始まりの朝
こんにちは!
奏磨十伽です。
初めて書いた小説なので、いろいろと不安なところがありますが、楽しんで読んでくださると嬉しいです。ちょっと性格が個性的なキャラクターが大暴れする(?)主人公レイストと4大貴族次期当主ギルバートの物語の始まりです!
ランゴバルト王国の第一級住宅地の中央にある立派な青い洋館は王国の4大貴族の一族、ファイルト家の別荘だ。
この別荘の主であるギルバート・ツヴァイ・ファイルトは別荘のテラスで優雅に日課であるモーニングティを嗜んでいた。ファイルト家次期当主として小さい頃から周りに注目されている彼は4大貴族としての責任や周りからの期待、つらい現実等に押しつぶされそうになるたびにこの別荘へと足を運ぶのだ。
今回も同じ理由でここに来ており、今回は氷のように美しく繊細な容姿であることから親戚の一部に氷の貴人と呼ばれてるせいで、ギルバートは冷酷な性格の持ち主だと間違った認識を持ってしまっている多くの貴族が彼を恐れてしまい、親しい友人が作れなく幼なじみの3人以外いないという現実から目を背けたかったというなんとも現実逃避的な理由でここに来ていた。
それはさておき、ギルバートはテラスから薔薇が咲き誇る庭園を見ながら今日の予定を組み立てていると、背後に人の気配を感じ、腰のベルトにつけている剣帯からいつでも護身用の銃を出せるように身構え、冷静に頭を回す
…使用人ではないな。彼らは急用の時以外は基本的にテラスに来ることはない
優しく包み込むような感じの気配だから、俺の知らない奴ではないだろうな。
…そういえば、執事のクシロテスがアイツが今日来るって言ってたっけ?
「兄上、お久しぶりです。」
考え込んでいたギルバートに背後の気配の持ち主が話しかけてきた。
ギルバートはその声を聞いて誰なのかすぐにわかった。
「ああ、久しぶりだな。エド、こっちに来い。」
後ろに振り返らない兄に苦笑しながら、ファイルト家次男、エドリックは兄の隣にある椅子に座る。「父上から手紙を預かってきました。」「……。」
手紙の内容が小さい頃から言われている件であることが分かっているギルバートは顔をしかめながら、手紙を受けとる。「確かに受けとった。…敬語やめろ、気持ち悪い。」
その言葉にエドリックはニヤリと笑い、きっちりとしめたネクタイを緩め、ブルーのストライプシャツの第一ボタンをはずし、金髪を後ろに束ねている紐をとる。先ほどまで漂っていた上級階級独有の雰囲気は消え、やんちゃ坊主のような雰囲気に変わったエドリックはギルバートが手紙を読まずに紅茶を置いたテーブルに置くのを見て、思わずやっぱり読まないかと呟いてしまう。
ギルバートが父からの手紙を読まないで捨てていることを知っているが今回の手紙は呼んでくれないと困った事になる為、エドリックは父から言われた切り札を使うことにした。
「その手紙、父さんじゃない、モニカ王女様の御手紙だよ。来月の王位継承式の件についてらしい!」モニカ王女という名前を聞いた瞬間、ギルバートの顔が青ざめる。
「今、モニカ王女様って言ったか?あのっ?!」
「うん、そうだよ。…ギル兄、手紙を燃やそうとか思ってないよね?」
「思った。あの方の今までやってきたことを考えると、この手紙も危険物にしか思えない」
エドは知らないんだよな。あのバカでアホで人騒がせな…いや少々おてんばすぎるモニカ様が数多く出したあの迷惑極まりない悪戯をすることを。俺はあの方と関わりあいを出来るだけ少なくしておきたいから、必要最低限にしか城に行かないけど、カノンによると日々迷惑な悪戯をしているらしい。
「お~い、ギル兄。とりあえず読んでくれない?」
「……。」
手紙を開けようとしないギルバートにエドリックは呆れながら、切り札を容赦なくだす。「ちなみに、継承式の出席の返事の紙はその手紙の中。リーネ女王陛下が今回もギルバートが速く返事をくれるかしらって期待してるからね」
「うっ」
モニカ王女と彼女の両親である国王と女王にいい子と認識されているギルバートは彼らのお気に入りである。
そのため、国王が4人の次期当主に手紙を出した時、最初にギルバートが返事を出すことが次期当主達の暗黙のルールになっている。
つまり、ギルバートがモニカ王女の手紙を開けて、手紙の返事を出さないことは他の次期当主達も出さないことに繋がるのだ。
他の次期当主に迷惑をかける上に王のお気に入りではなくなってしまう。ギルバートはおそるおそるクシロテスが静かにテーブルに置いた赤い宝石がついたペーパーナイフをとり、すっと手紙の封を切り中に入っていた純白の2枚の紙と薄紫の紙を出し、手紙を読み始めた。エドリックがクシロテスに渡された紅茶を飲みきるまでじっくりと顔をしかめながら読んだ。