夢
「俺は推薦をもらって、○○大学に行くぜ。大学出てしっかりと就職して、安定の給料をもらいって暮らすことが夢さ」
この日僕は、いつも一緒に遊んでいたA君に『夢』を聞いた。僕たちはこの春から高校三年生になり、その後のこともしっかりと決めていないといけない時期になっていた。
「ところでお前はどうするよ、こんなバカ高に来て勉強も部活もしっかりとやって来なかった俺たちに明るい未来なんてそうそうないぜ?」
A君は苦笑しながら言った。だが、言っていることはあながち間違えではない。僕たちは行きたい高校に行けず、滑り止めで受けたこの高校に今いる。レベルで言ったら軽く10の差はあるだろう。もちろんここの高校では成績は常にトップクラスでいた。しかし、普通の高校と頭の良さを比べると残念すぎることになる。
「一応やりたいことはあるんだけど……」
僕はやりたいことに自信が持てない。いつだってそうだった。三年間続けるつもりで入った部活は二年になる時に練習が辛過ぎて辞めてしまったし、だからと言って社会人のチームに入ったものの、平日の夜や休日に練習があったので時間が経つにつれてどんどん行かなくなった。
「なんだよ、やりたいことって」
しっかりと言わなかったのが悪いのか、聞き返して来た。
「えっと、その、笑わないでよ?」
僕は今から言うことを馬鹿にされそうと思いつつ言った。
「そんなことはしねーよ。ほら、早く言えって」
急かすようにA君が言った。
「うん、ぼ、僕ね、小説家になりたいんだ」
自信なさげに言った。A君はしっかりと未来設計しているのに対し、僕はあまりにも漠然としている。
「お前、正気か?」
「うん」
思った通り否定されそうだ。
「俺は別に無理だとかは言わねー。だが、お前は本なんて全然読まねーだろ?」
「うん」
うつむきながら僕は答えた。
「それに何より漢字が全然できないじゃないか」
そう、僕は勉強もできないが、その中でも漢字は特に苦手だ。英語よりかはできるが……。
「それは……、わかってるよ」
こんなことを言われることはわかっていた。中学から同じ学校に通っている仲だ。自分の得意不得意はお互いにわかりあっている。
「でも、僕はやるよ!自分で決めたんだから」
力強く、そしてA君の目をしっかりと見て言った。
「そうか、やるんだな。お前はやるって言ったら必ずやり遂げる奴だ。俺はそれを知ってる。だから、俺は何も言わないよ」
A君はふっと笑った様に見えた。
「ありがとう、お互い『夢』に向かって頑張ろうね」
「当たり前だぜ!」
僕は拳をA君の前に出し、A君は僕の拳にコツっと当てて言った。
それから僕は毎日の様に漢字の勉強をしていた。漢字検定を一つも持っていなかったが、準一級まで取ることができた。それは家での勉強もそうだが、通学の電車内やトイレに入っている時も勉強し続けたからだと思う。さらに、小説を書くにはパソコンで打たなくてはいけないと知った僕は、漢字検定の勉強の休み時間などを使って練習し、今では手元を見ずに打てるまでになった。それもこれも自分の意思の強さと周りの人の支えがあってこそだ。こんなバカ高に通っていた僕でも強い意思と努力をすれば、明るい未来を見ることができるのだ。今の自分から脱出するには自分を見つめ直す時間を取り、しっかりと見つめ直してから行動をすればどんなこともできるとこの時僕は知ったのだった。
「『夢』は強い意思と努力で近づくことができる。例えその『夢』が叶わなくても、そこまでの過程で新しい光が必ず見えてくるはずだ」
みなさんは『夢』をしっかりと持っていますか?軽く書いたので軽く読んでいただけたら幸いです。コメントも待っています(^o^)/