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29:フレンド初体験。

これ15禁ですからぁーっ!

 おっさんに作って貰った装備に着替えて店を出ると、時刻は13時24分。

 相変らず薄暗い店内だと見栄えがどうなのか解らなかった装備だが、店を出てようやく見る事が出来た。

 首下をすっぽりと隠すような襟をした上着は、体のラインにぴったりと収まり左胸部分にだけ皮鎧がベルトで固定されているようだ。

 黄土色とこげ茶をベースにした上着は半袖だが、下に黒い長袖を着込むタイプになっている。

 胸当ては動きを妨げないようにする為なのか、心臓に近い左側にしか無い。

 腰のベルトは二重になってて、なかなかかっこいい。

 ズボンも同じ色調で、サイドには短剣を下げるためのバックルが着いていた。

 んで、上半身下半身と、部分的に紅いラインが入っていたりして、血なまぐさいアサシンっぽい。

 いや、まだ盗賊だけど。


 性能の方は――




------------------------------------------------------------------


【アイテム名】ソリオスペシャル・シーフズジャケット ☆

【装備レベル】25

   【効果】ソリオが手塩にかけて作った名品。

       防御力+117 AGI+5 一定確率で被ダメージの15%を軽減。

       風属性への耐性50%上昇。




【アイテム名】ソリオスペシャル・シーフズパンツ ☆

【装備レベル】25

   【効果】ソリオが手塩にかけて作った名品。

       防御力+82 AGI+5 一定確率で被ダメージの10%を軽減。




【アイテム名】ソリオスペシャル・シーフズブーツ ☆

【装備レベル】25

   【効果】ソリオが手塩にかけて作った名品。

       防御力+54 AGI+9 回避率+5


------------------------------------------------------------------ 




 おぉ!

 AGIの補正が全部に付いてるじゃねーか!

 ダメージ軽減はまぁ、回避特化だから微妙っぽくも見えるが。

 それにしても、この『ソリオスペシャル』ってネーミングがなぁ……。

 もしかして、あのおっさんの名前がソリオなのか。

 息子の名前の事を考えると、間違いないんだろうなぁ。

 つかり、ソルトに依頼した短剣も『ソルトスペシャル』なんて事に?

 うーん、そこだけ変更してほしいな。


 さっそく防具効果を――っと行きたいところだが。


「うーん、せっかく新装備になったのに、狩りに行く時間は無さそうだな。ポーション作ってる時間も無いし、草を炒るところまでやっとくか」

『ではワタクシの分の薬草もお渡ししますね。それと、装備の代金を――』

「あぁ、いいって。素材を売った分のお釣りもらってるし。こうして薬草をくれるから、技能もガンガン上がるしな」


 今作れるポーションのうち『ライフポーション:LV3』は使用可能レベルが30からだ。

 はっきり言って、まだそのレベルに到達しているプレイヤーは少ないだろう。もしかすると居ないかもしれない。

 需要が無いレベル帯のポーションが作れてしまってるんだよなぁ。

 そのぐらい、技能レベルが先行してるってことだ。


『よろしいんですか? では、これからも採取を頑張りますね』

「あぁ。ポーション屋でガンガン稼ぐぜっ」


 おっさんの店から工房は、目と鼻の先だ。

 さっそく向って、大量の薬草を洗って炒って――

 視界に連続接続時間が間もなく上限に達するという旨のメッセージが浮かんだ。


「なんとかギリギリ、強制ログアウト前に加工まで終わりそうだ」

『ログアウト後はどうなされますか? 現実では丁度日付変更時刻でございますが』


 ログインしたのが夜の8時前。連続接続可能時間が4時間までなので、今は0時前ってことだな。

 1日8時間までしか接続できないが、日付が変わるので一旦ログアウトして0時を過ぎればまた遊べる。

 だが……。

 工房を見ても解るが、プレイヤーが増えてきたな。

 今だって、作業台の空きが片手で数える程度しか無い。

 狩場も混雑してきただろう。

 社会人組が必死になってレベリングしている頃だ。

 明日は土曜日だし、社会人組は制限時間がくるまで必死狩りだろうな。


「一旦ログアウトしたら、少し寝るよ。狩場が混むだろうし、それを避けて早朝からログインするつもりだ」

『左様でございますか……』

「なんだ、浮かない顔して?」

『あ、いえ。カイト様がいらっしゃらない間、ワタクシもログアウトという形を取らないといけないなぁと思いまして』

「そっか。悪いな、面倒な事させちまって。ログインしたら連絡するよ――って、どうやればいいんだ?」


 NPCに連絡? 問い合わせからか?


『ワタクシの方ではカイト様がログインされれば解りますので』

「そっか。でも俺のほうから連絡ができると便利だしなぁ」


 やっぱお問い合わせフォームから連絡――だと、一旦運営スタッフが確認して、それから……それからどうすんだ?

 ゲームシステムに伝言?

 え?

 自分で言ってて意味解んねーし。


「あぁー、面倒くせーな。こういう時、普通ならフレ登録とかなんだろうけど」

『あ、はい! そういたしましょうっ』

「え?」


 なんとなくぼやいたセリフに、受付嬢のほうが食いついた。

 ぐいっと身を乗り出す仕草で顔を近づけ、タブレットを見せてくる。


「フ、フレ登録、か?」


 こくこくと頷く受付嬢。


『フレンドリスト画面からワタクシの所在地も解りますし、フレンドチャットで呼び出すこともできますからっ』

「お、おおぅ。そ、そうだな」


 勢いに押される形でフレ登録する事になったが……あれ? これって、人生初のフレンド登録じゃね?

 そう思ったら急に緊張してきた。

 タブレットを操作する手が震える。

 いや、寧ろどうするんだっけ!?


「わ、悪ぃ……」

『え? カ、カイト様? ワタクシとはフレンドに――』


 眉間にしわを寄せ受付嬢は、何故か目を潤ませたりしている。

 なんかこいつ、急に人っぽくなってきたな……。

 そ、そんな目で見つめたってなぁ、登録方法を思い出せる訳じゃないんだよ。

 ってか、なんでそんな顔してんだ?


「悪ぃ、フレ登録の方法、教えてくれ」

『へ?』

「いや、だからさ。誰かとフレ登録するとかさ、人生で初めてなんだよ。wikiなんかもしっかり見てたのに、肝心な時にド忘れしちまって」


 頭をぽりぽり掻きながら受付嬢を見ると、口をぽかーんと開けたまま固まっていた。

 彼女の顔の前で手を振ると、慌てて思い出したかのように登録方法の説明を始める。


『タ、タブレットのコミュニティーアイコンをタップしてください』

「おう、OKだ」

『切り替わった画面の一覧から『フレンド』をタップし――』

「おぉ、この画面見たら思い出した。フレンド申請画面にして、相手の名前を入力して送信ボタン押せばいいだけだったな」

『はい、左様でございます』


 入力欄に『受付嬢』と、可視化されたキーボードで打ち込み送信。

 ほどなくして、受付嬢がフレンド申請の承諾をしたというメッセージが届く。

 フレンド一覧の画面を開くと、


------------------------------------------------

【名前】 / 【レベル】 / 所在エリア


 受付嬢    LV25    カジャール

------------------------------------------------


 なーんて表示されていた。


「と、登録完了だ」

『はい。ワタクシの方にも、カイト様のお名前が表示されております』

「お、おう。じゃ、ログインしたら連絡するわ」

『はい。お待ちしております』


 視界の隅にあった強制ログアウト時間までのカウンターが3分を切った。

 このままここでログアウトして、インしたら即行で製薬だな。

 それから依頼した武器を取りに行って、露店――いや、直ぐに狩りに行くか。


 どんな短剣が出来上がるだろうか。

 二刀流の威力はどんなもんだろうか。

 もう楽しみで仕方ない。


『カイト様、ご機嫌ですね?』

「ん? あぁ、次にログインしたら短剣も完成してるだろうしな」

『そうでございますね。受け取ったらすぐに狩りに行かれますか?』

「さっき加工した草をポーションにしたらな」


 間もなくログアウト時間だ。

 ふと今日の事を振り返ると、顔がやたらと緩んでしまう。

 ネトゲで初めて、他人とパーティーを組んだんだ。それに、いっぱい話もできた。主にゲームシステムの話しばっかりだが。


「また会えるといいなぁ……」

『エリュテイア様やココット様にですか?』

「っへ? はっ、声に出てたか?」


 受付嬢を見ると、こくりと頷かれる。

 うひぃー、恥かしいっ。


『よかった……ですね。同じプレイヤーのご友人が見つかって』

「いや、お前、ご友人だなんて……。そんないきなり、恥かしいじゃねーか。大体、まだ友達になれたかどうかも解んねーんだぜ?」

『左様でございますか?』

「そりゃー、なれればいいなぁとかは、少し――ちょびっと? このくらい? 思ってたりはするけどよ」


 米粒サイズ程度に指で説明するが、本音では物凄く友達になりたいと思ってる。

 それをここで言うのは、ちょっと恥ずかしい。

 彼女等とパーティーを組めたのも、元はと言えば――


「お前のお陰だよ。助けに行くかとか、パーティー組むかとか、お前が言ってくれたから、俺は他人と関われたんだ」

『そう、でございましょうか?』

「そうだよ。マジ、さんきゅーな」


 最初はNPCの友達なんて、他人から不審がられるだけだろって、邪険にもしてたが――

 今は本気で感謝してる。


 ずっとソロってた頃に比べると、単調な狩りも作業的に感じないし、まさに作業である生産だって、隣で成功失敗への反応を見せてくれるこいつがいるから、飽きずにやれているってのもあると思う。

 仏頂面の鉄仮面。そんなだったこいつの微々たる変化も、見てて驚かせられる。

 そのうち本物の人間みたく、喜怒哀楽を表現できるのかな?


《まもなく強制ログアウトを行います。カウント10――》


 おっと、10秒切ったか。


『カイト様』

「ん?」


《カウント――5》


『ワタクシはカイト様の友人になれた事を……』


《カウント――3》

《カウント――2》



『心から感謝しております』


《カウント――1》


 ぎこちない笑顔の受付嬢が見える。

 そして――


《カウント――0》






 ベッドの上で目を開けた俺。

 起き上がって尻を確認する。

 尻尾は、当然無い。

 無いのに、何故か尻尾を振っているような、そんな錯覚を覚えた。





◆◇◆◇◆◇◆◇


 名前:カイト

 レベル:25

 職業:盗賊 / 種族:ケモミ族

 

 HP:3600 → 3800

 MP:960 → 1050


 STR:37+28 → 57+32

 VIT:17+34

 AGI:99+31 → 99+34

 DEX:15+4 → 15+6

 INT:5

 DVO:5

 LUK:10+2


 SP:0

 スキルポイント:5


●アクティブスキル●

『石投げ』『足払い』『スティール:LV1』『シャドウスラッシュ:LV1』

『バックステップ』『カウンター:LV1』


●パッシブスキル●

『短剣マスタリー:LV5』『ダブルアタック:LV5』『二刀流』


●修得技能●

【格闘:LV28→31】【忍耐:LV34】【瞬身:LV31→34】

【薬品投球:LV11→12】

【岩壁登攀:LV5→6】【ポイント発見:LV9→11】【採取:LV13→15】【製薬:LV7→8】


 技能ポイント:1


○技能スキル○

『巴投げ:LV1』『ポーション投げ:LV11』『素材加工:LV6』『ポーション作成:LV6』

『電光石火:LV7→8』『ポーションアタック:LV1』


●獲得称号●

【レアモンスター最速討伐者】【最速転職者】【ファースト・クラフター】

【ファースト・アルケミスト】


◆◇◆◇◆◇◆◇


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