失敗作
ということで俺は今、ユリアス城門にいる。
手持ち無沙汰な間を埋めるために、愛剣の手入れをすることにして、早速刃を磨き始めた。
エンシェントの血で汚れた剣身が輝きを取り戻していく。
ユリアス王国兵団でも倒せないエンシェントをたった一撃で屠った愛剣。
名を"闇刃"。
名立たる聖剣、時には魔剣をも作り出す謎の刀工、リズベル・アイギスの唯一の失敗作。
ただの鉄剣としてできてしまった剣。
「でもまだ完成じゃない。な、相棒」
リズベルの作品だ。失敗作といえ伸びしろがあるはず。
クレイはそう信じている。だからこれを愛剣と決めたのだ。
「無骨な剣ですね。もっと立派な聖剣を使えばよろしいのに」
「お、来たか」
振り返ると、背後に巫女服のようなものを着た少女が立っていた。
歳は16、7歳。身長は160程度。
ちなみに俺は179だ。
とても綺麗な容姿をしていて、服も高級な皇族衣装だろう。
「申し遅れました。シャーンと申します。今回はよろしく」
「あ、あぁ…てかそれ、変装って言えんのか?」
「これは継承の儀を行う時の正装です」
「つまり変装ではないと」
なんか色々適当だなあのオッさん。
「その剣よりも、貴方程の腕があれば相当なレベルの聖剣が使いこなせるでしょうに」
そう、聖剣だって使うことはできる。だが、
「俺はこいつを信じているんだ。どんな聖剣よりもな」
「不思議な人ですね」
シャーンはまだ不可解とばかりに首を傾げている。
「じゃあ行くか」
「あ、はい」
城門へ向かうと、周囲の目線が気になった。
「あれって…」
「王女様…」
「…隣の奴は…?」
シャーンもそれに気付いたらしく、さっきからキョロキョロしている。
そりゃそうだ。今シャーンはすごく目立つ。
特に服装が。普通じゃない。
…クーデターがありそうだから、俺以外には頼まない…って言ってたのに。
「隠す気すらねぇよな、あのオッさんは」
あ、あと、クーデターの話はシャーンにも伝えていないらしい。
シャーンは「国王と違って」しっかりしているから、心配する、とのことである。
そのシャーンが口を開いた。
「…なぜみなさんは私を見ているのでしょう?」
…あ、天然だった。しかたない。
今自分の置かれている状況を教えてやるか。
「あのな、シャーン。今お前、変装してないだろ?」
「はい。これは儀式の…」
「ああいい。それはさっき聞いた。…んで、王女だってのがみんなにまるわかりだろ?その王女が謎の男と歩いてるんだ。みんな不思議がるだろ」
「そうですね。貴方は怪しいですし」
「…喧嘩売ってる?」
そろそろ入試が近いので、しばらく更新途絶えます
23日くらいにはまた上げます