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39:えぇ~い!ドッカーン!!

 有り得ない。

 俺が有名人だなんて。

 しかも以前のゲームでやってた弓職・スナイパースレで神扱いされてたなんて!?

 

 じゃあ……

 なんで誰からも声を掛けられなかったんだ?

 動画を『にゅちゃんねる』スナイパースレに晒されて直ぐの反応は――


『なんだこの反応速度? チートじゃね?』

『ちょw なんでこんなミリ単位で急所狙えるんだよww』

『これ完全に雑魚の湧き時間把握してるだろ?』

『ツール使用者かよ』

『ウゼェ』


 ――だった。

 それ以後の反応を見るのが怖くて、そっと『にゅちゃんねる』の専ブラを閉じ、数日後には――


「あ、セカンド・ウォーを辞めたんだった」

「そうそう。なんで辞めたの?」

「いや、その――チート扱いされてたし」

「まぁ情弱な奴ほど吠えるからねー。でも直ぐにスレ内で動画通りにできるかの検証が始まって、PS次第で可能だってのが解ったんだよ」


 その動画によって、ソロでは難攻不落だと言われていたダンジョンも、多くのプレイヤーが攻略出来るようになったと。

 俺、知らないうちに人の役に立ててたのか。

 いい話や。ほろり。


『流石はカイト様ですね』

「あ、あんたって凄いプレイヤーだったんだ」

「わぁ~、そんな人に助けて貰ってたなんて、感動~」


 いつの間にか女子に囲まれ、羨望の眼差しで見つめられる。

 よ、よせよ……照れるじゃないか。


「あっはっは。あ、そうだ。ボクね、ナツメって言うんだ。『World Online』はカイトがやってたアサシンとは別の、同じ盗賊派生上位だったトリックスターをやってたんだ」

「マジかっ。あのネタ職扱いされてた、微妙スキル満載のトリックスターかよ!」


 手品みたいに敵を驚かせて、隙を狙って攻撃をするっていう職業だった。

 ダントツで不人気職だったアレをプレイしていたとは、このナツメってのはドMだな。






 空腹も満たされたし、思わぬところで古巣ゲームを共にしていた――らしいナツメと出会えた事でるんるん気分の俺。

 採掘しながらナツメと以前のゲーム話で盛り上がったり、この『レッツ』の情報なんかの交換もしあった。


「えぇー。そんな採取ポイントがあったのかぁ。採掘でもそういう所あればいいのになぁ」

「いや、まさにここがそうだろ? こういう広い場所は確実に採掘ポイントが密集してるし」

「あ、そうか。っははは」


 っと言ってはみたものの、1時間採掘し続けるほどのポイント数も無い。

 枯れればまた移動して次のポイント探しをしないとダメだ。


「でもさ、このポイントまでの道順をちゃんと覚えて、2、3箇所をぐるぐる回ればいいんじゃない?」

「お、エリュテイア頭いいな。一度採掘したポイントの復活時間は1時間だし、最初に採掘した場所が復活するまで他の所を回ってれば結構良い効率になるだろ」


 モンスターとの遭遇率も極端に低いから、移動に時間を取られることも無いだろう。

 ナツメの方でも、やはりここに来るまで数匹のゴブリンしか見ていないと。


「採掘がやりやすいってのはいいけど、せっかくのダンジョンなんだし拍子抜けしちゃうよねー」

「するする。もっとこう、モンスターがうじゃーっといて、ボスが待ち受けててとか想像してたんだがなぁ」

「ゴブリンがうじゃーとか、嫌ですよぉ~」

「あればっかりうじゃうじゃしてたら、私でも嫌だわ」

『ワタクシは――別にゴブリンばかりでも平気ですが』

「「えぇ~!?」」


 受付嬢の意見は、他の女子二人には受け入れられなかったらしい。

 採掘ポイントが枯れ、ナツメを交えて移動を開始する。

 その間も受付嬢は二人に弄られていた。


 移動しながら解った事がある。

 称号効果で移動速度がUPしているはずなのに、ナツメはエリュテイア達と同じ速度で歩いているって事だ。


「ナツメ。お前ってさ、移動速度が速くなるような装備とか、技能持ってるのか?」

「ん? 持ってないけど、称号ならあるよ。『ダンジョン探求者・ソロバージョン』ってのが」


 は?

 ソロバージョン?

 そういや、俺たちの称号は『パーティーバージョン』だったな。


「パーティー用とソロ用が用意されてたのね。効果も同じなのかしら?」

「え? じゃあ君たちがパーティーで最速入場したの? ふむ。ソロ最速のボクより奥に進んでたんだし、当然と言えば当然かぁ」


 効果はほぼ同じ。

 ただし、アイテムドロップ率が8%上昇だった。


「悔しいっ。俺もソロで突っ込めばよかったぁぁぁ」

『カイト様、ぼっち脱却をしたいと仰っている方がそれでは、本末転倒でございますよ』

「そうよ。5%も8%もそんなに変わらないでしょ」

「私達とご一緒じゃ、嫌だったんですかぁ?」

「そ、そうじゃねーけど、けどぉー」


 やっぱ羨ましいぜ。






 次なる採掘ポイントに到着するまでに遭遇したゴブリンは、ゼロ。

 ポイントが枯れるまでの30分ほどの間も、襲撃は一切無し。

 ここまで来ると拍子抜け以前に、ここは鉱石採掘の為のエリアなんだと割り切るようになっていた。


 アイテムボックス内の鉱石も『銅鉱石』『鉄鉱石』がそれぞれ500個以上になり、幾つかのレア鉱石も手に入れた頃――

 これまでよりも一回りでかい場所へとやってきた。

 しかも、どうやら行き止まりのようだ。


「ここならきっと大量のポイントがあるだろうっ」

「だね! 『ポイント発見』」

「「『ポイント発見』」」


 ん?

 おかしい……光ってる所が少ない。

 今までの30分ほどで枯れてた場所と比べても、3分の1程度も無いな。


「あっちゃー、思わせぶりな場所だったみたいだねぇ」

「ほーんと。でもせっかく来たんだし、採掘だけして引き返しましょ」

「っち。しゃーねー。サクっと終わらせようぜ」

『……そ、そうですね』


 何か引っかかる返事の仕方だな。

 受付嬢はのんびりとした動作で、ツルハシを壁に向って振り下ろす。

 やけに時間をかけようとしてるな。もしかして、時間の経過でポイントが出てくる仕掛けがあるとか?


「あぁ~ん。またずれちゃったぁ」

「もう、ココットったら下手過ぎぃ。そんなに思いっきりツルハシを振り上げる必要ないんだってば」

「でもぉ~。こう、思いっきりドカーンってやった方が、沢山取れそうな気がしない?」


 ココットがまた不思議な事を口走ってるな。

 思いっきりドカーンってなんだよ。ドカーンってやったからって、いっぱい取れる訳じゃないんだぞ。

 なんとなく気になって見てると、3回に1回はポイントとは違う位置にツルハシを振り下ろしている。

 あぁーあ。

 奥の正面付近なんて、光ってるポイントは一つしか無いのに。

 あんな所で振りかぶったりしねーで、もっとポイントが密集してる所に行けば、狙いが外れてもどっかに当たるかもしれないだろう。


「えぇ~いっ!」


 なんて可愛い声出しながらツルハシを振りかぶるココット。

 そのまま勢い良く壁に叩き付け――


 ズゴゴゴゴゴォォォーっという地響きを立てて、土煙を舞い上がらせた。


 ……はい?


「わぁ~! みんな見て見てぇ~。ドッカーンってなったよぉ」


 無邪気に笑うココットが指差す壁には、縦横2メートルほどの穴がぱっくりと空いていた。






「隠し階段があったのか」

「わざとらしい行き止まりだったもんねぇ」

「お手柄ですか~?」

「「お手柄だ」よ」


 俺とナツメの同時にそう言われ、嬉しそうに笑う兎は、耳がでれ~っと垂れていた。

 エリュテイアは苦笑いを浮かべてるし、受付嬢は何故かほっと胸を撫で下ろしているようだ。

 そうか、これを知っていたんだな。

 誰かが見つけてくれるように、わざとゆっくり作業してたって訳か。

 自分で穴を開けないあたりは、流石NPCといったところだな。


 階段は一直線に続き、下まで降りきったところでシステムメッセージが浮かぶ。


《『廃れた鉱山ダンジョン』へと進入しました》


 あ?

 今までの鉱山ダンジョンと何か違うのか?

 辺りを見渡して気づいたのは――


「あれ? ナツメは?」

「あれ? そういえば居ないわね」

「あ、あのね。さっきね、ナツメさんが急に消えたの」

『階段を降りきった瞬間ですね。お、恐らくなのですが、ここからはMOフィールドとなっており、パーティー単位でエリアが生成される仕様なのだと思われます》


 でた。

 恐らくとか思うとか言っておきながら、本当の事を話すパターン。

 そういやパーティー組んでなかったな。


「階段を登れば出れるかな? ちょっと登ってみようぜ」

「解ったわ」

「は~い」

『了解いたしました』


 一段だけ階段を出ると、システムメッセージが浮かんで廃れた鉱山ってのを出たのが解った。

 ほぼ同時にナツメの姿が現れる。


「あはは~。中はMOだったね。一人ぼっちになるところだったよ」

「パーティー組んで無かったもんな。どうする? 俺たちと行くか?」


 ナツメは嬉しそうに頷いた。


「誰かと喋りながらのほうが楽しいからねぇ。よろしく、レベル25の盗賊でーす」

「同じレベルか」

「私とエリュちゃんは19だもん。みんな強くて羨ましいなぁ」

「いやいや、ココットちゃんは神官だろ? 強くなくていいんだからねぇ」

「私は剣士だからみんなを守れるように強くなくちゃいけないのに……ごめんなさい」

『エリュテイアさん、レベル差があるのですから仕方ないですよ』


 ナツメをパーティーに加えていざ出陣。

 階下に降り立ち再びシステムメッセージを目にする。

 どうやらここからがダンジョンの本番――だと思いたい。


 上とは違い、ここの坑道はやや広い。

 横幅は5メートルぐらいあるか? 天井は3メートル無いかなぁ。

 まぁこれだけあれば戦闘もやりやすいだろ。

 そして嬉しい事に、壁には等間隔で松明が燃えている事。


「この松明って、誰が火を点けたのかしら?」

「さぁ? ゴブリンじゃね?」


 なんて適当な返事をするものじゃない。

 階段を降りて50メートル程の曲り角で、奥からやってくるモンスターの影を発見。

 もう見るからにゴブリン以外想像できない、そんな影だ。


「口に出した事は現実になる――の法則だな」

「じゃー次に出るモンスターは、ゴブリンじゃないって叫んでおいてよねカイト」


 エリュテイアが俺の横を擦り抜け先頭に立つ。

 みんなを守る剣士様――というよりは、みんなを守りたい剣士様だな。


 角から現れたのはやはりゴブリン。

 ただし、上の階にいたゴブリンと違って鎧を着込んで斧を持った奴等・・だった。

『MMO』と『MO』

オンラインゲームといえばMMOと思われるかもしれませんが、中にはMOというのもあります。

MOゲームといえば、複数のプレイヤーが集まるのがパーティーを探す為のロビーだけで、

フィールド(もしくはダンジョン)はそのプレイヤーのみしか存在しないorパーティーしか存在しないというようなタイトルの事を言います。

有名なところだと「ファンタシース○ーオンライン」でしょうか。「モンスターハン○ー」もオンラインがありますが、こちらもMOですね。


MMOはロビーという概念が無く、町やフィールドはプレイヤーで溢れかえっているオンラインゲームです。大規模参加型RPGというのがこっちですね。

しかし、ダンジョン内だけはMO仕様というのも昨今は多いです。

これで他のプレイヤーとのモンスターの奪い合いなどが無くなりましたが、他者との触れ合いは

激減したなーっと自分は思います。


当作品にある「MOフィールド」は、そのエリアだけは入場者毎orパーティー毎に生成されるMO式の

エリアという意味で使わせてもらっております。


ちょっと解り難くて申し訳ない……。

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