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1章7話

 腹筋をしながらいち、にぃ。声に出してカウントする。アダムは与えられた部屋で目覚めたとたんに筋トレを始めた。強くなる

 方法が他に思いつかなかったからだ。記憶はないはずなのに、体が覚えているのか……どういう動きをすれば鍛えられるかは何となくわかる。幸い、昨日の傷や最後、あの不思議なステンドグラスを見てから感じた耳鳴りは消えていたから問題なく動けた。

「腹筋あと100回と、腕立て100回ぐらいかな。マリア、俺たちって普段はどう過ごせばいいの?」

「警報がない限りは自由行動です。食事は朝食が8時、昼食が13時、夕食が19時、消灯時間が23時と決まっていますが」

「え。今何時」

「7時55分です」

「嘘、食いっぱぐれるじゃん!」

「食堂はこの宿舎を出て左に直進後、500メートル先です」

「しかも遠い! とりあえず食べに行くか」

 アダムは上半身裸で運動をしていたが、近くにある隊服のシャツに身を包んだ。

「そうですね、「自分探し」には体力が必要。昏睡状態から体を慣らすためにも、きちんと三食食べたほうがよいでしょう」

 昨日の会話を覚えてユーモアのあることを

言ってくれた。姿形はないが、相変わらず気が楽な話し相手だ。

「ありがとう、マリア」

「どういたしまして」

「ていうか、この部屋って相部屋なんだよな。誰も帰ってこなかったけど、なんで?」

 この部屋にはベッドが二つ置かれていて、誰かがすでに暮らしている形跡がある。

 何も荷物がない方のベッドで寝転がったが、もう一つの方はぐちゃぐちゃと脱いだ服や読みかけの本が開かれたまま置かれている。このベッドでよく寝れるものだ。いい加減な……いや、相当ワイルドな人がルームメイトらしい。

「個人情報はお伝えできません」

「やっぱり融通が利かないなぁ」

「すみません」

「いや、いいんだ。ともかく急ごう」

 食堂に入ると、鼻をおいしそうなにおいがくすぐり、アダムは思わずごくりとのどを鳴らした。そういえば昨日は討伐でろくに食事を取っていなかった。

 食堂は同じように隊服のシャツを着た隊員たちで賑わっている。もしイリヤが生きていたら、今日一緒にご飯を食べられたのかな。そんな考えがよぎり、アダムは顔を曇らせるが、立ち止まっていては邪魔になるので前に進んだ。食堂はビュッフェスタイルなのでみんなが自由に食べたいものを取っている。アダムも列に並び、肉の炒め物や野菜を取っていくが、ふと女性が全くいないことに気づいた。体力的に過酷な討伐に耐えられないんだろうか。でも、それならガイアはどうして二重神性とよばれる半神になれたのだろう。

 アダムは考えながら、前にある残り1個のクリームコロッケを目にする。見るからにほくほく、さくさくしておいしそうだ……そう思って取ろうとすると、後ろから別の誰かがトングでそれを勢いよく取った。

「えっ」

 目の前のコロッケを取られたアダムが思わず振り向くと、赤い眼をした男が立っていた。

「ああ? 文句でもあんのかよ」

 その男の隊服の胸にはナイトの駒のバッジが光っていた。

 やばい、ナイトの人は俺たちより偉いんだっけ。そう思いながらアダムは男を観察する。ところどころに黒いメッシュの入った赤くて長い髪。目つきが悪く、サイドの髪は編み込んでコーンロウにしている。耳には複数のピアス。爪には黒いネイルを施している。まず、こんなにも派手な隊員がいることに驚いた。

「俺、先に並んでました」

「は? 先に取った奴の勝ちだろ」

「でも……」

「気に食わねえならゴタゴタ言ってないで取り返したらどうだ? やれるもんならな」

「いや。コロッケがそんなに好きなのかなって思って。見た目がその……かっこいいから、ちょっと意外っていうか」

「ああ? 馬鹿にしてんのか、新入り!」

 周囲が驚いてシーンとなる。ふん、と鼻をならして彼は言う。

「別に好きじゃねえよ。これが最後の一つだったからだ」

 尚更わからない。ぽかんとしていると、彼が理由を続けた。

「ゲン担ぎだ。最後の一つをみすみす逃す奴は戦場でも生き残れねえからな」

 だからって人からとるのはいいのか? と思いながら見ていると、男の皿はアダムの持っている量とはけた違いに山盛りだと気づいて驚く。その表情を読んだように、顔をしかめて赤毛の男は言う。

「いつ死ぬかもわからねえんだ。食えるだけ食って何が悪い。まあ、オレは何してでも生き残るけどな」

 そう言って彼はアダムの順番を抜かして前に進む。周囲も怯えたように道をあけていく。

 変わった人もいるもんだ。討伐でああいう人と組まされたらたまらない。ましてや、あんな人がルームメイトだったら地獄だろう。アダムはそう思ってため息をつき、再び食事を取っていった。

 知り合いがいないので一人で座って食べながら、周りを見る。ガイアの姿はない。まだ具合が悪いのか。あとでマリアに聞かずに、医務室を探しに行こう。そう思った。そのときふわりと、鈴の音が鳴るような声が降ってきた。

「ここ、いい?」

 食事のトレイを持ったガイアだった。隣の席が空いているから、そこのことだろう。

「も、もちろん」

 ガイアの皿にはほんの少しの野菜とパンしか乗っていない。

「少なくない? ごはん」

「食べたいけど、あんまりたくさん入らないの」

 細い体を見ると納得がいった。

「そうなんだ。あのさ、昨日は助けてくれてありがとう」

「……食べたら、特訓」

「ん?」

「アキリーズに頼んだ。修練場でやろう。あの槍を持って来て」

「えっ、じゃあもしかして俺の?」

「そう。初心者は慣れるまで大変だから」

 あのアキリーズに頼んでくれるなんて。ガイアの親切さに救われる思いだった。だが、疑問が浮かぶ。

「ありがたいけど、どうして俺のためにそこまでしてくれるの?」

 ガイアはじっとアダムの目を見つめる。思わず照れくさくなったアダムは緊張を紛らわすように、そばにあった水を飲む。

「アダムは、私の王子様だから」

 ぶっとアダムは水を噴き出しそうになった。

 周囲も今の発言が聞こえたのか、ざわつき始める。だが、美しく唯一の女性であるガイアがそう言ったら、冷やかすか嫉妬しそうなものを、みんながなぜかひどく怯えたような、アダムに同情するような目を向けている。

 おそらく、人の死を予言するという彼女の性質からだろう。その証拠に、ガイアがここに座ったとき、 数人が席を立って離れてしまった。

 何にせよ「王子様」は青天の霹靂だ。おうじさま、おうじ、おーじ、おじさま……? 聞き間違いの可能性を思って、アダムは聞き返す。

「おー……おじさま? 俺ってそんなに老けて見えるのかな? 一応19歳らしいんだけど」

「おじさまじゃない、王子様。おじさまは、アキリーズみたいな人」

 アキリーズもそんな年じゃないだろうにと思いながらも、アダムは事態が飲み込めずに戸惑う。

「ともかく、食べ終わったら」

「うん、よろしくお願い、します……かな?」

 食べ終わった後、アダムはガイアについて修練場まで歩いた。

「私は用事がある。少し見たら抜けるから」

「用事? 何処か行くの?」

 ガイアはこくりと頷く。

「偵察。新たな繭を発見して、データを王様に送るの。いつ頃それが破れるか、予測する」

「独りで? 危ないよ」

「大丈夫。それが私の仕事」

 はっとアダムは気づいた。

「そうか、未来が見えるから? 繭が破れる予測は君がやってるんだ」

「そういうこと」

 一人であの予測を全部立てるなんて、常軌を逸している。

「魔脳を使った監視カメラがあるけど、カメラ映像だけでは、わからないから」

「未来が?」

「うん、こうするしかない」

 そう言って、ガイアはアダムの肩を軽く突いた。

「わっ……!?」

「ちょっとでいいから触れるの。そうしたら見える」

 ガイアはアダムを見つめたまま、しばらく黙る。きっと未来を見ているのだろう。

アダムは思わず好奇心に駆られて聞く。

「俺の未来が見えたの?」

「ううん」

「え、触ったのに?」

「服の上からだから。服の未来が見えた。これ、近いうちに破れてボロボロになる」

「ええっ……!? どうしよう、困ったな……。破れちゃったら新しいのもらえる?」

「わからない。私は服、ダメにしたことないから」

 ガイアはくすりと笑った。

「ねえ……知りたい? 君の未来」

 アダムは少し考える。知りたいような、怖くて知りたくないような気がした。自分の死を予測されるのを恐れる者たちの気持ちが少しだけわかった気がする。

 いざ、死ぬときがいつかわかってしまうと思うと、恐ろしくて知りたくないものだ。

「未来より、過去が知りたいかも。自分が何だったのか」

 アダムはそう答えた。ガイアはふっと笑う。

「大丈夫、未来の君は、自分が誰か、ちゃんとわかってるよ」

「触ってないのに、見えたの?」

「勘。ママがよく言ってた。好きな人のことは勘でわかるって」

「えっ!?」

 俺のことが好きってこと……? そう聞きそうになった途端、何か気配を感じ、アダムはとっさに棒を構える。すると勢いよくアキリーズが大剣で斬りかかる。

「うわっ!?」

 アダムは槍を防御に使って持ちこたえたが、ギリギリとアキリーズの大剣が槍に向かって食い込んでくる。あまりの力の強さだ。とてもじゃないが、押し返せない……。

「まずい、このままだと折れ……!」

「折れはせん。加減はしている。それにノーデンスの槍の硬度は非常に硬く、強い神性を持った武器だ」

 そう言いながら、アキリーズはガン!と 力を込めて大剣で凪ぎ払った。アダムは容赦なく後ろに吹き飛ばされ、後ろに倒れる。

「身体能力と反応速度は悪くない。体術の素養はあるようだな」

 アキリーズはそう言って一旦剣を鞘にしまう。

 特訓だからと言って、何も急に斬りかからなくても。そう思いながらもアダムはアキリーズの発言に心の中でうなずいた。

 そうだ、なぜか俺には体術や武術の感覚があることにはある。

 初戦ではそのおかげで難を逃れたり、機転を利かすことができて一応どうにかはなったのだろう。決して強くはないが、過去の自分はもしかして、そういった訓練を受けていたのか……? 『自分探し』にまた新たな疑問がわいてくる。

 それよりお礼だ、そう思ってアキリーズに向かってアダムは頭を下げた。

「あー……アキリーズ先輩、今日は特訓を引き受けてありがとうございます」

「お前の為ではない。その娘に頼まれた」

「で、ですよね。すみません、忙しいのに」

 ガイアは少しとがめるように、アキリーズの服を軽くつかんで言った。

「アキリーズが急にやったせいでびっくりしてる」

「これに反応できないようでは生き残れない。アザトースの支配下に置かれた魔物たちはこちらの動きの二手先を読むのだからな」

「えっ、どういうことですか」

 アキリーズは地面に刺した大剣を引き抜いて言う。

「アザトースは宇宙神。眷属である魔物たちにも自分たちの能力の一部を分け与えた。宇宙の力で人間の無意識と繋がり、脳波を感知する能力だ。人間の脳は行動する前にどう動くかを決めているから、それを読まれてしまう」

「つまり……どうしようか考えて動いたとしても、それを読まれてしまうってこと?」

「そうだ。特に上級クラスの魔物ならそうなる」

 先読みして襲ってこられる? そんなものはとてもじゃないがよけられそうにない。

「じゃあ、どうすれば……」

「一回の攻撃に込める火力と直感を磨け。それしかない」

「なるほど、わかった! やってみます!!」

 アダムは勢いよく言った。アキリーズはやや怪訝そうに眉をひそめる。

「すごい。アキリーズが無茶言ったのに、乗った」

「だって、そんな魔物が一般の人を襲ったらみんな死んじゃうだろ。だったら俺達がなんとかしなきゃ! これも「善いこと」の一つだ!」

 すると、金の槍がぴかりと光る。

「槍がまた光った。ノーデンスが……何か反応してるのか?」

 ガイアもまじまじと見て、「そうみたい」と呟く。

「ノーデンスは善神。アダムが善いことをしようって思うと適合率が上がるのかも」

「そっか、だったら尚更頑張らなきゃ! アキリーズ先輩、じゃあよろしくお願いします!」

「稽古は終わりだ」

 だが、どこか苛立ったようにアキリーズが言う。

「なっ、なんか俺、悪い事言いました?」

「もう、必要なことは告げた。あとはお前がどうにかしろ」

 アキリーズはそう言って去っていこうとした。だが、その時。

「おいおい、そんなすぐに辞めちまったら可哀想だろ? せっかくなんだからもっと可愛がってやれよ」

 どこからか声が聞こえ、次の瞬間、アキリーズの動きがぴたりと止まった。

 まるで石のように動かなくなる。

「ど、どうしたんですか? アキリーズ先輩!」

「先輩? 新入りもクソ女も、仮面野郎もくだらない青春ごっこかよ。それより、もっともっと楽しいことしようぜ」

 ザッザッ……足音が近づき、それを目で追っていくと、赤毛の男がいた。

「あっ、さっきのクリームコロッケ!」

「ああ? 変な呼び方すんな! その口今すぐ黙らせてやろうか」

 男はそう言いながら腰に付けた短刀を抜く。短刀は刃先がギザギザとした形をしているソードブレイカー。ガイアがすかさず、アダムの前に立つ。

「ヴァルトロ。私闘は禁じられている」

 男は悪びれず、心外だと言わんばかりに語る。

「『私闘』? 誤解すんなよ、これは修練場で行う『ただの稽古』だ。それにここの監視カメラはさっき俺が「たまたま」睨んで石にしちまったもんで、静止状態でなぁ~。何か「事故」があったところで、真相は藪の中だ」

 睨んで石にした?

ふと、アダムは渡された資料の中にあった神話を思い出す。無数の蛇の髪を持った女性が、勇者を石化しようとした物語……。彼女の名は確か、「マドゥーサ」だったはず。ヴァルトロと呼ばれた男を改めて見る。

「もしかして、あなたは蛇の女神マドゥーサの半神なのか!?」

「正解。神様ガチャは俺だけ大外れってワケ。石化なんざ、大して役に立たねえクソ能力だからな」

「ヴァルトロ、やめて。アダムに関わらないで。あなた、神食も進んでいるはず。無駄に能力を使うのは辞めた方がいい」

「は? 別に命なんか今更惜しくねえよ」

 そう言った途端、ヴァルトロはガイアの目を見る。きぃぃん! と音がして、彼の目が白目までも真っ赤に染まり切ったものに変幻する。

「や、やめ」

すると、ガイアは言葉も途中でぴたりと固まってしまった。

「が、ガイアに何をしたんだ!?」

 ヴァルトロは軽く鼻を鳴らして言う。

「こいつ、油断しすぎ。色ボケってやつかよ。まぁいいや。まずこいつからやってもいいが、あんのクソでかくて邪魔になる石から最初に砕くか!」

 ヴァルトロはアキリーズに向き直り、ソードブレイカーを振り下ろす。

 ガキィィィィィン!

 だがその時――轟音と共に金色の火花が散った。

アダムが槍を構え、ヴァルトロのソードブレイカーの凹凸に食い込ませたのだ。

「なんだ、新入りのくせに生意気だぞ。逃げりゃ見逃してやったのに」

「俺の名前はアダムだ! 新入りじゃあない!」

 そう言ってアダムは力を込める。ヴァルトロと目を合わせなければ、石にはされない。そう思って下を向きながら押し返そうとする。

「覚える価値がねえな、クソ雑魚いポーンはどうせすぐ死ぬ」

「何が狙いだ……俺達は共に戦う半神の仲間だろう!?」

さっきのアキリーズの大剣同様、力は強い。不思議だった。アダムより身長は少し高いとはいえ、アキリーズに比べると小柄で、武器も小さい。なのに、力に差がないなんて……。

 ふと、つばぜり合うソードブレイカーを見ると、刃が明瞭な鏡になっていると気づいた。ヴァルトロは嘲笑って言う。

「鏡が気になるか? 俺の体内に入った聖遺物レガシーは蛇の女神マドゥーサが閉じ込められた鏡の盾……。この剣もそれによって作られたものだ」

 さらに力が強く込められ、ソードブレイカーの角度が変わる。すると、ヴァルトロの顔の一部が鏡となった刃に映った。アダムは目を背けようとするが、なぜかこの鏡からは目が離せない。

「人を石化させる女神マドゥーサは、英雄に鏡の盾を向けられ、自らの目を見て石化させられた。だが、この話には続きがあってな。石化したマドゥーサを鏡の盾の中に閉じ込めた英雄は彼女の目を武器として利用し尽くして冒険した挙句、ある日好奇心に抗えず、盾に入った彼女の目を見てしまい、自滅しました、だとさ。つまり!」

 ソードブレイカーの角度が変わり、ヴァルトロの赤い目がそこに映る。きぃん……! と金属的な音がすると同時に彼の白目の部分までもが真っ赤に染まっていき、蛇のような目になる。アダムは体の自由を失った。鏡ごしに目を見て、石化してしまった。

 どうしよう、動けない……声も出ない。

「この鏡には皆、どうしようなく惹きつけられる。目を閉じようが、背けようが、石化は避けられないってわけだ!」

 ヴァルトロはガイアの方に向かっていく。

「じゃあな、ガイア。お前をぶっ殺して能力をいただくぜ、お前の未来視と大地変動!」

 まず、能力をもらうことなんてできるのか?

「『緊急事態』だ。半神を瀕死の状態に追いこんで首輪のボタンを押せば、マリアの拡張機能で異能を継承できる。ま、受肉結晶の情報をまるままコピーするから、それに紐づいた神食係数も一緒に……だが」

「でも、神様との対話があるんじゃないか?」

ヴァルトロはガイアにゆっくり近づき、剣を首輪の近くの首元に

「対話? 俺ぐらいに受肉結晶の神食が進んだ奴にはいらねえよ。神食は人の体を死と暴走に追いやるが、その一方で、人をより神に近づけるんだ」

 ヴァルトロはそう言いながら、ボタンをもう一度、押した。やめろ、やめろ、やめろーーーー! 声が出ない中、叫ぼうとするが、体が動ない。誰か、誰か。

『助けてほしいの? メルジューヌ』

 その時、見知った声がどこからか聞こえた。昨日、あの回廊で聞いた声だ。

 このままだったらガイアは瀕死の状態に追い込まれ、能力を奪われる。もし、俺があの目を見なかったら。あのソードブレイカーを弾き飛ばせていたら、こんなことにならずに済んだのに。

 ガイアは大地を割って俺を助けてくれた。なのに、何もできないまま、ガイアを死なせたくない……!

『悲しい顔、しないで。じゃあ、少しだけ……あげる。ぼくの力……』

 そのとき、ぐにゃぐにゃと世界がゆがんだ。空中に、虹色の泡がごぽごぽと浮かび上がり、泡の中から ゆっくりと、発光する銀の鍵が浮かびあがって出現した。  

 ――鍵? これは一体なんだ?

 鍵が空中に向かって光を放ち……そして……。


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