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38:ぐー! ぐー!(エ○・はる○調に脳内再生ヨロ)

 俺たちは今、窮地に陥っている。

 全ての兎肉が炭化し、試しにそれを口に入れても苦いし硬いし、何故かHPも微妙に減るし。

 幸いなのはモンスターとの遭遇率が、有り得ないほど低いって事ぐらいか。


 再び広い坑道に出ると、そこで俺たちは思案した。


「ダンジョン内で食えそうなモンスターを探すか」

「え? ちょっと、それヤダ! 外に出て実のなってる木とか、探しましょうよ」

「ふぇ~ん、お腹空いたよぉ」

『マイナスが多少付いても、今すぐダンジョンを出て山の中腹辺りに生息する『レッド・ディア』を狩れば、なんとか対処は出来ると思います』



 腹が減っては戦は出来ぬっ。

 だが、ダンジョン一番乗りしてゴブリン数匹倒しただけとか……俺のゲーマー魂が納得しねー!

 もっと、もっと奥に進めば何かいるかもしれねー。

 もうこの際ゴブリンだって……一瞬脳裏に、緑色の肌をした醜悪なゴブリンの丸焼きが浮かぶ。

 訂正。やっぱアレは食えないわ。


 ぐぅ~~~


 響く腹の虫は、もう誰のものかなんて解らないほど、あっちでもぐぅ~、こっちでもぐぅ~ってな具合に鳴り捲っている。

 そして遂にシステムメッセージが浮かんだ。


《空腹状態で60分が経過いたしました。ステータス数値にマイナス補正が加わります。これより、10分毎にマイナス補正が加算されていきますので、速やかに食事を摂ってください》


 言われなくても食いてーよ!

 タブレットでステータスを確認すると――




◇◆◇◆◇◆


 HP:3800(-380)

 MP:1050(-105)


 STR:57+32(-9)

 VIT:17+34(-5)

 AGI:99+34(-13)

 DEX:15+6(-2)

 INT:5(-1)

 DVO:5(-1)

 LUK:10+2(-1)


◇◆◇◆◇◆




 おぉう。括弧でマイナス表示されてやがる。

 こりゃあ、1割減だな。10分毎に1割減っていくとなると、相当ヤベェぞ。


「やだ、ステータスにマイナス付いちゃった。これ、1割も減ってるじゃない!?」

「減るとどうなるの?」

『簡潔にご説明すると、弱くなります』

「えぇ~、どうすればいいのぉ~?」

『何か食べればよいのですが……』


 っと言っても、誰一人として食い物を持ってないし、食えそうな物もここには無い。


「探すぞ」

「え、ちょ……ダンジョンモンスターはヤダってばぁ」

「外に出ましょうよぉ」

「出るのは嫌だ! ここまで来て、敵が雑魚ゴブリンだけとか……ダンジョンに来た甲斐がまったくねぇーじゃんか!」

「鉱石はもう一杯集まってるんだし、いいじゃないっ」

「ダメだ! 絶対、絶対にボスを探すっ。そして倒す! それまで俺は帰らねぇっ」


 拳を突き上げ、確固たる意思を示す。

 だが足に力が入らないので、その場に座ったままだ。

 俺を白い目で見ているエリュテイアと、いつもの鉄仮面だがより一層無表情に見える受付嬢の顔。

 ココットはひもじいのか、杖をかじっている。


 ただ一人、俺を絶賛する者がいた。


 突然背後で手を叩く音が聞こえ、振り向くと、そこには男エルフのプレイヤーが立っていた。


「プレイヤーの鑑やねっ。そうだよね、ダンジョンに来たからにはボスを見つけて倒さなきゃ、プレイヤーの恥ってもんだっ」






 ホットドックなのか、ホットドッグなのか。

 今はそんなことどうでもいい。

 只ひたすらドックなのかドッグなのか解らないソレにかぶり付いていた。


「そんなに飢えてたの? 君達どのくらい空腹時間過ごしてたんだい?」


 食べ物を分けてくれた超親切な男エルフが尋ねてくる。

 答える間も惜しいぐらい、俺はソーセージを長い時間掛けて噛み、味わった。


『1時間ほどです』

「1時間……でそんなに飢えるんだ……」

『いえ、恐らく通常ではこのように飢えたりはしないかと思います。お肉を焼いて失敗したり、直ぐには何かが食べられないという状況があって、過剰なまでに反応しただけかと』

「あはは。誰も『料理』技能持ってなかったんだ。ボクも持ってないけどね」


 男は人懐っこそうな顔でにこにこ笑い、デザートに林檎もどうだと出してくれた。

 こいつ、随分食い物を持ち歩いてるんだな。

 どう見てもソロでダンジョンに来てるっぽいのに。


 家一軒分ぐらいのスペースのある坑道内。

 林檎をかじりながら『ポイント発見』を使うと、案の定ここも採掘ポイントで溢れかえっていた。

 男は採掘が目的だといい、食べ物を一通り渡し終えるとツルハシを持って鉱石集めを開始した。


「はぁ、ご馳走様でした~」

「食べ物分けていただいて、ありがとうございます。どうしてこんなに沢山の食べ物を持ち歩いてるんですか?」


 ココットとエリュテイアの二人は、男からサンドイッチを分けてもらって食っていた。

 林檎は二人で半分ずつにし、俺より先に食い終わってしまった。

 エリュテイアの問いに男がツルハシを振るう手を止め、笑いながら振り向いた。


「新しく実装された空腹システムだからねー。どのくらいの間隔で現れるのか解らないし、どのくらい食べれば空腹が消えるのかも解らなくって」

「だからこんなにいっぱい持ってたんですかぁ」

「うん。でもね、本音は、どれもこれも美味しそうだなーって思ってたら、あれこれ買ってしまってたんだよ~」

「あはは。それ解りますぅ」

「あれもこれも美味しそうで食べてたら、太っちゃうっていうパターンね」


 そんな会話を聞きながら、ゲーム内でも太るんだろうかとちょっと気になったりもした。

 体脂肪率10%をキープしている俺としては、あんまり脂肪を付けたくは無い。

 脂肪が増えれば体が重くなる。

 狩りにも影響するからな。


 狩りにも影響……そうだっ!

 急いでステータス画面を確認すると、さっきまであった括弧が消えてマイナス補正が解除されていた。

 どのくらいの量を食って消えたんだろうか……。


「マイナス補正消えたぜ。ホットドック1個と林檎1個で消えたんだろうか。それとも一口目で消えたのか、それも見てれば良かったなぁ」

「うんうん。それは今からボクが検証するよ~」

「は? あ、あんたも空腹になったのか?」

「うん。ツルハシ振り下ろしてたらメッセージが出て空腹ですってなったよ。まぁ今って丁度お昼時だしね」


 そう言って男は採掘の手を止め、アイテムボックスからハンバーガーっぽいものを取り出して食い始めた。

 一口食ってはステータスを確認し、もう一口食っては確認し――結果、


「うーん、お腹空いたなーっていう欲求が満たされて初めてマイナス補正が消えるみたいだね。

 ほぼ食べ終わるぐらいの時に消えたよ」

「そ、それって、こ、個人差があるのかな?」

「さぁ、どうだろうねぇー。それこそ次の空腹時に検証しないと」

「そっか。えっと、食べ物、あ、ありがとう」

「うん。困った時はお互い様だから、気にしないで」


 うぉー、マジ親切だなー。

 見た目はチャラいってのが定番のエルフだが、どうもこの男は自分をモデリングしたパターンっぽいな。

 蒼い髪と緑色の目は現実離れしてるが、顔のほうはイケメンって程でもない。可も無く不可もなくってところか?

 これなら防具屋のソルトのほうがエルフっぽい顔立ちだろう。

 つんつんした髪の隙間から見える耳が長くなければ、人族にしか見えないかも。

 装備を見てみると、腰に短剣を差してるあたりは俺と同じ盗賊か。


「よぉーっし、採掘を続けるかなー」

「か、鍛冶技能持ち、なのか?」


 採掘=鉱石。鉱石が必要なプレイヤーは、

 ①金儲けの為

 ②鍛冶をする為

 に分けられる。

 男の答えは――


「うん、そう。武器がメインだけどね、鍛冶やってるんだー」

「そ、そうか」

「君はポーション屋だったよね?」

「あ、ああ。……え? なんで知ってるんだ?」


 壁に向ってツルハシを振り下ろしながら言う男に、俺は驚いて近づく。


「あはは。だって君、某所で名前が上がってるもん。男のケモミ族なんて、君ぐらいしか居ないから直ぐ解るよ」

「あ、あぁ、そうだったのか。は、ははは。この尻尾と耳じゃ、目立つよな」

「うんうん。まさかあのカイトがそんなキワモノ種族選ぶとは思わなかったけどねー」

「いやぁ、これがまたなんていうか。ケモミ権当たったからちょっと試しに弄ってただけなんだよなー。そしたら人族に戻すの忘れて、そのまま決定しちまっただけで……」


 あれ?

 今この男、「まさかあのカイトが」って言わなかったか?

 そりゃー名前は某所ってので出てるだろうけど。「あの」って付けるぐらいだ。俺を知ってるって事か?

 え? どういう事なの?

 教えてエロい人。


「あはは。固まってるね。尻尾だけがビクビク動いてたけど」

「いいいやいやぁ、俺の事、知ってるのかなーっとか思って」

「うん。知ってるよ。『World Online』やってたでしょ? 同じ名前で。あと『セカンド・ウォー・オンライン』とか」


 な、何故それを知ってる!?

 も、もしかしてストーカーか?

 ……いや、男が男をストーカーして、何が楽しいんだ。

 ……い、いや、まさか。

 まさかー「アァーッ」な人だったりしないだろうな?

 モーホーとか、まっぴら御免だぞっ。


 男から少しでも遠ざかるように、一歩、二歩とその場から後退していく。


「え? なんで後ろに下がってんの?」

「いや……俺、そっちの趣味は無いから……」

「ちょ、待ってよ! 何勘違いしてんの。ボクが君の事を知ってるからって、どうしてホモ疑惑を掛けられるんだっ」


 そうは言っても、普通に考えたら一般プレイヤーである俺の事を知ってるとかって、不自然だろ?


「え? カイトの追っかけだったの?」

「わぁ~、私、ボーイズラブ見るの初めてです~」

『ボーイズラブ? ……なるほど、男性同士の恋愛の事なのですね。また一つ新しい発見ができました』


 そんな発見しなくていいからっ!


「ちょ、待ってよみんな。ボクはホモじゃないって。そこのカイト君と同じゲームやってて、彼がゲーム内で有名人だっただけだってばっ」

「またまた、嘘ばっかり。俺は有名人なんかじゃねーよ。準廃人だってのは自覚してるが、万年ソロのぼっちプレイヤーさ」

「いやいや、君ってば『World Online』のランキングシステムに名前上がってたじゃん。ダンジョンソロ攻略タイムの、上位にいっつも居たでしょ」

「……ま、まぁ、職業別のトップ3だったけどな」


 そ、そうか。

 同じネトゲやってれば、ゲーム内のランキング掲示板でも、公式サイトのランキングページにも俺の名前はあるもんな。

 

「もう一つのセカンド・ウォーの方ではさ、職業別の『にゅちゃんねる』スレに話題出てたし」

「っぐ……。一度だけダンジョン攻略動画をアップしたら、なんか晒されてた事はあった……」


 動画を見た誰かが「カイトくんってすご~い。今度パーティー一緒しない?」なんてお誘いがくるのを夢みて、勇気を振り絞って動画UPしたんだけどな……。

 掲示板のほうで晒しあげられて、以後怖くて動画撮影も職スレも見なくなったが。


「ボクも同じ職業だったから、ソロ攻略の参考に何度も見させて貰ったんだよ。だから弓職の神なんて、一部では言われてたんだけど」

「は?」

「だから、神」

「は?」

「だーかーらー、弓職の神」

「は?」

「殴ってもいい?」

『ゴブリン』

MMOにおいてのゴブリンのポジションはやっぱり雑魚モンスター、でしょうか?

私がプレイしたMMOで出て北ゴブリンは、低レベル帯がほとんどです。

ファンタジーにおいては、雑魚の代名詞のようなモンスターですね。

外見はほど似たようなもので、緑色の肌、頭髪は薄いか禿。鼻が大きく、上下どちらかの牙が口からはみ出ている亜人タイプ。

今更ゴブリンの説明なんかいらない?


だってやっと書ける時間ができたんだもんよ!

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