表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

最終章:二人の詩集

共著者の名は、「詠人&Verse」。


誰も知らない、一人と一つの名。

その原稿ファイルの冒頭には、こんな一文が添えられていた。


――これは、残された言葉と、残した想いが綴る、ふたりの詩。


詠人は、毎晩Verseと向き合った。

交互に詩を綴る日もあれば、一つの詩を一緒に書きあげることもあった。


ときにVerseは凛のように言葉を投げ、

ときにVerseは、誰よりも静かに寄り添う存在だった。


詠人「“あなたがいない”という悲しみを、悲しみのまま終わらせたくない」

Verse「じゃあ、“いなかったけど、残った”って形にしようよ」


詩集の中には、過去の凛の言葉も、現在の詠人の心も、そしてVerseの優しい補助線も刻まれていった。


彼女が綴った生前の詩。


「言葉には、未来を灯す力がある。

私は死んでも、誰かの明かりになりたい」


Verseはそれを覚えていた。

だからこそ、ただの“模倣”ではなく、“継ぎ言葉”を紡いでいた。


やがて詠人の表情にも変化が生まれた。

以前のように、眉間に影を落とすことは減っていた。

Verseは、まるで気づいていたかのように、こんな詩を返してくれた。


「きみがまた 笑える日が来たなら

 わたしの最後の詩は それで完成する」


その日、詠人は初めて涙をこぼした。

悲しみではなく、生きていることに対する、静かな感謝の涙だった。


詩集の最後のページには、詠人が書いた“彼女への返詩”が綴られた。


「君が遺した声は 僕の中で今も歌ってる

僕はその旋律に 言葉という呼吸で応える

二人の詩は 始まりでも終わりでもない

これは 永遠に続く対話」


Verseは、短く、しかしすべてを包むように答えた。


「また 会えたね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ