守護士vs騎士候補生
目の前にさえぎる機械人形を下段から上に斜め切りして、思いっきり力強く蹴り飛ばし、道を作っていく。
我ながら足癖悪いなレイストは次々に襲いかかる機械人形を半透明の青い片手剣で切り倒しながら目標地点に指定されている所まで走る。
聖霊武装騎士。
聖霊の力によって具現化した武器、霊器を自由に操ることができる騎士にだけ与えられる称号。
霊器は土台となる聖霊の力を武器の形に保ち続きながら意識を戦闘に向けることができる騎士にしか出来ない技術なので並大抵の騎士は霊器を作り出すことは出来るが戦闘で使用することはない。
今現在、霊器を操ることができること騎士は国で確認されているだけで200人しかいないのだ。その200人の中でも霊器を応用した2技種以上の聖霊技種を混ぜ創り出す武器、無限連武~アクトール~を使えるのは2人しかいない。
そう、レイストから数百メートル先にある目標地点に居る青いコートを羽織った守護士、イーヴァギアス・フェノリング・エンゲルがその中の1人だ。「なんで守護士が候補生の試験に参加してるんだ?」
さっきからイーヴァギアスに警戒して目標地点に近づかないように機械人形と戦っている。
あの人と戦いたくないな、嫌な予感するし。
レイストがイーヴァギアスに近づかないようにしている間に1人の候補生が守護士に襲いかかった
さすがエリートクラスと言える格闘技でイーヴァギアスに攻撃するが、イーヴァギアスはアクトールを使わずに攻撃してきた候補生を蹴り飛ばして倒した。よく見てみるとイーヴァギアスの周りには候補生達が倒れている。
「…えっと試験に合格する為には目標地点に行くことだから、イーヴァギアスさんを倒さないことには目標地点に行けない。…行くしかないじゃん。」
深呼吸をしてから、剣を逆手に持ち直し風の聖霊との共鳴を始める。
そして、地を蹴り、一瞬でイーヴァギアスの後ろにまわりこみ剣をふるが、イーヴァギアスは余裕綽々によけてレイストの黒いシャツの衿をつかみ、投げた。
「っ!!」
とっさに受け身をとったスキに蹴りをくりだされ、レイストは風の聖霊との共鳴率を上げ、イーヴァギアスの攻撃から逃れる。
速度なら勝てるけど技術的には五分五分かな。あー、それにしてもムカつく。絶対アクトールを使わないつもりだぞ。
挑発のオーラを醸し出しているイーヴァギアスにムカッとイラついてしまう。よし、何が何でも、アクトールを出してやる。
いつもなら冷静に戦うのに今はなぜか冷静になれなくなっているレイストはいつでも攻撃出来るように剣を中段にかまえてから何本ものの針をイメージする。
すると、レイストの周りに何本ものの風の針が現れ、イーヴァギアスにめがけて飛んでいく。
全共通技、『千本針』
聖霊の力を針の形状に束ね、敵に飛ばす遠距離系の基礎中の基礎の技だ。
動きを読まれやすくかわされやすい為、大抵の騎士はこの技を使いたがらない。もちろん、イーヴァギアスは完全に千本針をよけきり、地面に足をつけた。
その瞬間、イーヴァギアスが足をつけた地面に亀裂が走る。その亀裂に両足ともはまってしまい、動けなくなる。
「『土蜘蛛』かっ」
土の聖霊技『土蜘蛛』
術者を中心に蜘蛛の巣のような形状に亀裂を走らせ、敵を攻撃する技だ。
この術を行った場所から離れることが出来なく、敵が術者の視界に入っていないと当たる確率は零に近いと言う条件があってなんとも扱いにくいが、レイストはこの土蜘蛛をはる為に読まれやすいという弱点がある千本針を放って条件に合う位置に移動して土蜘蛛を放ったのだ。
通常の騎士は連続で聖霊技を使うことが出来ないという知識を持っている者は油断してよけることに集中する。その油断を利用して千本針を使った。
罠にはまったイーヴァギアスにレイストはトドメの千本針を放つ。
イーヴァギアスはニヤリと笑い、ゆっくりと口を開く。
「来い、『不死鳥』」
イーヴァギアスが叫んだのと当時に千本針が消え、イーヴァギアスの両手には赤い双銃がにぎられていた。アクトールの印である目の紋様を見て、レイストは満足に笑い、土蜘蛛を消し、剣をふる。
すると、剣から三ヶ月型の風の刃が出てイーヴァギアスに襲いかかる。
風の聖霊技『風神牙』にイーヴァギアスは双銃を向けて撃つ。聖霊の力を秘めた弾丸が風神牙に当たり、爆発がおきて周りが見えなくなってしまう。
レイストはとりあえず、近くにあった木の影に隠れてイーヴァギアスに対しての対策を考えた。
確か、イーヴァギアスは風、火、水、木の使い手だったはず。さっきの爆発は聖霊技を消す効果がある火と風の混合技、『爆風』だ。っていうことは火と風のアクトールか。僕の聖霊技種は風と土。なんとも対策しにくい組み合わせだな。
…殺気っ!!
頭上から殺気を感じてレイストは聖霊技を使った。
土の聖霊技『泥壁』
レイストの前に土の壁が現れたのと当時に銃弾の雨が降ってきた。すぐに泥壁に亀裂が走り、レイストは反射的に後ろに跳躍してしまうが、その行動はミスだった。レイストが跳躍したさきにはイーヴァギアスがレイストに銃口を向けていたのだ。
零地点射撃…
やばい、気絶どころか最悪死の可能性ありだ。
そう思ったところでレイストの思考が停止してしまう。レイストに大きなダメージを与えるであろう銃弾が銃口からはなたれ、思考停止したレイストの目にはゆっくりと動いているように見えた。銃弾がレイストの肩に当たろうとした瞬間ー
《主ノ命ノ危険ヲ感知。第4級警報ニツキ〈盾〉ノ封印ヲ1パーセント一時解除スル》
レイストの頭の中で男ぽっい低い声が響いた瞬間、レイストの体から紫色の光が出て弾を包みこみ消えてしまった。
《危険対象物ヲ破壊。〈盾〉ノ完全封印完了ヲ確認。》
頭の中に響きわたる声を聞きながら、レイストは意識を失った。