25:二人で朝まで……これ15禁ですからっ!
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【アイテム名】水鱗の小盾 ☆
【装備レベル】24
【効果】防御力+87。水属性攻撃のダメージ20%カット。
一定確率でダメージ反射。
【アイテム名】アクアブーツ ☆
【装備レベル】24
【効果】防御力+54。水属性攻撃のダメージ3%カット。
水辺での攻撃速度・回避率低下等の効果解除。
【アイテム名】フット・ピラニアの鱗 ☆☆
【備考】素材。
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装備品が二つか。
しかし……よりにもよって盾かよ。
ブーツの効果見てると、足場の悪い水辺ではペナルティが加えられてるみたいだな。
時間が掛かったのはフット・ピラニアの硬さだけじゃなかったみてーだ。
「あぁー、せっかくのレアなのに勿体ねー」
『いかがなさいましたか?』
アイテムを回収しおえた受付嬢がやってくる。
ドロップしたアイテムを告げると、同情するような目で見てきやがった。
ん?
こいつ、こんな顔するようになってたのか。
はぁー……盾かぁ。どうすっかな。
ダメージ反射とか、無駄に性能良いしなぁ。
だからって盾を装備したら、攻撃速度にマイナス補正が入るし。
盗賊だって盾の装備は可能だが、速度の点では微妙すぎるんだよ。
そりゃ、受付嬢みたいにAGIを捨てたネタステータスならいいだろうけど……あ、彼女になら盾は有効なのか。
「なぁ受付嬢。お前さ、『二刀流』のスキル取るつもりあるのか?」
『二刀流ですか? いえ、今のところは……』
「じゃーさ、お前、盾持ってみないか? どうせプチVIT型のステータスなんだろ。そういや今って、どういうステータスなんだ?」
『ワタクシのステータスですか? えーっと、こうなっております――』
そう言って彼女がタブレットを取り出すので、俺も同じように出す。
お互いのタブレットをくっつけて、画面をスライドさせるようにして俺の方にデータを送ってくる。
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名前:受付嬢
レベル:21
職業:盗賊 / 種族:人族
HP:3300
MP:930
STR:40+5
VIT:40+5
AGI:23+2
DEX:15+2
INT:5
DVO:5
LUK:60+5
SP:0
スキルポイント:1
●アクティブスキル●
『石投げ』『足払い』『スティール:LV1』『シャドウスラッシュ:LV1』
『解毒』『スタブ:LV1』『バックステップ』『クイックスタブ:LV1』
●パッシブスキル●
『短剣マスタリー:LV5』『ダブルアタック:LV5』
●修得技能●
【耐久:LV11】【筋トレ:LV9】【運気:LV10】【突き:LV6】【敏捷性:LV4】
【岩壁登攀:LV5】【ポイント発見:LV8】【採取:LV9】
技能ポイント:1
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LUK先行で行ったのか。
『スタブ』に合わせて【突き】も取ってるな。なかなかどうして、ちゃんと考えてるじゃねーか。
俺の知らないスキルは『クイックスタブ』って奴だな。名前からして『スタブ』と『クイックステップ』の派生スキルか。
「なぁ、この『クイックスタブ』ってスキルの効果はなんだ?」
『はい。二段突き攻撃です。先ほど『クイックステップ』を取った際に派生しましたので、取ってみました』
「そうか。『シャドウスラッシュ』との派生スキルもあったりするんじゃね?」
『ございますね。『スタンブロウ』が派生しております。効果は、対象を攻撃して昏倒させるとあります』
「よし、サンキュー。状態異常系か。一つはほしいな」
欲しかった情報が受付嬢からもたらされるとはな。
彼女が実際にそのスキルを派生させているからこそ、素直に教えてもらえたんだろうけど。
っと、話が逸れちまったな。
「このAGIステなら、攻撃速度は今更感があるな」
『はい』
「だったら、防御を強化する意味でも盾を持つのも有だと思う。どうだ?」
『そう、でございますね。躱し切れないのであれば、防御力でカバーするのがいいのかもしれませんね。今回の戦闘でそう学びました』
「よし。じゃー、俺の盾をやるよ。俺は攻撃速度を捨てるには勿体無いステータスと技能だし。せっかくのレアだ、お前が有効に使ってくれ。
と言っても装備レベルにまだ届いてねーけどな」
早速タブレットで取引要請を出す。
『あ、あの。ではワタクシが手に入れた装備をカイト様に――』
「物々交換か」
こくりと頷いた受付嬢が渡してきたのは、森林クラブの甲羅12個と短剣だった。
しかも名前の横にあった星の数は――
「ちょ! またミドルレアかよ!」
『は、はい。攻撃速度上昇効果もございますし、カイト様向きかと』
レア盾一つとじゃ割があわねーよっ。こうなったらブーツも付けてやる。
『え? ブ・ブーツまで!? で、では――』
「おいおい、鱗まで寄こしてくるなって」
『あ、カイト様まで鱗を!』
こうしてお互い、アイテムの押し付け合戦を始めるのであった。
顔のにんまりが治まらない。
受付嬢と物々交換で貰った短剣の性能を見てからだ。
結局、ミドルレアとレア一つじゃ公平性が無いというのもあるし、この前もレア靴を貰ったのもあるしで盾と指輪を彼女に渡した。
それでもお釣りが出てもおかしくない性能の短剣だ。
『水流のシュトゥーム・スティレット』
もちろん星は二つ。
装備レベル24で、攻撃力は154。
特殊効果として火属性モンスターへの追加ダメージが+20%。与ダメージの3%をHPに還元。攻撃速度+25。更に……
「スプラッシュっつー、水魔法も使えるのか」
『はい。短剣を掲げて術名を口にすれば、魔法が発動いたします』
「くぅー。今すぐ装備して試してみたいってのになぁ。よぉし、レベリングだ!」
『素材もだいぶ集まっているはずですが、町に戻らなくてよろしいのですか?』
「戻ったところでレベル25装備用の素材だぜ? 結局装備できないのは同じだろ。いや寧ろ、この武器があるんだから、製造依頼だっていらねーじゃん」
蟹の甲羅は売って金にするのもいいし、防具の素材にもなるならそっちに使ってもいい。
いっそのこと、受付嬢には防御重視で軽装備から重装備に変えるのも有だな。
その事を話すと、本人も『なるほど』と乗る気でいる。
『あの、カイト様。先ほどのワタクシへの質問をお返しするようで申し訳ないのですが……』
「ん? なんだ?」
陽も暮れ始め、辺りが薄暗くなってきた。
だが森林クラブがそこから消える気配は無い。昼夜問わず生息するタイプだな。
周囲の状況を観察しつつ、受付嬢の言葉に耳を傾ける。
『カイト様は二刀流になさるのでしょうか?』
「んあ? スキルを取るかって事か?」
彼女が頷く。
二刀流――左右の手に、それぞれ武器を持つ戦闘スタイル。
片手用武器に限って可能となるスタイルだが、スキルを持ってなくても出来ちゃったりする。
するんだが、デメリットがでかすぎる。
まず攻撃速度は落ちるし、利き手とは逆の方での攻撃だと、命中率もダメージも落ちる仕様だ。
それらを『二刀流』スキルを取ることでチャラに出来る。
このスキルを取れるのは剣士と盗賊だけ。
もちろん俺は――
「取るぜ。二刀流はやっぱロマンだろっ!」
『浪漫……ですか。ワタクシにはいまいち理解できませんが』
「っふ。それはお前が女だからだ」
『女だからですか。それなら納得できます』
「素直でよろしい。さっ、明日の朝までレベルを上げるぞ!」
『朝まで……ですか。カイト様は大変にタフなお方ですね。眠れない夜、朝帰り……ワタクシ、耐えられるでしょうか?』
んな事、潤んだ目で言うなぁーっ!
おお、お、お、俺ががががが、ひ、ひひひ卑猥みたいじゃねねねねーか!
……続き。
『そういえば、頂いたブーツですが』
「ブブブブブーツがどうしたって?」
『はい。ワタクシが頂いて正解だったと思います』
「なななな、なんでだよ?」
『はい。ブーツとは名ばかりの、ヒールタイプでございましたから』
「ヒッ」
『しかもタイツとのセットです』
「タッ」
そして受付嬢が自らのスカートをたくし上げ、足を見せる。
膝丈だったスカートの裾からは、彼女の太ももが顕になる。
細くも無く太くも無く、程よい肉付き……NPCをデザインした奴に会いたい。会って握手をしたい。
「そそそそそうじゃなくって! なんでスカートめくってんだよお前っ」
『はい。これとほぼ同じデザインのブーツである事を伝えたかったのですが、伝わりませんでしたでしょうか?』
「はいー?」
受付嬢の……足装備?
黒い靴――ハイヒールってほどじゃないが、踵が少し高い。
んで、太もも辺りまである白いニーソックスみたいなのを履いてて、上のところにはサスペンダーみたいなのが付いている。
「そ、そんなデザインのブーツなの……か?」
『はい。アイコンなのでタイツ部分が網なのかそうでないのかは解りませんが』
お、俺が装備したら、どうなってたんだ……。
い、いや考えまい。
想像するな、するんじゃないっ!
ぎゃあぁーっ!!




