Who I am
生活の中で言葉に出来ないストレスに出会った時、私は物語を書きます。別にその出来事が由来の物語という訳では無いのですが書き終えた時とてもスッとするんです。私の独白にお付き合い下さい。
窓の外を望む。大きな雲の隣から太陽の光が私にエールを送ってきた、ありがたい。同時に気づく、女子テニス部がジャージで活動を開始したようだ。その奥に綺麗な服の大学生が歩いているのが見えた。一つずつ脳内で整理していく。今朝は粉雪が降っていたが太陽がてっぺんに上り儚く消えたらしい、少し寂しい気もしたが暖房も付かない部屋で唯一の熱に文句は言ってられない。次に一、二時間前を顧みると廊下に並べられたカバンの群れを見つけた、テストの時にのみ見られる現象だ。これで昼間から部活をしている理由が見つかった。定期テストで午前で学校が終わったのだ。ユニフォームではなくジャージだったのはテスト週間明けの部活で軽くやって解散なのだろう、と私は推測を重ねた。そしてあの大学生、白を基調とした純白という言葉をそのまま形作ったような服に紅色のネイルが映えているのが見えた。日が陰り少し寒くなった。雲が太陽に被ったことによりかなり時間が経っていることに気がついた。私はこんなことしてる暇は無いと机に向き直った。
高校三年生の2月、自由登校日、私立の大学入試が終わり国公立2次まで残り半月ばかりの今日、どうにも勉強に身が入らなかった私は30分もかけて登校し、こうして妄想に時間を費やしていた。
グループLINEに知識と近況報告に煽りを加えて送ると周りも同じようなことをして、効率こそ悪いが集合知のように知識が溜まっていく。このグループが存外心地が良い。ただし出不精ばかりなのが玉に瑕で3分で来れるやつすら学校に来てくれやしない。暖房が付かないというのも理由の大半を占めては居そうだが地方公立高校の財政を考えると仕方ないことだ。自分の解けなかった化学の問題を送り付けながら、3分に1回はスマホを触りながら、1人教室で動画を見て笑いながら、時間は過ぎていく。ある時気づく、驚くほど問題は進んでいない、あと1時間で学校が閉まる、三時現在、このままじゃ流石にまずいと思い、その結果LINEを打った、ただしグループではなく、個人に。
そいつもグループLINEの住民なのだが、通知をオフにしていたはずだ。思った通り個チャだと返信が返ってくる。端的に予定を伝える、4時すぎにホール集合で。しかしこの約束が守られることはなかった。30分も経たずに彼が来た。2人で雑談を交わしながらペンを走らせていく。そこからはあっという間に1時間が過ぎた、学校が閉まるマイナス30分前である。私たちは急いで学校を出ようとした、そして突然静かな足取りになり2階を通り過ぎた。私はなんで教えてくれなかったんだと言うように彼を見る。何故女子テニス部がジャージだったのか、彼女らはユニフォームを持っていない1年生だけだったのだ。では2年生はどこにいるのか、まだ教室でテストを受けていた。家庭学習の結果、曜日の感覚を完全に失っていたが故のミス。定期テストではなく模試だったのだ。幸い、それが理由で昇降口は空いていた。驚きや納得から思わず笑みが零れそうになっていると、彼からスマホを見せられた、彼のスマホにはLINEが映っていた。
私は溜息をつき、いいよ、と言った。彼は急いで帰ろうとしたが振り返り、自販機寄ろうぜ、と言った。彼は私にココアを奢り、急いで帰って行った。昔と違って甘すぎるのは好きじゃないんだけどな、とは言わなかった。彼とLINEの主の女の子との複雑な関係はここでは触れないが、女子とお勉強通話するためにここまで一瞬で帰れるとはと1周回って尊敬の念が湧いてきそうだった。本来1人でホールに行くのに抵抗があって呼んだのにホールに行く前に帰るとは。本当の意味で約束が守られないことに憤りは無いがモヤモヤするのも事実だろう。今度は周りが暗くなったことにより考えすぎているのに気づかされた。ココアもすっかり冷めているようでさっさと飲もうと思った。冷めているココアは少し苦く感じられて私好みだと思った。
高い空を望む、赤く光った信号の奥により赤い夕焼けが輝いていた。俺はココアの缶を少し振る。そして俺は多重人格者だ、というと厨二くさいが弱多重人格と言っても過言では無いと思う。多くの時間俺は俺とは言えないのだ。そして今日の私もまた俺とは言えない。俺は感受性の生んだ怪物であり、ある意味全ての感情の理解者になり得る。そして今日の俺は友人に恋する幼なじみ役だったらしい。今の俺にはそこに溜まった濃いココアは甘ったるくて仕方ない。青に変わった信号とともに白線の上を歩く。
本日の演目はこれにて終いである。
読んでいただき誠にありがとうございます。この主人公のお話は今回のようなショートストーリーをもう何度か続けようと思います。どういうお話が読みたいなどありましたらぜひ教えてください。