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『異世界人間失格 ~スキル【批評】持ちの独白~』  作者: 猫寿司
第9章:あるいは、私という人間の『異世界の責務』

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第43部:ゲオルグ大決戦

I. 侵食する愛(異常な予兆)


衛兵長ゲオルグは、スズたちの前に立ちはだかった時から、既に様子が異常だった。

全身から脂汗を流し、虚ろな瞳でブツブツと何かを呟いている。

その左手の薬指には、闇市で手に入れた禁忌のアーティファクト**『洗脳の指輪マインド・コントロール』**が嵌められており、指の肉に食い込むほど脈打っていた。


……ああ、スズ。君は、どうして分かってくれないんだ」

「私の心が邪魔をするのだ。道徳が、理性が、君を犯したいという純粋な愛を邪魔するのだ」


時折、ゲオルグは痙攣したように首を傾げ、焦点の合わない瞳でスズを見つめ、壊れたレコードのように呟く。

「……セックス……スズ、セックス……」

その声には羞恥も理性もなく、ただ純粋な生殖への渇望だけが粘液のように絡みついていた。

オルグの指輪はすでに発動している


優作たちが言葉を交わす余地など、最初から無かったのだ。



スズと対峙するゲオルグ。そこへ、ペコが割って入る。


「……いぬ族の本当の力、まだスズには見せたくなかったですわ」

「本来の姿……本当はあまり見せたくなかったけど、スズの為なら平気ですの!」


ペコは両手両足に力を込める。

みなぎる力感。隆起する筋肉により、衣服のボタンが弾け飛び、袖が破ける。

露わになった胸は、女性の柔らかいそれではなく、鋼鉄のような筋肉の鎧であった。

身体は二回りほど巨大化し、全身の毛が逆立つ。これこそが、かつて「いぬ国」の覇者となった野獣の姿だった。


「シャァアッ!」

ペコがゲオルグに飛びかかる。

一撃目、右ストレート。

ゲオルグの首がグニャリと曲がり、顔面が歪む。大きくのけぞる巨体。

二撃目、膝蹴り。

ボディに深々と突き刺さり、ゲオルグの体は「く」の字に折れ曲がる。

そのまま地面に倒れたゲオルグの顔面を、ペコは容赦なく蹴り上げた。


ドォォン!

ゲオルグの体は砲弾のように吹き飛び、瓦礫の山へと叩き込まれた。


「私は徒手空拳が本来の力。この『人外の力』で、いぬ国の覇者になりましたの」

ペコが胸を張る。

スズは呆れながらも、頼もしげに言った。

「……なら、最初っから言え」


III. 無限再生地獄(消耗戦)


瓦礫の山から、ゲオルグがゆらりと起き上がる。

首はへし折れて曲がったままだ。血がドボドボと地面に落ちている。

直視できないほどズタボロの状態だが、指輪が一段と怪しい光を放ち始めた。


グググ、バキボキ……

強制再生と強化が始まる。折れた首が強引に元に戻り、筋肉がさらに肥大化する。


「手を休めるな!」

スズが叫び、追い打ちをかける。

その後、二人はゲオルグへの攻撃を緩めなかった。

スズは関節を極めて骨を折り、ペコは剛腕で殴り、身体に深刻なダメージを負わせ続ける。


凄絶だったのは、ゲオルグの首がねじ切れた時だった。

首のない体が、落ちた自分の首を拾い上げ、傷口に押し当てて無理やりくっつけたのだ。

腕の骨折も即座に再生し、あさっての方向にくっつくし、千切れれば背中から新しい腕が生えてくる。

ゲオルグは、おぞましい限りの姿へと変貌していった。


IV. 卑怯者の決断と神託(罪の断罪)


「……埒が明かない。キリがないぞ」

10分は続く攻防。ペコもスズも疲弊し始めていた。


優作はピュティアに問う。

「このまま攻撃していたら、指輪の力が尽きるんじゃないか?」

ピュティアの答えは絶望的だった。

「計算上、休まず今の攻撃を続けても30年はかかるね。指輪の再生能力が追いつかないほどの火力で、消し去るしかないよ」


優作は覚悟を決める。

(……俺には『エクスプロージョン』しかない)

しかし、前回の暴発で都市を壊滅状態にしかけた恐怖がよぎる。

今度は絶対に失敗できない。集中して指輪を発動させなくてはならない。

それには、ルカの協力(精神安定と魔力補助)が必要だ。

まずは、チャージのための足止めだ。


「……この責任は、セントラルシティ(ヘスティア教)に取ってもらう」


優作は冷徹に指示を出した。

「ピュティア、頼む。神のヘスティアを擬態して『神託』を出してくれ」

「こいつら、セントラルシティの奴らを焚き付け、足止めをする」


ピュティアが頷き、信徒たちの脳内に直接、厳かな神の声を響かせた。


『――ありとあらゆる物を欲し、独占しせしめんとするその行い、強欲の極みなり』

『すべての食料を貪り食い、暴食の限りを尽くし』

『他者と比べては妬み、嫉妬し』

『権力に固執し、他者を蹴落とし、怒りに身を任せ、他者の罪を断罪し』

『働きもせず、怠惰の日々を過ごし』

『異性を金と力で制圧し、邪淫に溺れる』


ピュティアの声は、慈悲深くも残酷に、信徒たちの罪悪感を抉り出す。


『その様、哀れで愛おしい』

『信徒よ。罪を償いたければ、セントラルシティにいる魔に立ち向かえ』




神託は劇薬だった。

自らの日々の欺瞞を「神」に見透かされた信徒たちは、贖罪のために狂奔した。

「おお、お許しを!」「魔を滅ぼします!」

彼らは武器も持たず、自らの肉体を「贖罪の供物」として、再生するゲオルグに群がっていく。

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