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3章7話 The Game That Cannot Be Won

「チェック・メイト……。僕の勝ちです。炎龍陛下」

 金糸のゆるやかなウェーブのかかった長い髪をした少年が白いチェス駒をどこからか這い出た触手で動かし、漆黒のキングの首を刈り取った。

「おっと、お上手なことで。全く歯が立たへんかったわ」

 炎龍は優雅に足を組みながらお手上げだというように、芝居がかった仕草をした。

 まるで少女のように美しい少年、クリフは紫の瞳を不満げに少し吊り上げ、反論する。

「あなたが本気になってくれないからです。手を抜いているのが見え見えだ」

「負けるが勝ち言うこともあるんや。勝つばかりが戦いやない」

 確かにその通りだ……。いつもこの東方の男との対局では手を抜かれていて、全く勝った気がしない。

 最初に炎龍とチェスで勝負したときは完全に打ち負かされた。それ以来、勝負を挑んでも本気で戦ってくれたことがない。

「では、どうすれば本気になってくれますか?」

「おっと? それぐらいは自分で考えるべきやと思わへんか? クリフちゃん」

「またそうやって煙に巻く」

 炎龍はクリフの言葉に合わせるかのように、煙の息を吐きだした。

 芳しい香りがあたりに広がっていく。

「なら、少しだけ答えを言おか。人の心を変えるのは容易やない。頭の悪い者はそのために暴力に走り、臆病な者は惨めに諦める。だからこそ、知恵を絞って考え抜く価値があるんや」

「それが僕にできるかどうかを試しているのでしょう?」

「不愉快か?」

 そんなことはない。むしろ……。

 城の牢獄の中、ずっと一人きりだったのだ。

 そうして誰かに見ていてもらえるのは、悪い気がしなかった。たとえ、相手の思惑が何であろうと。

 クリフは思わず、皮肉りたい気分になる。

「本当はチェスが得意なくせに。クトゥルーとの賭けもあなたが挑めば、楽勝だったのでは? 僕がどれだけ恐ろしかったか……」

 クリフのその言葉を聞いたとき、人を喰ったような態度の炎龍の顔がほんのわずかに曇った気がした。

 だが、彼はいつも通りのニヒルな笑みを浮かべ、蠱惑的な香りの魔香の煙を吹かして、煙管をくるくる回しながら弄んだ。

「人には人の役目っちゅうもんがあるんや。朕は凡夫。表舞台や主役はどうにも似合わん。狂言回しのほうが向いとる。ただ、『在るべきように』物語を導き語るのみや。それで人の幸不幸が分かれようが、知らんなぁ?」

 最後の言い方は恐ろしく冷酷だった。

 大国である竜玉公国の長には相応しい態度だ。言葉の通り、マフィアやならず者のひしめく大国を力と知略でまとめあげ、国に栄華を取り戻させた彼が人々にもたらした幸と不幸の数は、想像を絶するほどに膨大だろう。

「クトゥルーと賭けをし、勝利したことに後悔はありません。たとえ、半神の身となろうとも、クトゥルーは僕に魔獣との対抗方法である半神生成技術の叡智を授け、兄もノーデンスの『聖遺物レガシー』に残された『嘆きの残滓』で命をつなぎとめた。二年経った今もまだ、意識は戻りませんが……」

 炎龍はからかうように、だが慰めるような優しさを宿した口調で言った。

「そんなに恋しいか? 愛しのアダム兄上が」

「あなたには関係がない。これは僕たち兄弟の問題です」

 だが、そう言いながらもクリフはわずかに震える手を握り締めた。

 あんなにひどい怪我をしながら、地を這って僕を助けに来てくれた兄さん。

 一体いつになったら、目覚めてくれるのだろう。

 ふと、煙と花の香りがさっきよりも近くで漂う。

 いつの間にかそばに立った炎龍はそっと、座ったままのクリフの頭を軽く撫でる。

 クリフは少しの間のあとに、背から生やした触手の一つで軽くぱしりとその手を打った。

「子ども扱いはよしてください。髪が乱れますし……」

 触手で弾かれた手にわずかな痛みを感じたのか、ひらひらと振りながら炎龍は軽口を叩く。

「お怒りか? おお、怖い怖い」

「僕はもう十八で、子ども扱いされるような年ではありません」

「そやのに、わざわざルルイエ城へ招いてはくれるんやな」

 クリフは自分でも不思議でならなかった。この男を信頼しているわけではない。

 十六歳の誕生日の日、牢獄の前で倒れた兄を見て半狂乱になった自分の下へ現れた竜玉公国の皇帝。

 母が所持していたとされるネクロノミコンでクトゥルーを召喚し、兄を救いたければ賭けをするように、そして救うためには半神という存在を作るしかないと言った。

 もし兄が人として息を吹き返したところで、生身では太刀打ちできないアザトースの軍勢、魔獣との戦闘に対抗する必要があるからと……。

 あのときは何を信じていいかもわからず、ただただ炎龍の言葉に従い、クトゥルーと賭け勝負をして、兄を……国を守るために自らも半神となった。

 今から考えれば愚かだ。頼る者も何もないからと一国の王が、悪名高い竜玉公国の皇帝の言うことに従ってしまうなんて。

 しかし炎龍は賭けを終えて、ほうほうの体で半神となった自分の前に跪いて言った。

『ルルイエの若き王よ。朕はこれより永遠に貴殿の宿命さだめを共に分かち合おう。呼びさえすれば、いつでも馳せ参ずることを誓う』

 闇を生きる楊炎龍のその言葉を真実と捉えることはできはしないと、頭が警鐘を鳴らした。

 だが……父も亡くし、兄も目覚めない以上、拠り所は最も信頼できないこの男以外になかった。

 クリフは炎龍にとげとげしい言葉を投げかけた。

「好きな時に呼べと言ったのはあなたでしょう。そのお言葉にありがたくあやかっているだけです。いずれ、わが国を守るための『荒人神』生成のための『忌神』の『嘆きの残滓』をあなたは提供してくださっている。そしてあなたがたも我々が差し出す、犠牲となった半神の魂がなければ、軍用霊獣キメラの開発が遅れて国防が滞ってしまう。互いに利益のあるウィンウィンの関係で、会談時にチェスを持ちかけることの何が悪いのでしょう?」

「言い訳するとき、理詰めの説明口調で話がやたら長なるとこ、ほんまそっくりやわ。……どうしようもなく、寂しがりやなところもな」

 炎龍はふと、玉座の壁にかかったヘレナ・エラルヴィン・ルルイエの肖像画を見上げた。

 そのまなざしには懐かしさと、届かない星を見ているような「遠さ」と苦しさがあった。

 クリフは何度問いかけても、まともに返ってきはしない問いを投げかける。

「炎龍陛下。あなたは、母と一体、どういう関係だったのですか?」

 炎龍は短いため息のあと、呟くように答えた。

「我が、薔薇の下に……」

 クリフは思わず首をかしげる。炎龍は肩をすくめながら言う。

「滅びた有神時代のある帝国に残る言葉や。どこで『盗んだ』かはもう忘れたが、『アンダーザローズ』とも言う。墓場まで持っていく秘密……。ああ、お前が心配しとるようなことはないで? だれにでも秘密はあるもんや。大なり小なりな」

「秘密……ですか」

 クリフはふと、顔を曇らせる。

「どないした?」

「兄は目覚めたとき、僕に幻滅しないでしょうか? 彼は……僕の兄さんは、正義感の強い英雄だ。仕方ないこととはいえ、僕が国民を半神とし、彼らに魔獣の討伐をさせていると知ったら……」

 炎龍は切れ長の目を意地悪に吊り上げながら切り返す。

「へえ? 半神の叡智をクトゥルーに授かることも、受肉結晶の培養も何もかも全部、朕の入れ知恵でしといて、えらい傲慢やな」

 ――すべて、自分が教えてやったことだ。

 そうとでも言いたげな強い言い方だった。

 普段から余裕を持った態度で、人に何かを押し付けることはない炎龍らしくないと思わせるほどの。クリフは思わず焦って否定する。

「そういう意味では……!」

「恩義を忘れるとろくなことないで? 現ルルイエ王、クリフ・クトゥルー・オールドワン。この対等な国交関係がなぜ築かれているのかをよう考えることやな?」

「今でも……対等ではありません。あなた方、竜玉公国のほうが今は有利だ。警護用の軍用霊獣キメラを法外な値段で買い取らせ、我が国の財政は圧迫されている」

「あれがおらんかったら、もっと民や半神が死ぬで? 何事もどちらが不利か有利かをやたら問うのは野暮や。特に片方が甘えとる限りはな。お互いよければそれでよしやろ」

 甘えている。

 端正な東方の皇帝が何の気もなしに放ったその言葉がふと、クリフの胸に突き刺さる。

 そうだ、自分はこの末恐ろしい毒を含んだ皇帝に甘えている。

 いつまでも目覚めない兄を待つ、不安で押しつぶされそうな心の埋まらない穴を埋めるために。

だが、炎龍はひどく優しい声で言う。

「……少なくとも、朕は嫌やないで? その顔で甘えられるんは」

 炎龍の金の瞳に射抜かれるのは、どうにもばつが悪い。

 きっと、その瞳の中には亡き母が、魔女と呼ばれた王妃の姿が映っているのだろう。

 クリフはぷいっと目をそらして言った。

「お断りです。いずれ、竜玉公国あなたがたから自立してみせる」

 炎龍は鼻を軽く鳴らす。

「そうか。ほな会談は終いや、クリフちゃん、再見サイチェン……また近いうちにな」

 そう言って気づけば、煙の龍と共に去って行った。

 残った煙と花の香りが入り混じった芳香が頭をしびれさせる。

 本当に、彼は実在している人間なのか? 時折そう思わせるほど、炎龍の存在は非現実的だった。

だが、創生神クトゥルーと時を繋いだ半神の自分もまた、普通の人間とは言えない。

 自分の体内でうごめくクトゥルーの鼓動と触手を感じながら毎日生きる事には慣れていったが、この先どうなるかはわからない。自分も神食という現象によって、命が縮まることは確実だろう。

 半神たちには神食度を確認するため、そして暴走を抑えるための首輪をつけさせている。

 全てを捨てて、国民を守るというよりは兄を助けるために自分達以外にも半神を作り出すことにした。

 もし、目覚めた時に国が滅んでいないように。

 今王都をどうにか覆っているシールドが破壊されるようなことがあれば困り果ててしまう。すべては兄を守るためだ。

 実際にシールドが一度、破壊されかけたことがあった。アザトースの送った眷属のなかでもハイレベルの魔獣、グロテスクな一つ目巨人サイクロプスが現れた時だ。他の半神たちでは太刀打ちできず、自らのクトゥルーの半神の力でどうにか倒し、シールドを修復したものの、一つ目巨人が生まれたであろう繭に酷似したものがグロテスクにいくつも天からぶらさがっている。

 ……あの繭がすべて割れるのは、時間の問題だ。一体ならどうにかなるものの、多勢であれば街はあっという間にひねり潰されてしまうだろう。

 炎龍はいずれ来る有事の際を見越し、取引を持ち掛けた。

『荒人神』という一騎当千に近いレベルの最強の存在……神話に残る古代ルルイエの王、ゼルク・ラーに匹敵する半神を生み出すために、ある共同戦線を張ることとなった。

 毎日削られていく半神の命に加え、『荒人神』を作るためには国民に犠牲と負担を強いなければならない。

 この罪を……兄、アダムは許してくれるだろうか?

 クリフの足は、気づくと城の研究室へと向かっていた。

 研究者がへりくだって挨拶をするのを適当にあしらい、ある一室に辿り着く。

そこには栗色の髪の少年が眠っていた。

「やあ。アダム……。しばらく忙しくて様子を見に来られずに悪いことをしたね」

 医療装置に表示される脈拍と、静かに眠るその顔を見たら、少しだけ胸が落ち着く。異変があれば即報告するようにさせてはいるが、実際に姿を見るとやはりほっとする。

「ずっと眠っていると退屈だろう? 最近あったことでも、話そうか? 君ぐらいにしか言えないことなんだ」

「ある半神が死んだんだ。名前は……忘れてしまった。階級は歩兵ポーン。それなりによく働いてくれていたけど先日、神食度が限界になって、暴走する前に首輪の制御機能で命を落としたようだ。遺体は当然……溶鉱炉でヨグ・ソトースに『還した』」

 半神の遺体はすべて、ヨグ・ソトースの受肉結晶の集積場である溶鉱炉で溶かして、『返還』しなくてはならない。

 一度死した神々の『嘆きの残滓』と結びつき、時を繋いだ受肉結晶は人間の体内の奥深くに癒着し、どんな方法を以てしても取り出すことができなくなる。それでかつ神食が限界まで進み、半神は人ならざる成れの果てとなって徘徊するようになってしまう。

 実際にそのまま死体を埋葬したことがあったが、夜になると死体が一人でに動き出し、受肉結晶の神食が進んだ挙句、民家を襲った。そして結果的に犠牲者が出てしまった。

 ネクロノミコンを解読し、半神の生命的特徴をある程度把握しているという炎龍からは最初にそう忠告されたが、死体をヨグ・ソトースの受肉結晶の中に溶かして『返還』することに抵抗があったため、実際に事が起こってしまった。

 炎龍の言うことは不思議と正しい。それに従わなければ、確実に何かしらを失うことになる。そう思ってからは、彼の忠言に背くことが恐ろしくなった。

 受肉結晶に遺体を返すさいに、

「人道的にはよくないことかもしれない……。でも、半神の生成手術の際に説明をしているし、すべては、君と国民を守るためだ。でも、死んだ半神の母親が文句を言いに来たんだ。息子の遺体を返してくれってね」

 年老いた彼女は涙ながらにクリフに言葉を重ねて嘆願した。

 どれだけ息子が愛おしい存在だったか。貧しい自分のために、止めても聞かずに莫大な報奨金を得るために半神の被検体になった息子の亡骸に会って、ちゃんと弔いたいと。

「でも……どんな理由があれ、特例を認めるわけにはいかないから却下した。一応、納得させるために極秘で見舞金を渡すことにしたよ。でもその母親は受け取らずに僕をこう罵った。『あなたは美しさだけを 残して心を捨てた邪神よ……。親が子を思う気持ちなどわかりはしないのね!』と……」

 そう言ってクリフは桜色の唇を軽く噛んで沈黙した。アダムの穏やかな瞼を見つめる。

 そのあとのことは……眠るアダムに詳しく語る気になれなかった。

 その母親の言葉で、クリフは自分の気持ちが見抜かれた気がした。

 ――そんなの、親のいない僕にわかるはずがないだろう。

 そして、親にそこまで思ってもらえる、大した戦績も立てずに死んでいった半神の彼が羨ましかった。

 気づくとクリフは衝動的に、クトゥルーの異能でその母親から息子が死んだ記憶を削除していた。 すると彼女はぴたりと呆けたように黙った。

 血の繋がりがないからとはいえ、牢獄に16年も息子を閉じ込めるような父親しか自分にはいなかった。

 その彼も死んでしまった。 魔女と呼ばれた母ヘレナも、物心つく頃にはもういなかった。

 ない、ない、ない…………。

 牢獄を出て、偽りの王となってからずっとだ。

 自分を想ってくれる家族や、もしくは土台として信じられるものがあって、安定した人間。

 そういった者たちと比べて、自分にないものばかりが目に付く。どんなに美しいと、強いと褒め称えられてもみなが跪いても、その穴だけは埋められなかった。

 常に不安定で、目に見えない何かが恐ろしくて、底なしに寂しい。

「国のためとはいえ、ひどく冷たいことをしてしまったな。……でもアダム、結構なことだと思わないか? 死んでからも、親の愛を無条件にもらえるなんて」

 自分には、それは決して与えられることがないものだ。

 でも、命を賭けて助けてくれた人がただ一人だけ、この世にはいる。

 そう思うと、アダムだけが頼れるよすがだった。

「兄さん。アダム……早く目覚めて……一人ぼっちで、怖いんだ……」

 崩れ落ちながらアダムの手を握る。

 でもこれは、本当に言いたい言葉じゃない。

 本当は…………。

 兄さん、君だけは僕を許して。

 命をかけて助けに来てくれた君以外の他人を、全く大切に思えない僕を、どうか……。

 かつて母も、英雄と呼んで慕っていたと言う父にこうして縋ったことがあったのだろうか? とふと考える。

 母のことは何も知らない。彼女を知っているはずの炎龍も一切話してくれない。

 元々、自分は何も知らなかった。いまだに自分の本当の父親が誰かもわからない。

 その空洞のルーツも絶えず自分を不安においやる。

 本当に……自分は邪神の子どもなのだろうか?

 だから、僕は兄さんみたいに他人のことを思いやれないのか?

 母がなぜ狂い、凶行に走り、処刑されて死んでいったのかも……わからない。

 父に与えられていた魔脳端末は今から思えば、ある程度情報の制限をかけられていたのだろう。

 半神となってから、王として生きるようになってから、ますます真実を『知りたい』という気持ちが膨れ上がっていく。

 だが、それと同時に……何も知りたくない、そしてアダムに何も知られたくないと願う自分もいた。

 ――今のままでも、十分じゃないか?

 このまま彼が眠り続けてくれれば、アダムを命がけの魔獣との戦いに巻き込まずに済む。

 寂しいけれど、『あの人』は……炎龍は呼べばいつでも来てくれる。

 兄のように、一度たりともまともに話をしてくれなかった父に代わるように。

 手加減されるのはいけすかないけれど、チェスの相手だってしてくれる。

「どうしてかな……アダム。時折、君がずっと眠っていてほしいと思ってしまうことがあるんだ。もう、どこにも行ってしまわないようにって。君の声をもう一度聞きたいのに……君に会いたいのに。変だよね」

 クリフは震える手でそっと、アダムの頬に触れる。

「目覚めた君が、僕に幻滅するのが怖い……。どうして僕は、一番大切な人の幸せを願えないんだろう……」

 沈黙の中、二人の兄弟のあまりに一方的で孤独な会話が響き、そして消えていった。

 だが再び訪れた沈黙は魔脳の機械音声によって破られた。

「パスコードが解除されました」

ウィーン……、自動開閉式の気密扉が開く音がした。

クリフは整った顔を少し歪め、ぽつりとつぶやく。

「君か。いい加減、謁見の許可ぐらいとったらどうだい? 相変わらず無礼だな……ガイア・モイラ」

 緑のリボンで髪をゆった銀髪の少女は小首を傾げ、無機質な表情で言う。

「この領域へのアクセスパスを渡したのはあなたよ。許可が必要とは知らなかった」

 明らかに人目を引くほど美しいその少女は、どこか優しげに見える目で眠るアダムを一瞥した。


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