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31:目覚めたら、メンテだった。

 目覚まし時計のベルで起こされ、真っ先に便所へと向う。

 出る出ないの問題ではない。出すのだっ。

 ゲーム中にリアルで尿意を感じたら、警告メッセージが出てウザイからな。そこでログアウトしなきゃならなくなるし、時間的効率が悪くなる。

 

 真冬の冷たい水で顔を洗えば眠気も吹き飛ぶ。

 そのまま部屋に戻ってヘッドギアを装着すると、再びベッドに寝転んだ。

 電源を入れ、ログインボタンを押す――が、


「うげっ、緊急メンテナンスってなんだよっ!」


 今の俺は部屋の天井を見る姿勢だが、実際に見ているのはパッチサーバーの画面であり、広大な草原の風景でもある。

 空には大きな鳥が飛び交い、遠くには飛行船のようなものも見える景色。

 だがここはVR空間ではなく、ただの映像だ。

 画面中央にお知らせウィンドウがあって、そこに緊急メンテナンスの告示が書かれていた。

 詳細は――


「お、このままウェブサイト見れるのか。なになに?」


 人工知能によるアップデート?

 人の手を借りなくてもアップデートが出来るのか。

 ってかシステムプログラムを作れるのか? 大丈夫なのかよ、不具合だらけになったりしねーだろうな?

 いや、寧ろコンピューターがやるんだから、人間がやるより完璧かも?


 まぁいいや。人だろうが人工知能だろうが、不具合はVRMMOにはつき物だしな。

 肝心なのはアップデート内容だ。


「生産作業の改善か……具体的な内容が書かれてないな。ログインしたら工房だし、技能ページかNPCに聞けば解るかな」


 素材の獲得数調整が上方修正だといいんだが。

 スタック数の改善にレアモンスターの増員。なかなか良い内容じゃねーか。

 料理にステアップか。料理技能持ち増えるだろうな。


 あ、最後の『既に実装されている肉体的生理現象』って尿意の事だろ。

 それは書かないんだな。

 まぁ告知で『尿意実装』と書いても、なんかションベン臭いだけだしなぁ。


「メンテ終了は8時予定か。あと3時間もある……。6時半まで寝るか。起きたらwikiと『にゅちゃんねる』のチェックでもしとくかとこう」


 ヘッドギアを外し、目覚ましを6:30にセットして再び目を閉じる。

 ここでしっかり寝ておけば、途中で睡魔に襲われるなんて事も無い、はず。

 ゲームを満喫するために寝るのだ。

 そう思えばこそ、俺の意識は即行で眠りへと落ちた。





 再び目覚ましの音で目が覚めると、まずは顔を洗って台所へと向う。

 もう親父とお袋は仕事に出かけたようだな。

 テーブルの上にサンドイッチとサラダが用意されていたので、それを貪ってから便所へと向う。

 部屋に戻って目覚ましを7:40にセットしてパソコンの前に座った。


 まずはwikiを確認しよう。

 wikiに新しく『二次職』のページが追加されているな。

 ほほぉ、NPCから情報を聞けるのか。

 カジャールから南に行った町『サイノス』に二次転職NPCが居るらしいな。

 転職レベルは40。運営が出してた情報のままか。

 剣士、盗賊、弓職、神官、魔法使いの5職業がそれぞれ、二つの上位職業に分れる。オーソドックスなスタイルだな。


 えーっと、盗賊は……


「やっぱ暗殺者アサシンはあったな。もう一つは悪漢ローグか。へぇ、こっちは盾を装備すれば、攻守のバランスも比較的良いって書いてるな」


 なら、受付嬢向けかもな。

 スキルは……流石に情報無しか。

 二次職ページの下部にあるコメント欄に気になる情報を発見。




-------------------------------------------------------------------------------------


 ・○NPCにスキルの話を聞いたら、「スキルは個人の能力次第だ」とかいみふな答えが返ってきた。--20xx-12-xx

  ・○能力? ステータスの事? --20xx-12-xx

  ・○一次時代のスキル構成とかステータス、戦闘技能構成とかじゃね? とにかく二次からは用意されているスキルを取るんじゃなく、自分のスタイルに合わせたスキルが出現するってタイプなんだろう。--20xx-12-xx


-------------------------------------------------------------------------------------




 用意されているスキルから、好きな物を選んで取る・・・…じゃなくなるのか。

 うーん、どうなるんだろうな。


『にゅちゃんねる』の職業スレもその話題で持ちきりだ。

 攻撃スキルは『シャドウスラッシュ』と『スタブ』がメインで、どちらか片方をスキルレベルMAXまで取ってるプレイヤーがほとんどっぽい。

 逆に両方をMAXにしてると、補助的なスキルである『ハイディング』や回避向上の『アヴォイスト・ブースト』なんかを捨てる事になる。

『アヴォイスト・ブースト』はまだいいとして、『ハイディング』すら取れなくなるのは盗賊として終わってるだろう、とか、パッシブスキルを捨てたと書き込みがあれば『糞火力おめ』と草を生やしたレスが乱立する。


 俺はどうすっかなー。

『スタブ』をレベル1取れば、派生スキルの『スタンブロウ』が出るが……。

 スレを読み進めていくと、『スタンブロウ』はMAX3までしかなく、MAXまで取ればスタン時間も5秒になって、なかなか良い効果らしい。

 ダメージ量としては、MAX3でも通常攻撃の1.5倍程度と低め。それでも囲まれた時なんかと考えると、有効なスキルだと思う。


 受付嬢が取った『解毒』も、派生スキルのトリガーになっていた。

『ポイズンブロウ』といって、毒を武器に染み込ませて対象を毒状態にする、と。

 ほぉ、回避と命中率も低下させる効果があるのか。

 持続性のダメージ量は、使用する毒によって変わる?


「使用って、どういう意味だ?」


 普通、ゲームだとスキルを使えば勝手に毒付与されるもんだけどな。

 件のレスの前後をもう一度よく見なおそう。




------------------------------------------------------------------


【盗め!】『Let's Fantasy Online』盗賊専用スレその2【騙されるな!】


328 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 ハイディングの派生スキルってなんだ?



329 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 解毒を取ったらポイズンブロウってのが出た

 スキル説明は

「武器に毒を染み込ませて敵対象を毒状態にする」だった

 持続時間15秒で毎秒持続ダメージ+効果中は回避命中を下げる

 持続ダメージはスキルレベルじゃなくって塗る毒のランク依存だって書いてたが

 塗る毒がいまいちわからない



330 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 >>328 

 クローキング

 ハイディング状態のまま歩ける

 レベル1が通常の徒歩速度の5割

 レベル2でいつも歩いてる速度

 ただし走れない。走り出すとスキル解除



331 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 転職したやつおるの?



332 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 スティールで盗めるアイテムって、一匹のモンスターにつき1個だけ?

 一度盗んだモンスターを他の盗賊キャラがスティールして成功するの?



333 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 >>330

 サンクス



334 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 >>329

 製薬してる知り合いが腐った草使ってポーション作ったら

 腐ったポーションってのが出来たらしい

 その説明が「飲んだら腹を壊す。毒物」と書かれていたと

 もしかしてこれじゃね?



335 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 シャドウスラッシュとスタブ、どっちをMAXにするか悩む

 どっちがダメージ効率良い?



336 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 >>332

 ggrks



337 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 ポイズンブロウは製薬頼みかよ

 スタンはどうなんだ?



338 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 スタブお勧め

 スタブをMAXまで取るとクイックスタブってのが派生する

 対象の背後に回りこんでスタブするスキルだけど背後から攻撃するせいか

 スタブよりダメージ量がでかい

 シャドウスラッシュは後ろに派生する攻撃スキルが無いからなー



339 名前:いつかきっと大盗賊[sage]

 >>337

 スタンはただの攻撃


 ・

 ・

 ・




 あぁー、あの毒瓶。投げるだけじゃなくって、こういうのに使うんだな。

 毒の種類によってダメージが変わるっていうなら、他にも種類があるはずだな。

 投げるだけだと、たぶん毒の持続ダメージだけだな。命中と回避を下げる効果は付かないだろうし……


「取ってみるかなぁ」


 モニターを見つめたまま考えていると、ここで目覚まし時計のベルが鳴り出す。

 急いで音を止めて便所へと向う。

 出る出ないの問題ではない、出すのだっ! 以下略。


 部屋に戻ってきて時計を確認すると、7時57分頃。

 ベッドに転がってヘッドギアを装着し、電源を入れる。


 今度はスタダする必要も無いので、適当にログインボタンを押して待つ。

 何度か押していると、サーバーが開いたようでログインに成功した。

本日分の活動報告に、12話(はじめて露店を出した際の)の裏話というか小話を書きました。

受付嬢視点ですので、彼女をお好きなかたは是非、ご覧になってみてください。

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