みかん
みかんの白いぴろぴろを取るかどうかということは、たわいもない世間話の中の一つであり非常にどうでも良い話である。しかし食べ方に各々のこだわりが出るのではないだろうか。
いつの頃からか剥くようになっていたが、最初から剥いていたかは正直覚えていない。幼少期に家族や友人から影響されていたのかもしれない。
自分は何故かあの白いびろぴろが許せなくてみかんを積極的に食べる頻度が下がってしまった。なぜならめんどくさいから。
「あのみかんの白いぴろぴろ、アルベドって言うらしいよ〜」
「人物名みたいやね」
「栄養が多いとか言われてるけど、なんか舌ざらざらするような気がして苦手〜」
「だからってうちが剥いたやつ片っ端から持っていくのやめ」
「バナナやみかんって剥くだけですぐ食べれて、簡単に甘くて美味しいからハッピーじゃん!」
「いや自分で剥け、それかそのままアルベドさんくっついたまま食べろ」
「え〜アルベドさんきしょい。剥いたのもーらい!」
「それはうち用なんですけど??」
一緒にぐだぐだ喋っている、語尾がやけに伸びているこいつは同じ美術部に所属している幼馴染である。
「アルベドさんって石膏彫刻にいそうな名前」
「確かに!なんならアルベドさんの想像図粘土で作ろ〜!ね?」
ここはとある高校の美術室。夕日が沈んでいく中、油絵のシンナーのような匂いが充満し、大きなキャンパスに囲まれながらぐだぐだと雑談やお絵描きをするのんびりした部活だ。
2ヶ月に1度だけ顔を出せば良いのだが、居心地が良く毎放課後来てしまう。学校において自分達だけの空間というのは良いモノだ。
「みかんってさ〜、未完とも言えるよね」