表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/160

24:怪魚戦

 足の生えた魚。

 はたしてこいつは魚類なのか、それとも両生類なのか。はたまた動物?

 モンスターにも、それぞれ種族があり、種族によって苦手得意属性なんかがあったりする。

 動物なら火属性が苦手だし、魚類なら雷が。両生類は氷が苦手だ。


「うん。弱点云々考えたところで、俺たちは物理戦闘職だからそんなの関係ねーっ!」

『弱点ですか? 魚類なので雷かと思いますが』

「だから、雷魔法も無ければ雷属性が付与した武器も持ってねーって」

『左様でございますね。『クィーン・ニードル』で強化加工を依頼しておけばよろしかったですね』


 あぁーっ! そうだったっ。

 森林クラブも水属性だろうし、雷は有効だったろうに。

 くっそぉー。

 っていうか、この足つきピラルクは魚類扱いだったのか。

 えーっと、モンスター名が?



---------------------------------------


 モンスター名:☆フット・ピラニア 

    レベル:24


---------------------------------------




「おいっ。明らかにネーミングがおかしいだろ! これのどこがピラニアなんだよ。おい!」

『す、すみません。しかしモンスター名のほとんどはデザイナーによるものですので、その……』


 ちゃんとネットで、ピラニアとピラルクの外見チェックしてから命名しろよな……。

 

 魚類――の癖に浅瀬に立っている(・・・・)フット・ピラニア。

 どうやってエラ呼吸してんだ?

 っと思いきや、体の表面に水の膜を張ってやがる。


「っち。切り付けてもなんか手応えが重いと思ったら、水の膜でダメージが上手く通ってねーのか」

『そのようですね。凡そ一割ほど防がれております』

「だぁー、やっぱ『クィーン・ニードル』で雷属性付けて貰うんだったぜ」

『引き返しますか?』


 馬鹿言えっ。相手はレアモンスターだぞ。

 他の誰かに見つかったら、獲物を取られてしまうじゃねーかっ。

 幸いあの足のせいか、動きは遅い。時間は掛かるかもしれねーが、地道にHPを削り取っていこう。


「奴は川から上がってこねみてーだな。だからって川の深みに行けば奴の独壇場だ。足場は悪いが、この浅瀬でなんとか倒すぞ」

『はい。では――スティール』

「いきなりかよ!」

『はい。そして盗む事に成功しました』

「マジかよっ!」


 こいつ……サポートAIより盗賊向きじゃね?

 俺だって『スティール』したかった……ま、まぁいい。その分のMPを攻撃に――


「ぐぬぉーっ! 『シャドウスラッシュ』」


 前傾姿勢でフット・ピラニアの横を掠めるようにして過ぎ去る。

 その際、短剣を一閃させて奴に多少のダメージを与えた。

 すると、鱗が1枚舞い上がり、その部分の皮膚とでもいうのか? が顕になった。


「流石に図体がでかいだけあって、鱗もでかいな……」


 なんとなく掴んだ鱗は、俺の掌よりやや小さい程度の大きさがある。

 あ、鱗っていやぁ、スケールメイルとかスケールシールドとか、ファンタジーでは定番の装備素材じゃねーか。

 データの藻屑にならないあたり、このままアイテムボックスに入れればゲットできるんじゃね?


『カイト様っ、攻撃が来ますっ』

「うわっと、あっぶ――へぶしっ」


 べろんっと生暖かい何かが俺の顔を舐めまわす(・・・・)

 な、何が起こった?

 今、何が俺の顔を舐めた?


 背筋が凍るような、そんな錯覚さえ覚える。

 見ると、目の前のフット・ピラニアが長い舌を出して俺を見つめているではないかっ!

 ちょ、待てっ。

 魚だろ?

 なんで舌があるんだよっ!

 なんで魚のくせにウィンクしてんだよっ!


「き、気色悪ぃーんだよ! この、魚類!」

《ギャァーッ!? ブッチーン!》


 ブッチーンっておいっ!

 ちょ、尾っぽ振り上げて何する気だ?

 あ? まさかビンタの構え?

 んなもん、余裕で躱してくれるわっ!

 ――っといつもなら華麗に回避行動に移れるハズだったんだが、膝辺りまで水に浸かっているせいか足が思うように動かない。

 いつものようなスピードも出せず、モロに尾っぽビンタを食らって500近いダメージを貰ってしまった。

 レベル1のライフポーションを取り出し、一気に飲み干す。

 空になった瓶はデータの藻屑となって消え、光の粒子を撒き散らした。


「やってくれたなっ!」


 ざばざばと岸のほうに移動し、奴をもう少し浅瀬に引き寄せる。

 なんとか足首あたりの水深の所まではひっぱれたな。


「っしゃー! 行くぜっ」


 再び『シャドウスラッシュ』を仕掛ける。今度は水深の深いほうに向ってではなく、上流から下流に向かい感じで走った。

 そこに『電光石火』も加えてターンし、通常攻撃をお見舞いする。

 鱗が剥げ、しっかりとそれを確保した。

 その鱗が剥げた箇所に、受付嬢が短剣を突き刺す。


「お、その構えって、スキルか?」

『はい。突き系攻撃の『スタブ』を取ってみました。鱗が剥げた所なら、防御が落ちているかと思いまして』


 盗賊の攻撃スキルの中で、俺的には微妙だと思っているヤツだな。

 派生スキルの前提になってそうだから、そのうち取ろうとは思っていたが。

 後で派生スキルが出てるかどうか聞いてみよう。

 それよりも今は目の前のこの妖魚だ。


 鱗が剥げた部分への『スタブ』は、どうやら有効らしい。

 しかし逆に、鱗の部分に『スタブ』をしてもほとんどダメージが通ってない。

 硬い鱗が突き攻撃を防いでしまっているのか。

 で、俺の『シャドウスラッシュ』で鱗が剥げる――っと。

 こりゃコンビプレーが必要だな。






 俺が鱗を削り、受付嬢がむき出しになった箇所に『スタブ』を打ち込む。

 コンビプレーで楽に倒せるかと思ったが、流石にそうはいかなかった。

 まず鱗は『シャドウスラッシュ』一発で剥げる訳ではなく、どうもランダムな確率だったらしい。

 その後、なかなか鱗が剥げずに苦労した。

 したが、受付嬢は既に剥げている二ヶ所を集中して攻撃していたので、奴のHPをじわじわと削り続けられた。


「っはぁはぁ。残りHP、やっと5割か――なんかいつもより時間食ってる気がするな」

『ここまで25分ほど掛かっております。これまでで最長の戦闘時間になるかと』

「っ糞。『スタブ』以外じゃ対したダメージも与えられねーしな」


 だからって今スタブを取る気にはなれない。スキル取りに失敗しても、取り直しが出来ねーんだからな。

 何十回目かになる『シャドウスラッシュ』を打ち込もうとした時、奴の体が震えだし音を発した。

 鱗同士を擦り合わせたような、そんな音だ。


 すると、辺りの岩場から森林クラブが――


「ちょ、こいつ蟹を召喚するのかよっ」

『そのようです』

「俺が蟹を倒していくから、お前は魚のほうを頼む!」

『了解いたしました』


 俺の『シャドウスラッシュ』じゃたいしてフット・ピラニアにダメージを与えられない。

 なら俺が蟹を倒すほうが効率が良いだろう。

 6匹出てきた蟹に一撃ずつ加えて、全部のヘイトを取る。

 そこから一匹ずつ確実に仕留めていって――ついでに『スティール』も忘れちゃいない。

 こんな時にも素材の甲羅の事は忘れてないんだぜ。


 全部を倒し終わって、いざピラニア退治――っと視界の端に映る受付嬢のHPがレッドゾーンに突入している!?

 急いで彼女の方へと視線を向けると、やたらとボロボロになった姿が目に入った。


「おい、受付嬢!?」

『カイト様、フット・ピラニアの噛み付き攻撃にご注意くださいっ』

「ご注意って……ピラニアの名前は伊達じゃなかったのかっ」


 見ると、鋭い歯を剥き出しにして受付嬢に突進していくじゃねーか。

 ギリギリで躱してるように見えるが、どうやら当たり判定が広いらしい。

 受付嬢のHPバーが、今の攻撃でがばっと減った。


 拙い。あの残り方だと、ヘタすると残りHPは二桁じゃねーか?

 急いでタブレットからポーションを取り出し、それを受付嬢に投げつける。

 この『取り出す』動作がもう少し簡略されればな……。

 その間にもフット・ピラニアの攻撃は止まない。

 尾っぽを振り上げ、往復ビンタの構えに入る。

 っち、アレを食らったら500ぐらいのダメージが入るぞ!


 間に合え――『電光石火!』

 一瞬にして間合いを詰める俺の脳裏に、一つの単語が浮かび上がる。


「カ、『カウンター!』」


 フット・ピラニアと受付嬢の間に割って入った俺は、振り下ろされる尻尾を掻い潜って奴の懐に潜りこみ、短剣を横一閃に走らせた。

 尾っぽは受付嬢に届く事無く、俺も無傷だ。

 だが当のフット・ピラニアは大ダメージを食らってもがいている。

 その間に受付嬢の回復だ。

 もう一本ポーションを投げつけ、彼女自身もポーションを飲むことでなんとかHPバーを80%ぐらいまで回復。


『す、すみません。回避が十分ではない為に、連続攻撃を全て受けてしまって』

「いや、仕方ねーよ。回避ならスキルにある『バックステップ』でも出来るはず。まぁスキルを使うタイミングが重要になるだろうけどな」

『なるほど。足りない回避率はスキルで補えますね』

「ポイントが余ってれば考えてみればいいん――」

『はい、修得しました』


 っぶ。マジかよ……。

 もうちょっと考えて取ろうぜ。






 噛み付き攻撃、尾っぽビンタ。

 それら特殊攻撃のモーションが出た際に、素早く俺が受付嬢の前に立ちはだかり『カウンター』を一閃。

 反撃に使用する攻撃は通常攻撃だけではなく、スキル攻撃にも対応している事が解った。

 更に『電光石火』を挟めば、ダメージ倍率も上昇。

 奴の一撃必殺の攻撃が、奴自身の命を削る結果となり――やがて幾つもの鱗を残して水面に倒れた。

 ピクピク動く生足が妙にシュールな光景だ。忘れよう。


 戦闘時間40分超え。

『カウンター』が有効だと知ってからも、元々の防御力が高かったのもあって時間が掛かったな。

 けど、『カウンター』の使い所も解ったし、より効果的な使用法も見つけられた。

 あとはレアをドロップしていれば言う事無しだぜ。

直前で一部加筆。

どこかといえば……べろりんちょの下り。


やりすぎた。

反省している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ