35:盗賊改めガンマンでs
【アイテム名】輝くレピスのハイ・グラディウス ☆☆
【装備レベル】25
【効果】ソルト作の一品。
攻撃力+159 水属性に対して15%の追加ダメージ
斬撃系の攻撃時、10%ダメージアップ
攻撃速度5%アップ
【アイテム名】輝くレピスのグラディウス ☆
【装備レベル】25
【効果】ソルト作の一品。
攻撃力+148 水属性に対して15%の追加ダメージ
攻撃速度8%アップ 一定確率パリィ発動
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おっさんと違い、まともなネーミングセンスだな。
ソルトスペシャルなんて事にならなくて、心底良かったと思っている。
『パリィ』ってのが、攻撃を受けた際に、武器でそれを受け流したりする行動の事だよな。
回避型の俺には向かない。ってことで、星一つのレアが受付嬢。ミドルレアが俺って事になる。
「っふっふっふ。ミドルレア武器の二刀流か。楽しみだぜ」
『興奮されていらっしゃいますね』
「その顔、すげー怖いからやめとけよ」
NPCにまで怖いと言われる俺って……。
受け取った装備をアイテムボックスに入れると、隣で受付嬢がじっと見つめる。
「なんだよ? こっちの武器の方がよかったのか?」
『いえ、そうではなく。カイト様、アップデート内容はご確認されましたか?』
「あぁ、生産がよくなったり、マップが解放されたりとかだろ。なんか空腹も実装されたみてーだが」
『はい。えーっと、武器の装備設定が出来るようになったというのは、ご覧になってますか?』
武器?
あぁ、なんか身に着けられるようになったとかだよな。
ステータス画面で設定できるって書いてたような。
タブレットを出し、ステータス画面を開く。
ん? 画面の上にタブが出来てるな。
えーっと、『装備』『スキル』『技能』か。
ステータス画面からもスキルと技能が直通で開けるようになったのは、なかなか便利だ。
装備ページに行くと、マネキンみたいなのがソリオスペシャルスルーズと、月光絹のグローブを着用している画像があった。
他ゲーでも同じような画面だし、別に真新しいものなんて無い。
「武器の設定って、どういう意味なんだ?」
『武器を装備する手の横に、空いた枠がございますよね? そこをタップして頂ければ、アイテムボックス内にある武器だけが表示されます。一覧にある中から装備したいものをタップして頂ければ、セット完了です』
「へぇー……じゃ、右手に『水流のシュトゥーム・スティレット』、左手はソルトスペシャルだ」
「おい、勝手にダサい名前にすんなっ」
ソルトの苦情を右から左に流しつつ、設定を完了させると腰の辺りに重みを感じた。
見ると、右の腰にシュトゥーム、左の腰にソルトスペシャルがぶら下がっていた。
短剣を差すベルトまでいつの間にやら装備されてるな。
「これ、盾とか杖とか弓はどうなるんだ?」
『ワタクシのような小型の盾は、背中に背負う事も腕に装着させる事も可能です。その辺りは好みで変更できますよ』
「短剣は?」
『腰や太もも、背中等にも設定可能です。デフォルトで腰になっているだけですので、装備画面の武器アイコンをクリックドラッグして、装備させたい箇所に移動させればよろしいですよ』
へぇ~、ちょっと弄ってみるか。
まずは太ももの辺りっと……うん、重みが太ももに移動した。
それぞれを引き抜いて、動作確認をする。
「なんか、ガンマンみたいだな」
『ガンマン? ……見つけました。そうですね。拳銃を引き抜く仕草に似ていらっしゃいますね』
ちなみに腰に差した場合も、なんとなくガンマンっぽい。
普通は右手用武器が左腰、左手用武器なら右の腰にってなるはずなんだよな。まぁイメージ的には、右手武器を右手で引き抜き、くるっと回転させて構える――なんてのがかっこいいとは思ってる。
「背中っていうか、後ろ腰ならどうだ?」
『出来ると思います』
「やってみるか――」
マネキンをバックスタイルに変更して、腰――尻尾の少し上辺りにセットしてみる。
腰の後ろに重みを感じ、柄の位置を確認。
左右同時にさっと引き抜く。
鞘に戻して、今度は片方だけを引き抜く。
「おぉ、なんかちょっと、かっこいいな」
『はい。とても様になっていらっしゃいます』
「そ、そうか? じゃー、この位置にしよう」
装備設定が終わったことろで、エリュテイアとココットのほうを見ると、何やらソルトとおっさんを交えて神妙な顔をしているじゃないか。
なんの話かと思ったら、
「予算が足りない。お前らみてーに素材を持ってる訳でもねーからなぁ」
「ノーマル品を買うぐらいの金はあるが、希望する物を買うにはちょっと、な……」
っと職人親子がやんわりと言う。
「素材を集めれば、安くなるんですか?」
「あぁ、持ち込みしてくれりゃー、足りない素材代と作業賃ぐらいで作ってやるよ」
「じゃー、素材集めます! ココットもそれでいい?」
「うんっ。私、頑張る」
「どこで何を集めてくれば良いですか?」
あ、おいおい。それ聞いちまうと情報料取られっぞっ。
エリュテイアは剣士だから、重装備。その素材の元となるのは鉱石類で……
「カジャールから南に行くと、小さな山がある。その山の東側斜面に鉱山への入り口があるんだ」
「モンスターが湧くようになってなぁ。随分前に閉鎖された鉱山だが、採掘場はまだまだ鉱石で溢れてんだ」
「封鎖されてるから、入り口には柵が出来てるし、10年ぐらい放置されてるから植物も生え放題になって見つけ難いかもしれない」
そこに行ってアレやコレやらを取って来いと、親切丁寧に話すおっさんとソリオ。
ココットは神官だから布装備だ。防御力を高めたいなら、部分的に皮鎧を付けるのも有。もちろん盾もだ。
鉱山に行く途中の草原に生息するモンスターが上質な糸を持っているというから、それを集めてこい。――だとさ。
二人分の情報料……どのくらいぼったくられるのか。
「ありがとうございました! 早速取りに行ってきますっ」
「素材集めながらレベルも上がるから、一石二鳥だねエリュちゃん!」
一石二鳥なんて単語をココットが知っていたとは……そのぐらいドンくさそうなんだけどな。意外だぜ。
それにしても――だ。
「おい、情報料取らねーのかよ。俺んときには手出してアイテム寄こせっつったくせに」
おっさんもソリオも子供を送り出す親みてーな顔で、エリュテイア達を見送ろうとしてる。
手を出して金なりアイテムを催促する気は無いみたいだ。
「馬鹿言え。こんな初心者丸出しの子等から金なんか毟り取れるか」
「お前ぇーみてーに、元からレアだのなんだのの装備持ってる奴からしか、ふんだくったりしねーよ」
「なんて親子だ! 客を見てぼったくりやがるとはっ!」
「はっはっは。心配するな。装備品の価格は適正だからよ」
「信用できるか、糞っ」
人を選ぶなんて、客商売としてどうなんだよっ。
俺がぷりぷりしている間に店を出て行くエリュテイア達。
「おいおい、坊主。初心者丸出しのお嬢ちゃんたちを、二人だけで鉱山に行かせる気か?」
「あぁー? 二人の装備素材なんだろ? 俺には関係ねーよ」
「鉱山の中にはモンスターも出るんだぜ?」
モンスター?
鉱山……モンスター……あれ? もしかして、未解放だったエリアだったりするのか?
受付嬢をチラリと見ると、一瞬はっとしたような顔をしてから、もじもじ仕草をし始めぼそりと呟いた。
『ダ、ダンジョンなども新しく、実装されているかもしれませんねぇ~』
どこかわざとらしい口調だが、間違いない。
クローズドでも発見情報の無かったダンジョン。
オープンベータになっても、wikiはおろか『にゅちゃんねる』にもダンジョン発見情報がどこにも無かった。
ダンジョン。
凶悪なモンスターが群を成して生息するエリア。
ダンジョンごとに特色があり、そこで手に入るアイテムはプレイヤーの心を擽る。
レベリングにも最適だし、ダンジョンボスを倒せば運次第で富を得る事も出来るっ!
「行くぞ、受付嬢!」
『あ、はい』
っふふふ。ダンジョンか。
二刀流の試し斬りにはもってこいだなっ。




