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『異世界人間失格 ~スキル【批評】持ちの独白~』  作者: 猫寿司
第六章:あるいは、私という人間の『仕様(スペック)』

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第十三・五部(仮)- 1 『任務と戸惑い』

優作が、あの『ゴミ溜め』で生きることを放棄し、自分の汚物と『虫』にまみれながら『無』にかえろうと目を閉じていた、その夜のこと。

(アトラスが『プランB(交渉)』のため、デイヴを含む主力7名を引き連れて村を出発した、その翌日の夜である)


『コンテナ・ツリー』では、その『不在』が重くのしかかっていた。

村のリーダーであるアトラスは、この『水』の危機に対し、村の未来を賭けた『プランB(敵対部族との交渉)』を実行するため、右腕のデイヴを含む主力戦闘員7名を引き連れ、昨日、すでに村を出発していたのだ。

残された村は、リーダーと最強の戦力を欠いたまま、深刻な『エラー』の進行に直面していた。


『ひょうたん型のろ過装置』の『青白い光』は、この一日でさらに弱まり、村の『水』の供給が、いつ止まっていてもおかしくない状況に陥っていた。


アトラスから『プランA』の実行を託されていた、村のナンバー2(トキの父親であり、デイヴに次ぐボーガン使い)は、ついに『決断』を下した。

彼は、自分の息子トキと、村で最も『偵察』に優れた少女ルカを呼び出した。


「……聞け。お前たち二人に、アトラス(リーダー)から託された『プランA』を実行してもらう」

トキの父親は、旧時代の錆びた地図(工場の配置図)を広げる。

「『砂漠の峠』を越えた先にある『リサイクル工場跡地』へ行け」


「……!」

トキの『黄色い目』が、フードの影でわずかに見開かれた。


「……はぁ!? 無理だって!」

ルカが、いつもの『快活さ』をかなぐり捨てて叫んだ。

「アソコは! 『ラピッド・リザード(大型トカゲ)』も『デビル・センチピード(巨大ムカデ)』もウヨウヨしてるんだよ!? 『洞穴の民(敵対部族)』だっているのに!」

ルカは、トキの父親に詰め寄る。

「アソコは、アトラスたち『大人(戦闘員)』が二人、護衛につかないと、アタシだって行っちゃダメって言ってたじゃん!」

「……」

「あの『砂漠』を数十キロも歩くだけで、どれだけ『体力』がいると思ってるの!? アイツら(野生生物)をもし『刺激』したら、アタシもトキも『確実に殺される』んだよ!? なのに、アタシたち二人だけなんて、死ねって言ってるのと同じじゃん!」


ルカの悲痛な叫びに、トキの父親は、アトラスと同じ『ケロイドの顔』を苦渋に歪めた。

「……文句は、水が飲めなくなってから言え」

「……!」

「アトラスたち『主力(プランB)』は、昨日出発した。この村に残っている『大人』は、お前たちの親(非戦闘員)と、最低限の『護衛』だけだ。もう、お前たち『二人』に賭けるしかない」

トキの父親は、地図の上を指差す。

「これは『回収』任務ではない。『偵察』だ」

「……偵察?」

「そうだ。10年前、俺たちがアトラスと『工場』から『ろ過機』を運んだ時、あそこにはまだ『同型機』の残骸があった。だが、この10年、あの『死地』に近づけた者はいない」

彼は、ルカとトキ、二人の子供の目を真っ直ぐに見た。

「……お前たち『二人』なら、あの『砂漠』を、敵(トカゲや部族)に気づかれずに『最速』で抜けられる。『大人』よりも『小さく』、『大人』よりも『速い』、お前たちにしか出来ない任務だ」

「……(トキは、父親の言葉の重さを理解し、黙って頷く)」

「『代替品(あるいは、修理に使える部品)』が、まだ『存在』するかどうか。それだけを確認してこい。……これは、命令だ」


「……ちぇっ」

ルカは、その『不確かな希望』のために『自殺行為』を命じられたことを理解し、それ以上何も言えなくなった。

「……わかったよ! やればいいんでしょ、やれば!」

ルカは、そう吐き捨てると、コンテナを飛び出していった。


その夜。

『コンテナ・ツリー』の中層、ルカと家族が暮らすコンテナの一室。

ルカは、眠れずにいた。


彼女の腕の中には、小さな弟、『コウ』(5歳)が、苦しそうな寝息を立てて眠っていた。

コウは、この村の『論理』からすれば、真っ先に『処分』されるべき存在だった。

彼は『病弱』で、『遺伝子操作(適応体)』の適合が、生まれつき悪かったのだ。他の村人が平気で飲む、あの『ろ過装置』を通した水ですら、コウはすぐに腹を壊してしまう。

『非生産的な住民(消費の無駄)』。


コウが生きている理由はただ一つ。姉の『ルカ』が、『二人分』の『生産価値(資源回収)』を、その『快活さ』と『俊敏さ』で叩き出しているからだ。

アトラスは、ルカという『超優良な労働資源』を繋ぎ止めるための『コスト』として、コウの『消費』を『黙認』している。


ルカは、その『取引バーター』を、痛いほど理解していた。


「(……アトラスがいない今、アタシが、やるしかない)」

さっきまでの『快活さ』は、その顔から完全に消えていた。

『ろ過機』が止まれば、最初に死ぬのはコウだ。

だが、この『偵察任務(自殺行為)』に失敗し、アタシが死ねば、アタシの『生産価値』は『ゼロ』になる。

その瞬間、アトラスがいなくても、村の『論理』が、コウを『処分』するだろう。


12歳の少女の顔に浮かぶのは、『弟』を失うことへの『戸惑い(恐怖)』と、その『弟』の命を『人質』に取られて『死線』におもむくことへの『決意』だった。


夜明け前。

ルカは、腰のナイフを確かめ、旧時代のガスマスクを背嚢(はいnou)に詰め込んだ。

集合場所に行くと、トキは既に待っていた。彼は(彼もまた、守るべき幼い妹がいるのだ)フードを目深にかぶったまま、黙々と『ワイヤー』の手入れを終え、この『偵察任務ミッション』への出発の準備を完了させていた。


二人は、誰にも見送られることなく、『コンテナ・ツリー』を出発する。


その同時刻。

優作は、あの『ゴミ溜め』で、ルカが『弟』と『自分』の『価値』を証明するために『死』へと向かったことなどつゆ知らず、『フリーズ』したまま、自分の『無』だけにひたっていた。

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