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8:辻支援は迷惑行為?

【薬品投球】を堪能するついでに、レベル上げも兼ねてフィールドへとやってきた。

 アイシスから東に進み、地図に映る次の町の方角へと向おう。

 レベル10を超えるモンスターから、自発的に襲ってくるアクティブモンスターが増えてくる。そのうちアクティブしか居なくなるんだろう。それがネトゲの定番だ。


「獲物発見」


 早速モンスターと戦闘を繰り広げるプレイヤーを見つけた。

 片手剣を持っているな。まだ未転職者っぽい装備を見ると、ちょっと背伸びしてこっちに来たプレイヤーか。

 そんな人族の男をじっと観察し、ダメージを受けたのを見計らってダッシュする。


 アイテムボックスから作りたての『ライフポーション:LV1』を一本取り出し、次に技能ページから【薬品投球】をタップする。

 技能スキル『ポーション投げ』をタップして投げのモーションに入った。

 っく。射程距離5メートルかよっ。

 戦闘中の一人と一匹に近づき、ポーション瓶を男に向って投げつけた。


 ッパリン。という、なんとも痛そうな音が聞こえる。

 おいおい、今ダメージエフェクト出なかったか?

 男に1ダメージ与えてたんじゃねーか?


「ってぇ。何するんだよ!」


 ほら見ろ! やっぱダメージ与えたんじゃねーか。

 仕様が間違ってるんじゃねーのか、おい。


「迷惑行為で通報してやるからなっ」


 やべぇ。逃げろっ。


 受付嬢の手を掴み、慌ててその場から逃走する。

 どうなってんだ? 回復はしねーで1ダメ与えるだけなのかよ?


「回復してねーぞ?」


 走りながら助けを求めるような声で受付嬢に問う。


『いいえ。回復しております。ただ、瓶が当たった事による与ダメージが表示されてしまい、回復数値は表示されないようですね』

「じゃー、ちゃんとポーションによる回復効果はあったのか?」

『はい。250回復させ、1ダメージを与えております』


 差し引き249の回復に成功したのか。

 なのに怒られるって、どういう事だよ。


『恐らくなのですが、プレイヤー全員に『石投げ』というスキルが備わっております。モンスターにぶつけておびき寄せる為のスキルなのですが、それをプレイヤーに対して使われた――と思われたのではないでしょうか?』

「けどっ。対人システムは実装されてねーんだろ?」

『はい。実装予定・・・・ではありますが……。しかし、何かしら勘違いされたというのは、確かだと思われます』


 回復エフェクトは出ず、ダメージエフェクトのみ見える。

 戦闘で手一杯な奴だと、自分のHPバーが回復するのも見てない――か。

 そういう奴こそHP管理はしっかりしてねーといけねーんだけどな。

 

 ある程度離れ、走るのを止めて呆然と立ち尽くす。

 ポーション投げて回復させ、道行く人々から感謝される存在。

 そんな夢を見ていたってのに……それがどう間違って迷惑プレイヤー認定に変わったのか。


 ……素直にレベル上げするか。

 格上モンスターを探して東に進んで行くと、とうとう次の町が見える場所まで来てしまった。


「町の名前はカジャールっていうのか。北にまた森があるな。そっちに行ってみよう」

『ポーションは投げられないのですか?』


 痛いところを突いてきやがる。

 回復している事をプレイヤーに理解して貰えないなら、使う意味が無いだろ。

 せめて辻支援みたいに、お礼を言われる前に逃げるとか、そんなカッコ良い事をしたかった。

 射程5メートルじゃ無理だけどな。

 そう説明すると、眉を顰めた受付嬢がこちらを見つめてくる。


『技能レベルを上げれば射程は伸びるのでは?』

「かもしれない。けど、技能スキル使えばさっきみたいに、ノーマナープレイヤーだと勘違いされるんだぜ? レベル上げする気にもならねーよ」


 目前に大木が密集しているのが見えた。もちろん、モンスターの姿もだ。

 じっと見つめる事でモンスターの名前とレベルだけは確認する事が出来る。




------------------------------------------


【モンスター名】スモールウッド

   【レベル】12


------------------------------------------




 欲を言えばレベルがもう+1ほど高い奴を相手にしたいところだが……こいつを倒しながら奥に進んでいくか。

 体長1メートルほどの枯れ木みたいな容姿をしたモンスターで、童話に出てくるお化けの森なんかに居そうな類だ。

 

『あの、ワタクシが盾役になってもよろしいですか?』


 受付嬢の突然の進言に、思わず二度見してしまった。


「いや、その……構わないんだけど」

『では――行きます』


 モンスターにもスキル攻撃を使ってくる奴がいる。独自の特殊スキル持ちなんかもだ。

 プレイヤーと違うのは、スキルの前後に隙が生じやすい事。

 どんなモーションがスキル攻撃の開始合図なのか熟知すれば、モーション中に攻撃を入れてスキルをキャンセルすることだって出来る。

 一撃のダメージが痛い盗賊系職業としては、スキルキャンセルを出来るか出来ないかで戦局が大きく変わる事だってあるんだ。


 ゲームは遊びじゃねー。

 まさに真剣勝負なんだよ!


 受付嬢がスモールウッドと対峙し、攻撃は一切行わない。

 一方的に殴られ、そのダメージは決して軽くは無い。流石、打たれ弱い盗賊なだけはある。


「無理すんなっ。ポーション飲めよ」

『いいえ。カイト様のポーション投げをお願いします』


 は?

 まさかこいつ、その為に盾役タンクを申し出たのか?

 瓶を投げなきゃ技能レベルは上がらない。その為なのか?


『カイト様。是非ワタクシにポーションをっ』

「っち……い、行くぞっ」


 アイテムボックスから『ライフポーション:LV1 ☆』を一本取り出し、投げの構えに入る。

 技能スキルを叫んでも投げられるんだろうか?


「ポーション投げ!」


 ポーションは弧を描き、見事受付嬢の頭頂部にダイレクトヒットした。

 ッパリンという乾いた音と共に、半透明な紅色の液体が彼女を濡らす。


『ありがとうございます。CTクールタイムなどはどうでしょうか?』


 え、CT?

 言われるまで気づかなかったな。

 えーっと……技能ページでスキルアイコンを確認っと。


「CTは5秒……これ、飲むよかCT短いじゃねーか」


 経口の場合、CTは10秒だ。

 大ダメージ食らった時には、本人に一本飲んでもらって、俺がポーションを投げる。飲んだ分のCTが明ける頃に、もう一本ポーションを投げられるから、即死さえしなきゃ耐えられるんじゃねーか?

 まぁレベルが上がればモンスターの攻撃力も高くなるし、そうなりゃ流石にポーションじゃ回復が間に合わなくはなるだろうが。

 それでも今は十分、回復できてると思う。


「良いじゃないか、これ」

『はい。CTを考慮すると、有用な技能かと思われます。無謀な戦闘でなければ、少人数パーティーでしたら、回復職無しでも行けるレベルです』


 まさにその通りだ。


 っとここでスモールウッドが体を捻ったっ。

 そして反動をつけて一気に枝を振り回す。

 まるで高速ビンタのように、受付嬢の体が小刻みに震えた。

 高速ビンタを食らってダメージを受けた受付嬢に、慌ててポーションを1本投げつける。

 うん。ビジュアル的にはやっぱ、攻撃してるように見えるよな。

 実際、1ダメージ与えてるんだし。


『ありがとうございます、カイト様』


 なのに感謝されると、ちょっとこそばゆい気がした。

 顔が思いっきり緩むのを自覚しながら、アイテムボックスから追加のポーションを取り出す。

『ポーション投げ』の準備はいつでも出来てるぞっ。


 っと言っても所詮雑魚モンスター。

 受付嬢一人で倒しきってしまった。

 近くに別のスモールウッドが居たので『石投げ』で呼び寄せ、戦闘開始。

 やはり受付嬢が盾役タンカーになって、俺は始終ポーションを投げ続けた。

 いや、なんか……ダメージ食らいまくってるし?

 なんで回避してねーんだ。いや、俺もあんまり回避できてねーけど。


 あ……。

 俺のステータスをコピーしてるからなのか!?

『辻支援』

支援職、回復職が戦闘中のほかプレイヤーに対し

こっそりヒールしたり支援スキルを使う行為のこと。

中には「お礼を言われるまでに逃げる」とモットーとし、お礼を言われたら負けだと思っている

プレイヤーもいるとかいないとか。


尚、ヘイト概念のあるMMOにおいては、辻支援によって、相手が交戦中のモンスターを

奪ってしまう場合もあるので注意が必要。


ジャンル別日間4位です!

ブクマ大変ありがとうございます。

ネトゲ好きの廃プレイされていた方は是非、廃狩りとかこうだ! みたいなご意見頂きたいです。

基本ソロヒーラーだったので廃狩りとかなにそれ美味しいの? なプレイヤーでしたので^^;

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