~トモダチ~
何も無い殺風景な部屋に一人、男が立っている。
眼鏡をかけた少し背の高い賢そうな男。
ファイルを片手に部屋の中心で立ち止まった。
「皆さん、【Xファイル】というのをご存じですか?科学では証明できない生物や現象。それを収集したものが、【Xファイル】です。それでは第1ページ目をご覧下さい。」
「友達。それは人によって様々です。慰めたり、話したり、最悪喧嘩友達なんかもいるかもしれませんね。今回の主人公の友達は一体何なんでしょうか?彼の友達は何もしゃべらないし何もしない。忘れられた過去の友達。だからといって彼は、友達を・・・。そんなことをしたから彼は大変な事になってしまいます。おっと、これ以上は」男は苦笑いをする。
「それでは、1ページ目を開いて、自分の目で、お確かめください」
男はニヤッと笑ってファイルを閉じた。。。。
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【トモダチ】
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あんな事、あんな事しなければよかった・・・・・あんな事。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
~1日前~
僕は広樹。小学5年生。明日は学校で研究の発表をしなければいけない。だから僕の家には同じ班の友達4人が来ている。正直言って、なぜ僕の家なのだろうか・・・。まぁ来てしまったものはしょうがない。
「広樹君。まだ画用紙あるかな?あと1枚でできるんだけど。」
「あ、あぁあるよ。ちょっと待って」
そう言って広樹は自分の押し入れの中を探る。学校でもらって来た画用紙が1枚足りなかったのだ。
(あれ?この辺にあったはずなんだけどな・・・)
広樹は少し下を見た。古くなった箱がある。
(なんだろう。)
広樹は箱を開いて「あ!」っと目を大きく開いた。
「ヒロシ君だ!」
思わず声が漏れてしまった。ヒロシ君は人ではない。転校して友達ができなかった僕は、自分で粘土の人形を作り、それを【ヒロシ君】と名付けた。悩みを聞いてくれるも、一緒に遊ぶも、肌身離さずもっていったものだ。それはそれは大事にしたものだ。しかし、友達が出来る内に、ヒロシ君は僕の記憶から薄れていった。懐かしい。広樹は画用紙のことなんて忘れて押し入れから出した。
「おい広樹。なんだそれ?」
大輝だ。少し太ってガキ大将みたいな奴だ。まぁなかなか頼りがいがある。
「あぁ、僕の友達が出来なかったときの、たった一人の友達なんだ!」
「へぇそうなのか。」
大輝はヒロシ君をひょいと僕の手から取って、馬鹿にしたように笑った。
「ははは。腕が伸びる~」
大輝はヒロシ君の腕を伸ばした。そりゃ粘土だから伸びるだろう。
「おい!やめろよ~。返せ!」
「そうよ大輝君。それは広樹君のたった一人のト・モ・ダ・チなんだから。」
陽子と愛菜が僕をからかう。わざわざ「トモダチ」の部分を強調してニヤニヤ笑って僕を見る
「ち、違うよ!こんな物!」
(僕にはもう友達がいるんだ。もうヒロシ君なんて。こんな物!)
広樹はヒロシ君を片手に持って手を天井に向かって振り上げる。
「こんなもの。もう友達じゃ無い!」
広樹は思いっきりヒロシ君を地面に叩きつけた。グチャッッッ!!鈍い音とともに一瞬時間が止まったように思えた。
形がグチャグチャだ。もう原型をとどめてない。かすかに顔がわかるぐらいだ。
「あ~ぁ。わざわざそんなことしなくてもいいのに~」
4人は声をそろえる。
「いや、いいんだ。もう。」
床には、原型をとどめてないヒロシ君がくっついている。
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やっと終わった。もう6時だ。
「あ~やっと終わった~。なかなかのできばえだな」
大輝が自信ありげにいう。確かになかなか良い出来栄えだと自分でも思う。
「じゃあな広樹~。」
「じゃあね広樹君。」
「じゃあね」
「じゃあな広樹。また明日~」
4人は帰っていった。その一人。大輝の背中の服の端には、とれたヒロシ君の腕ががっちりと掴んでいたというのは、誰も気づかなかった・・・。
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次の日
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「はい。5班の発表でした。礼!」
「ありがとうございました!」
拍手を受けて、やっと緊張が和らいだ。終わった・・・
帰りの会の後。放課後だ。
同じ班の吉木とトイレで話をしていた。やはり発表の話だ。
「今日大輝来てなかったな。昨日はあんなに元気だったのに、どうしたんだ?」
「だよな。あいつ、今まで学校休んだこと無いのに」
「緊張してズル休みでもしたんじゃないか?」
「ハハハハハハ」
二人でそんな話をしていると、トイレの個室から音がした。何かが倒れる音のようだ。
「え、おい。誰かいるのか?」
キィィと、不気味な音を立ててゆっくりドアが開く。出てきたのは大輝の頭だ。
「え、大輝。お前来てたのか?なんでトイレでいるんだよ!」
無表情だ。それに酷く色が悪い。少し沈黙が続いた。続いたといってもほんの5秒ぐらいだ。すると、大輝の首が恐ろしく伸びて吉木に襲いかかる。まるで粘土のようだ。
「ヒ、ヒィィィィィ、広樹!助けてくれ!」
泣きながら吉木は助けを求める。僕は吉木の腕を掴み引っ張った。大輝じゃない・・・大輝の頭の形をした粘土が吉木の足に絡みつく。広樹は思いっきり引っ張るが、吉木の足から粘土が離れる事は無い。
そのとたん。吉木の足が粘土になった。グニョゥと伸びて足が粘土の色になっていた。
「ひ、広樹!助けてくれ!」
すさまじい勢いで吉木の体が粘土になっていく。ほんの数十秒で吉木全体が粘土になってしまった。
広樹は手を離す。大輝と吉木が粘土になってしまったのだ。2つは絡み合いながらグニョグニョとしている。そのとたん、粘土が伸びてきて、広樹の顔をかする。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ」
広樹は大慌てで学校から出た。運動場の水道で顔を洗う。
「こ、これは夢だ。こんなことありえない・・・。人間が粘土になるなんて・・・。は、はは」
広樹は少しパニックを起こしていた。何が起こっているのか分からない。広樹は顔を洗おうと水を出した。冷たい水で顔を洗う。顔を拭こうとしたそのとたん、蛇口から粘土が出てきた。
「う、うわぁぁぁ。なんだこれ!」
粘土は全蛇口から出てきて1つの塊になる。
「こ、これは」
広樹は言葉が出なかった。だって、これは・・・
「ヒ、ヒロシ君!」
そう。大きな粘土の塊はどこをどうみてもヒロシ君だ。自分が作ったヒロシ君。自分が壊したヒロシ君。
ヒロシ君は、大きな手を広樹の腹に強く当てる。広樹の体も粘土に変わっていく。
「やめろ。ヒロシ君、僕ら友達だろ。なんでこんな・・・ことを。」
肺も粘土になっていく。息苦しい。ヒロシ君は少し止まって。
「ト・・・モ・・ダチ?」
「そ、そう。友達だろ?」
そう言ったとたん。ヒロシ君の顔が鋭くなった。恨みに満ちたような顔だ。
「キミハソノトモダチニ・・・」
ヒロシ君は粘土になりかけた広樹を空に向かって振り上げた。
「コンナコトヲシタダロォォォォォォ!」
広樹の体はものすごい勢いで地面に叩きつけられた。
次の日、運動場は賑わっていた。生徒、先生の目に映っているのは山積みになった粘土だった。その積み上げられた粘土の端に、広樹の原型のとどめていない顔があることは、誰も気づかなかった・・・
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トモダチ終了
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また不思議な空間に男が立っている。
「いや~。恐ろしいですね。過去の友達に殺されてしまうなんて。友達と言えども所詮他人ですからね~。え?そんな事ないって?どうなんでしょうか。」
「古い物には命が宿ると言います。ここに物置にほこりをかぶっていた、ぬいぐるみがあります。これも命を宿しているのですかね~。」
彼はぬいぐるみを地面にそっと置いた。
「あなたの子供の時の大切なぬいぐるみ。今はどこにありますか?もし記憶にない。もしくは無くなったのでしたら。それはどこかへ歩いて行ったのかも・・・。」
男はニヤッと笑う。不気味な顔だ・・・。
「それでは皆様。また会いましょう。次はどんなファイルなのでしょうか。楽しみです。」
彼は地面に手を伸ばした。
「あれ?ここに置いてあったあったぬいぐるみ知りませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一人でどこかに行ってしまったのかもしれませんね。」
男が暗闇に向かって歩く。彼の姿が見えなくなった時、部屋の隅の壁の穴に、毛玉が1つ、転がっていた・・・・・・・・。
ミステリー系を書きたいと思い書いてみた作品です。今は少しばかり忙しいので次回作の投稿はすこ~し遅れるかもしれません。皆さん応援よろしくお願いします。