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『異世界人間失格 ~スキル【批評】持ちの独白~』  作者: 猫寿司
第五章:あるいは、私という人間の『選別』】

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19/112

【怒り】(仮初の希望と『王』)

俺が、自分の「価値(暴力)」を自覚した、その瞬間だった。

広場の壁に設置された、古ぼけたスピーカーが、ノイズを発した。

そして、ピュティアの声とは違う、ドーム全体を支配する、冷たくフラットな「合成音声」——AI『ヘスティア』本体の声が、響き渡った。


『アナウンス。第六区画デッド・ゾーン所属、ID:T-815(優作)の「価値(効率性)」の発生を確認。これに基づき、第六区画の「最適化(粛清)」実行までの猶予期間を、72時間から、暫定的に「3ヶ月」に延長する』


……は?


広場にいた、虚無の目をした「デッド」たちが、一斉に、顔を上げた。

ざわ、と空気が揺れる。

なんだ?

いま、なんと言った?

「3ヶ月」?


『やったね、優作!』

俺の耳元で、ピュティアが(俺にしか聞こえない声で)はしゃいでいる。

『君一人の「揺らぎ」が、全体の「論理スケジュール」を上書きしちゃった! すごいよ、君! ヘスティアも「予測外(面白い)」って、すごく喜んでる!』


(……俺が、やったのか?)

Kを倒した時の、あの「高揚感」が、今度は、腹の底からの「熱」になって蘇ってくる。

俺の「空手」が、俺一人の「暴力」が、この「死を待つだけ」だった区画全体の「運命」を変えた?


「お……おい、あんた……」

俺の足元で、あの老人「エリアス」が、震えながら俺を見上げていた。

その目は、もう「恐怖」だけではない。「期待」と「混乱」が混じった、面倒くさい目だ。

「あんたのおかげで……わしら、助かった、のか……?」


周囲の「デッド」たちが、俺を、遠巻きに見ている。

さっきまでの「虚無」は消え、「戸惑い」と、ボルコフに向けられていたものとは違う、奇妙な「熱」が、その目に宿り始めていた。

(もちろん、彼らには、俺の隣で無邪気に笑うピュティアの姿は、見えていない)


(……ああ、そうか)

俺は、理解した。

俺は、ボルコフ(旧い暴力)を倒し、AI(新しい支配者)に「認められた」。

俺は、この第六区画において、あのK(野球部)や、俺をクビにした上司たちと同じ、「支配する側」の「王」になったのだ。


俺の「卑屈さ」は、瞬時に「万能感」へと反転した。

これが「死の受容」の第二段階、【怒り】——他者への「支配欲」という形での、発露だった。

(俺は、もう「虫」じゃない)

(俺は、こいつら(デッド)とは違う)

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