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118:お稲荷さん。

 翌日は朝から昨夜のメンバーで強化トレーニングという名のレベリングへ。

 と思ったのだが……


『あの、カイト様。実はですね――』


 ポーション等の準備をしている間に受付嬢がぼそぼそと、他のメンバーに聞かれないよう囁いてくる。

 耳元をぞくぞくさせながら聞いていると、


『アオイがカジャールの冒険者支援ギルドに来ていると知らせが入りまして……プレイヤータウンに入れないと泣いているそうです』

「は?」

『アオイがカジャールの冒険者支援ギルドに来ていると知らせが入りまして……プレイヤータウンに入れないと泣いているそうです』

「いや、聞き返した訳じゃないから……なんで入れないんだ?」

『アオイは元来、演出用のスタッフですから。プレイヤータウンに演出用スタッフは入れませんので』


 あぁ、そうか。プレイヤー専用エリアだもんな。管理してるNPCはサポートAIスタッフで、ゲームを演出する為の存在じゃなく、ゲームをゲームとして認識してる運営スタッフみたいなもんだからな。

 受付嬢もそっちのスタッフだし、寧ろGMゲームマスター権限みたいなのでどうとでもできる立場だろう。

 じゃあ、今までアオイがプレイヤータウンに入れていたのは?


『カイト様に肩車されていたからでございます。抱っこでもおんぶでも結構ですが、外観的にでも『所持している』状態であれば、一緒に移動できるのですよ』

「なるほど……じゃあ他のNPCも抱っこしてれば連れてこれるのか」


 ここで俺はふと、ソルトを抱っこしている自分の姿を想像してしまった。

 おえぇーっ。


『大丈夫ですか、カイト様?』

「あ、ああ……嫌なものを想像してしまっただけだ。とりあえずカジャールに行くか」

『そうですね。アオイが泣き叫んで仕事にならないと、助けを求められましたし』


 つまりカジャールの支援ギルド職員を困らせてるようだな。

 クィント達にはNPCからメッセージが届いて、支援ギルドに迎えに行くと伝えてカジャールへと向う。


 そのカジャールにある冒険者支援ギルド。

 建物に入るや否や、アオイの声が聞こえてきた。聞こえてきたが、泣き叫んでいるようには聞こえない。


「美味しいねぇ、美味しいねぇ」

『喜んで頂けてなによりです。……はぁ』


 カウンターの一番端で金髪碧眼の男NPCと対話しているアオイを発見。何か食わせてもらっているみたいだな。

 アオイたちのところに向かった俺と受付嬢は、なんとなく疲れきった様子のNPCに声をかける。


「あのー……」

『お待たせしました、『G-12143AA』』

『あ、良かった。ささ、アオイ殿、お迎えが来ましたよ。あ、それと私の名前は『アーサー』ですので』


 金髪碧眼のイケメンNPCの顔が明るくなる。よっぽど困り果てていたのだろう。

 すぐにキリリとした精悍な顔つきになり、椅子に座っていたアオイを促す。『アーサー』っつーのは、アーサー王から取られたんだろうか。まぁ確かに騎士様が似合いそうな顔つきではある。命名したのは女子だろうな。

 椅子に座っていたアオイはというと――何食ってんだ?


「あのねぇ、あのねぇ。アオイねぇ。から揚げが一番だけど、二番目が出来たお」

「二番目?」


 手に持った米団子みたいなものを見せてくるアオイ。

 黒い点々は胡麻か?


『あぁ、それは――先ほどプレイヤーの方が差し入れしてくださったいなり寿司でございます。お腹が空いたと泣いておられたので、ギルドに来ていた方が見かねて握ってくださって』

「いなり美味しいねぇ〜」

『から揚げから揚げと泣いていたのですが、材料が無いからという事で』

「いなり美味しいよぉ〜」


 から揚げを求めて地団駄踏むアオイの姿が目に浮かぶ。

 で、通りすがりの優しい料理人がいなり寿司を握ってくれたのか。

 きっと、アオイ=狐=いなりという連想ゲームからこうなったのだろう。そして見事にアオイはいなり好きになった、と。


「アオイ、ちゃんとお礼言ったか?」

「うんっ! 言ったお」

『よかったですね、アオイ』

「うんっ! いなり美味しいおぉ」

『そのいなり寿司で15個目でございます』


 ……食いすぎだろ。






「で、かーちゃんとどんな修行したんだ?」

「んとねー」


 転送装置でプレイヤータウンに戻ると、待機していた皆と合流して狩場へと向う。今日はゾエから東に行った平原へと向った。

 砂漠だと火属性モンスターがほとんどで、更に甲虫系モンスターが多く、こいつらは防御力が高い。水か氷属性の攻撃手段が無ければ物理職には厳しい狩場だってのが掲示板情報だ。

 なので東の平原で狩りをする事に。


 アオイの修行については、尋ねてみたがサッパリわからない。


「ははさまとねー、えいっやぁーってやってたの」

「……そうか」


 所詮、知能レベルは幼児でしかない。


 平原では野犬っぽいのに角の生えたモンスターや、鎌を振り回す凶暴な兎が獲物だ。

 レベルは46。

 こいつらは2匹から3匹のパーティーを組んでいて、1匹をもっすんが弓矢で攻撃するとセットになってこっちに向って来る。

 もっすんは引き続き、最初の攻撃した獲物を狙い、俺が1匹を、受付嬢とクィントで1匹を仕留める。

 近くに別のモンスターパーティーが居れば、もっすんが弓矢で一矢放って呼び寄せるところまでやって、タゲ取りは俺がやるという戦闘だ。

 もっすんも引き寄せ用のときには、矢の種類を変えて攻撃力の低いのを使っているみたいだな。ダメージヘイトが低く、俺の通常攻撃でも簡単にタゲを奪い取れる。


 俺と同じように完全ぼっちプレイヤー、もしくはナツメのように基本はソロで、野良パーティーに参加してダンジョン攻略をする。

 そんな連中が集まった俺たちの家だが、ネトゲ初心者なエリュテイアとココットを除くと、案外プレイヤースキルの高い連中が多い気がする。

 特に野良パーティーに好んで参加しているメンバーは、臨機応変にどの住民ともうまく組めているみたいだ。

 羨ましい。


 ま、このパーティーだと俺がタンク役にもなってるんで、火力調整なんてしなくて済むけどな。


 連戦を続けて昼が近くなると、一度ライドを呼び出して比較的モンスターの分布が少ないエリアに移動。そこで昼飯を食いながら今後の予定を考える。


「今夜もレベリングするか?」

「どうせなら徹夜するデス」

『徹夜は睡魔ゲージと相談しなければなりませんね』

「ならダンジョンに行かないっすか? 砂漠の遺跡ダンジョンはアンデットがメインっすから、フィールドより軟いモンスが多いっすよ」

「アンデット! オレの聖なる杯(ホーリー・ウェポン)が火を噴くデスっすヨ!」

「おいクィント。もっすん語が伝染ってるぞ」

『あの、睡魔ゲージが――』

「っすヨ! っすヨ!」

「メンツは大丈夫か? ダンジョンだとヒーラーが欲しい気がするんだが」

「ですよねー。カイトさんとクィントさんだと、二人足して純ヒラの回復量にやっと追いつくかどうかだし」

『徹夜は、あの……』

「寧ろレベルが上がれば上がるほど、クィントのゴミヒールに磨きが掛かって純ヒラに追いつかなくなってきてるがな」

「HAHAHAHAHAHA。気にしたら負けなのデス」

『……あの……徹夜は……が、頑張ります……』

「おう。頑張ろうな」


 無駄だと悟った受付嬢が肩を落として項垂れる。

なんだかどうしても「これ」を出さなければならないような

そういう感想が多々ありましたので……。

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