンスターとは、比較にならないぐらい強いな」

『ダンジョンはパーティー推奨ですから。強さの基準も高くなってしまいますね』

「……ぼっち排除システムか……」


 本来なら、俺も排除されるダンジョンだったんだな。

 まぁ俺の場合、タイマンでやれる敵以外は『クローキング』で全部やり過ごすだろうけど。

 ボスの所に行けさえすればそれでいい。


『やはりソロ向けや少人数向けの難易度もあったほうが、よろしいですかね?』


 後ろを歩く受付嬢から意外な言葉が飛んできた。

 難易度設定を変えられるのか?

 出来るなら、ソロやペア向けの難易度もあったほうが良いと思うぞ。

 世の中、全てのプレイヤーがパーティー組める訳じゃねーし。


「あった方が良いと思います、先生。内部構造同じで、モンスターの配置数を減らすだけでもいいと思うんだ。ただし――」

『ただし?』


 前方から現れたモンスター、『スケルマイナー』2体との戦闘に入る。

 薄汚れた黄色い安全帽を被り、ツルハシを背負って襲ってくる坑夫のゾンビモンスターだ。

 ゾンビらしく、動きはとろくて受付嬢でも十分回避できる攻撃だが、当たれば結構ダメージがでかい。

 2体を倒し終え、先に受付嬢へとポーションを投げてから話を続ける。


「ただし、だ。難易度設定は入場時の人数次第で、システム側が自動設定するほうがいいと思う」

『マザーの方でですか?』

「マザー? あ、あぁ、そうだな。システム側だから、人工知能に任せるって事になるのか。まぁそういう事だ。理由は簡単――」


 ソロでもペアでも無い、マックス6人パーティーで低難易度を選択し、攻略を楽にしてレアゲットしようとする輩が絶対出てくる。

 配置モンスターが少なければ、6人パーティーなら攻略時間をぐっと短縮出来るようになる。何度も挑んで、欲しいレア……それこそレジェンド級が出るまで繰り返す連中が出てくるだろう。

 ソロ救済の意味がなくなっちまうもんな。


『なるほど。カイト様はソロプレイヤーにお優しいのですね』

「え? ……いや、ちょっと、違うと思う、ぞ? うん」


 俺がまさにソロプレイヤーなんですが?

 あ、いや今はちょっと違うけど。でもソロやペア向けの調整なら、やっぱ自分が救済対象プレイヤーになるわけだし。

 と、とにかく優しいとか、そんなの……照れるじゃないか。でれでれ。


 思い切り口元を緩めつつ、坑道の奥へ奥へと進む。

 笑顔でモンスターを切り倒していく俺の今の姿って、かなりシュールなんだろうな。


『カイト様。まさに鬼気迫る表情でモンスターを倒されていますね。モンスターさえ怯えておりますよ?』

「……笑ってるつもりなんだけどな……っふふ。死ねやぁーっ!」


 叫ぶと同時にスケルマイナーが一瞬、ビクっと体を震わせる。

 モンスターのくせしやがってっモンスターのくせしやがってぇー!

 どうせ俺の笑顔は鬼気迫ってますよぉだ。

 な、泣いてなんかいねーぞ。






 むしゃくしゃして無駄な戦闘をした結果、最深部到達までに随分と時間が掛かってしまった。

 ゴブリンリーダーの居たフロアより更に広いそこには、またもやゴブリンの姿があった。

 今度は手下が3匹。ゴブリンにしては珍しく、杖を持ったのが一匹混じっている。他の2匹とボスらしいでかいのは、剣と盾を装備していた。


「えーっと……杖持ちが――ゴブリン・シャーマン? まさか召喚魔法とか――」

『名前からご想像すれば、使えるでしょうね』

「うっへぇ。盗賊としては一番厄介なんだよなぁ、魔法使いってのが」


 魔法の攻撃力は高い。ダメージを下げるステータスは魔法防御力だが、これにはINTが深く関係している。

 最低数値の5しか無い俺は、当然魔法ダメージをもろに食らうタイプだ。


「あ、ダメ元で聞いてみるが、お前のINTって、いくつだ?」

『はい。カイト様と同じ5です』

「だよなー」


 ダブルでプチ堅く、ダブルで魔法に弱い盗賊、だな。

 っとなれば、厄介な敵を先に沈めてしまうのが吉。

 剣士系の手下2匹が『ゴブリン衛兵』、でかいボスが『エリート・ゴブリン』なんて名前をしてやがる。


 魔法を使ってくる敵が居るなら、それに備えなきゃな。

 タブレットを開き、スキル画面を出す。

 残しておいたスキルポイントを使って、『スタブ』を1だけ取る。ここで派生したスキルが『スタンブロウ』。受付嬢から教えてもらった、昏倒スタン系の攻撃スキルだ。

 大抵のネトゲだと、魔法詠唱中にスタン攻撃を入れると、詠唱がキャンセルされる。

 つまり、攻撃を封じれるのだ。

 CTもあるから、全ての攻撃をキャンセルさせるのは無理がある。が、可能な限り防ぎたい。


『スタンブロウ』を1だけ取って、準備完了っと。


「よし、まずは相性の悪いシャーマンから片付けよう。俺が一気に『電光石火』で近づいてタゲを取るから、お前も追いついたら全力で攻撃してくれ」

『し、しかし、衛兵やエリートが立ちはだかると思うのですが』

「無視だっ。俺たちINT無し馬鹿には、魔法攻撃が一番鬼門なんだよ。だから奴を先に倒すっ!」

『りょ、了解しました』


 受付嬢が納得した所で、まだこちらに気づいていないゴブリンパーティーに向って『電光石火』で駆け寄る。

 パーティーの真ん中に居たシャーマン目掛け、ダブル『シャドウスラッシュ』を仕掛けた。

 二振りの短剣から放たれた閃光は、ゴブリンシャーマンを見事に捕らえ――


「っち。流石にボスの取り巻きだけ合って、随分堅いな」


 予想よりもダメージを与えられない。

 攻撃を受け、シャーマンが叫び声を上げたことで他のゴブリンどもも奇襲に気づき、俺に襲い掛かってくる。

 受付嬢がやってきて、一匹の衛兵を殴ってからシャーマンへと攻撃を開始する。

 わざわざ一匹のタゲを取って、俺の回避率を維持させてくれようってのか。

 妙な所で気遣ってくれるんだよなー、さすがNPCだぜ。


 エリートと衛兵の2匹の攻撃を躱しつつ、攻撃はシャーマンに一点集中。

 奴が杖を掲げた瞬間、新しく取ったスキルをお見舞いする。


「『スタンブロウッ』」


 叫ぶと体が自動オートで動く。

 逆手で握っていた短剣の柄で、奴のこめかみ部分を掠めるように殴る動作だ。

 魔法の詠唱中は無防備になる。

 まともに俺の攻撃を食らって、よろけるゴブリンシャーマン。

 よしっ。魔法キャンセル成功っ!


「っくぅー、CT20秒か。スタン時間は――」


 シャーマンが正気を取り戻すまでの時間をきっちり計っておく。

 3……4……5。

 5秒か。

 差し引き15秒。

 魔法が連続したら、どうやっても何発かは防げそうにないな。


「受付嬢、スタン取ってるか?」

『スタンブロウでございますか? はい、修得しております』

「じゃー――」

『カイト様がCT中は、ワタクシが詠唱キャンセルすればよろしいのですね?』

「お、おう。解ってるじゃん。頼むぜ」

『はいっ。頼まれましたっ』


 立ち位置の関係で彼女の顔は見えない。

 だが、声の様子からは、気合十分な感じだ。






 何度か魔法を食らったが、幸いな事にこのゴブリンシャーマン、魔法攻撃は馬鹿の一つ覚えのように『ファイアー・ボール』だけ。

 さっきゴブリンリーダーからゲットした、『門番の腕輪』のお陰でダメージを食らうと同時に少しだけHPが回復する。

『水流のシュトゥーム・スティレット』の特殊効果、与ダメージの3%をHPに還元ってのもあってポーション1本飲む程度で持ち堪えられた。

 詠唱キャンセルできなくって、毎回魔法攻撃食らってたら流石に無理だろうけどな。


 それにしても、だ。

 衛兵はまだしも、エリートゴブリンの攻撃も随分と単調だな。それに、奴の命中率が低いのか、こっちはほぼ回避できてるし。

 まぁ有り難いっちゃー、有り難いんだが。


 ゴブリンシャーマンのHPが残り3割になった。

 なんだろう。雑魚相手にこんなに時間かかるとは、思っても見なかったぜ。

 さすがダンジョンボスの取り巻きっ!

 ワクテカするなぁー。


『カイト様、尻尾が――』

「武者震いだっ」


 ぶるぶるっと尻尾が震えたのは俺にも解った。

 いちいち尻尾を観察するなっての、尻尾マニアめっ。


 一瞬、自分の尻尾に視線が向いた。

 すぐさま視線を戻したが、その時には奴の――ゴブリンシャーマンの詠唱が始まっていた。

 拙いっ。

 間に合えっ!


「『スタンブ――』」


 衛兵ゴブリンが立ちはだかる。

 っ糞、邪魔だっ!

 スキルをキャンセルさせ、衛兵を突き飛ばすように『水流のシュトゥーム・スティレット』を振るう。

 同時に――ゴブリンシャーマンが言葉を発した。


《フレイムボム》


 な、に?

 今までの『ファイアー・ボール』とは違う。

 俺の目の前で小さな火の粉が舞い、そして弾けとんだ!?

 眩い閃光を発しながら、熱波を放ち、モロに食らった俺は後ろへと吹き飛ぶ。

『水流のシュトゥーム・スティレット』の切っ先が奴の鼻っ柱に触れた気がする。

 気がするが、同時に俺の意識が飛んだ。


 ・

 ・

 ・


甲斐闘カイト、友達は出来たか?」

「ううん。まだ。お父さん、どうして誰も、僕に話しかけてくれないのかなぁ?」

「誰かが話しかけに来てくれるのを、待ってるのかい?」

「うん。だって僕、皆が話してる事、何も知らないから……。皆ね、テレビの話やゲームの話ばかりなんだ。だから、言ってる事わかんないし、誰かが僕の知ってる事を話しかけに来てくれるのを待ってるんだ」


 なんだこれは?

 まるで……走馬灯?

 ガキの頃の、もうすっかり忘れちまってた親父との会話じゃねーか。

 小学一年の頃だったかな。学校に通い始めて、友達出来たかと聞かれたっけ。


 テレビもゲームも、漫画だってスポコン物以外読ませて貰えていなかった幼少時代。

 クラスメイトの会話も当時はチンプンカンプンで、輪の中に入れなかったのを親父に話した記憶がある。

 友達はほしかった。

 でも作れなかった。

 糞じじいのせいだ。


 そういや、この後親父はなんと言ってたっけ?


『――まっ。――ト様っ』


 殿様?


『カイト様っ!』


 俺の事か――あれ?


 目が覚めると、必死で4体のゴブリンと対峙する女の姿が――受付嬢!


「やっべっ。俺、気絶してたのか?」

『は、はい。8秒ほどですが』


 8秒にしては随分長い走馬灯だったな。

 って、それどころじゃねーか。

 いつの間にか4体全部のタゲを取って俺を庇ってくれていたらしく、受付嬢のHPは随分と減っている。

 急いでポーションを取り出し、彼女へと投げつけた。


『カイト様、まずはご自分の回復を! それから『腐ったポーション』をお譲りください。『ポイズンブロウ』で取り巻きゴブリンの命中率を下げますっ』

「え? わ、解った。適当に地面に置いとくぞ」

『はい。ありがとうございます』


 アイテムボックスからガシっと鷲掴みした『腐ったポーション』を、少し脇のほうに数本置いておく。

 自分のHPを確認すると……ちょ、HP二桁ってなんぞこれっ!?

 慌ててポーションを取り出して一気に飲み干す。CT15秒……長いっ!


「てめーらっ! HP寄こしやがれっ」


 一体の衛兵に切りかかり、通常攻撃でダメージ量の3%をHPとして吸収。

 吸収!

 きゅうしゅうぅぅぅぅぅっ!

 一撃1500ダメージほどの攻撃で、45ポイント回復。3800ある俺のHPからすると、微々たる量だ。

 だが、毎秒でこのぐらい回復すれば、10秒後には450回復。更に5秒後には再びポーションを飲む。

 あとは攻撃しながら吸収回復だっ!


「さっきはよくもやってくれたなっ!」


 ゴブリンシャーマンにありったけのヘイトを向けて『シャドウスラッシュ』をお見舞いする。

 HPも吸収したいので、通常攻撃多目で恨みを晴らす。


『カイト様、ご無事でよかったです。一瞬、死んだかと思いました』

「HP二桁だったもんな。俺もマジ驚いたわ。そんなすげー攻撃だったのか?」


 ゴブリンシャーマンをふるぼっこしながら受付嬢に尋ねる。


『はい。即死系に近い魔法攻撃でして、ダメージは4500と出ておりました』

「いやそれ即死じゃん!」

『はい。ですから死んだものだと思っておりました。しかし、指輪と『水流のシュトゥーム・スティレット』のお陰で、ダメージを受けるのと同時に回復もしておりましたので助かったようです』


 うひぃー。装備のお陰かよ。

 直前でマジ良い物拾ったな。

 ったく、走馬灯なんてもん見させやがって。


「死ねっ、死ねっ! ボスの取り巻きの分際で、ねちねち生き延びやがって。死ねっ!」

《オレ・サマ、ボ……グフ》


 遂にうざいゴブリンシャーマンを倒したぞ!

 随分長かった気がするな。


「はぁーっはっはっは。雑魚は滅ぶべしっ! さぁ、次こそはボスだ! 受付嬢は衛兵を頼む」

『あの、えっと……』


《『寂れた鉱山ダンジョン』ボスモンスターの最速討伐者が現れました。これにより、他エリアでのダンジョンが解放されます》


 唐突に流れるアナウンス。

 え? どういう事?


『カイト様、このダンジョンのボスは、先ほど倒したゴブリンシャーマンでございます』

「え?」

『このダンジョンのボスは、ゴブリンシャーマンでございます』

「マジで?」

『マジです』


 真顔で答える彼女の背後から、エリード・ゴブリンが襲い掛かってくる。

 だが、一方的に攻撃していたはずのゴブリンが勝手に倒れた。

 ど、どうなってるんだ?


『あ、水鱗の小盾スモールシールド効果が発動したようですね。自滅してくれました』

「は? 自滅……あぁっ。ダメージ反射か!」

『はい。なかなかに発動率が良く、取り巻きは放置してても勝手にダメージを受けてくれるので、なかなか楽しいですよ』


 楽しいって……それなりにボロボロになってたってのに。

 こいつ、マゾ属性だったのか?

 いや、そんな事よりもだ。

 今倒れたエリート・ゴブリンがボスだとばかり思っていたのに、でかいのはボスの証じゃなかった……のか?


 全ての手下・・を倒し終えると、俺と受付嬢のレベルが上がった。

 なんとなく虚しいレベルアップだ。






◆◇◆◇◆◇◆◇


 名前:カイト

 レベル:26

 職業:盗賊 / 種族:ケモミ族

 

 HP:3800 → 3900

 MP:960 → 1080


 STR:57+32 → 62+36

 VIT:17+34 → 17+35

 AGI:99+34 → 99+37

 DEX:15+6 → 15+8

 INT:5

 DVO:5

 LUK:10+2


 SP:0

 スキルポイント:0


●アクティブスキル●

『石投げ』『足払い』『スティール:LV1』『シャドウスラッシュ:LV1』

『バックステップ』『カウンター:LV1』『ハイティング:LV2』『クローキング:LV2』

『スタブ:LV1』『スタンブロウ:LV1』


●パッシブスキル●

『短剣マスタリー:LV5』『ダブルアタック:LV5』『二刀流』


●修得技能●

【格闘:LV31→34】【忍耐:LV34→35】【瞬身:LV34→37】

【薬品投球:LV12→13】

【岩壁登攀:LV6→8】【ポイント発見:LV11→18】【採取:LV15→16】【製薬:LV8→10】

【採掘:LV5】


 技能ポイント:1


○技能スキル○

『巴投げ:LV1→2』『ポーション投げ:LV11→12』『素材加工:LV6→7』『ポーション作成:LV6→8』

『電光石火:LV8→10』『ポーションアタック:LV1→2』『正拳突き:LV1』


●獲得称号●

【レアモンスター最速討伐者】【最速転職者】【ファースト・クラフター】

【ファースト・アルケミスト】【ダンジョン探求者・パーティーバージョン】

【鉱山を愛する者】


◆◇◆◇◆◇◆◇


 

*ダメージ判定について。

ダメージと、装備効果による回復は同時に判定が入ります。

エフェクトに現れるダメージ数値は、攻撃によって与えられるダメージがそのまま表示されますが

実際にHPが減るのは、回復効果を差し引いた数値分だけとなります。


以上、裏設定でした。

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