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「ミリアいつの間にあんなことできるようになったの?」
警備隊の人が帰ったあと、1度建物の中に入り一息ついたところで姉さんが言った。
「昨日ですかね。いくつかアドバイスをもらってまずは簡単に合図を決めようと思って。」
なのでまだ練習中ですと付け足す。
「それはどんな練習で最終的にどうなりたいの?」
「そうですね…。」
姉さんに昨日もらったアドバイスを簡潔に伝え、ハンドサインでの指示出しともっと細かいことができるようになりたいという中期目標を伝えた。
「それなら来週はユリ殿でみっちり練習しましょうか。」
そう言った姉さんは思いついた練習方法を言ってきた。
「確かにその方法なら細かいことの練習になりますね。」
「もちろん無理はさせないわ。」
1人で色々やってみるより、限界を迎える前に止めてくれる人は必要だ。
「よろしくお願いします。」
頭を下げる。
「いいのよ。思いつきだからうまくいく保証はないけど、頑張りましょうね。」
「はい。」
その日は姉さんに鍵を預けて帰ることにした。
土日はできるだけ家で過ごすことを念押され、もしどうしても出かける時は連絡すること。
ユリ殿の様子は姉さんが見に来てくれるとのことだった。
(念の為、持って帰れる物…。というより影に入れておけるものは入れておいたし、大丈夫だろう…。)
そうして自宅に帰ると。彼女が1通の封筒をわたしてきた。
「ありがとう。」
なんとなく見覚えのある封筒を開けると短く、ツユカから短い挨拶の後に花姫に選ばれた事に対する祝いの言葉と日曜日午後に衣装の合わせに伺う事。
その時に姉さんも一緒に自宅に居て欲しい旨が書かれていた。
すぐに姉さんに手紙を出した。
夕暮れに飛んでいく手紙を見送っていると、後ろから彼女の不満そうな視線を感じて慌てて彼女に声をかける。
日曜日は昼過ぎにやってきた姉さん曰く、この2日間ユリ殿は特にいたずらをされては居なかったそう。
「これで諦めてくれれば色々と楽なんだけどね…。」
そうは行かなそうな感じが伝わってくる。
その後すぐにツユカが店の部下を伴ってやってきた。
さすがに一緒にというわけにはいかず、1階を姉さんに使ってもらいツユカと2人で2階の寝室へ移動した。
「短い間に色々あったみたいですね。」
「毎回お手数おかけします。」
つい先日も突然のことに急ぎ呼び出したような感じだったのに、今回もまた急な話で迷惑をかけてしまった。
「それが私たちの仕事ですから。それにこれほどやりがいのある仕事もそうそうある物ではありませんわ。」
嬉しそうにツユカが言う。
きっとこの人にとって服飾というのは天職なのだろう。
「それに今回の服はそれほど難しいものではありません。賜った花の柄が入った上着に色の入った飾り帯。それだけです。」
その上着はとても華やかな物だった。
「下の殿方の方が参加されるのは珍しいから時間がかかるかもしれませんね。」
確か花園は男子生徒が3人居ると前に姉さんが言っていた。
「記録によれば毎年衣装を贈ってはいるみたいですけど、祭り期間が終わると未開封のまま返送されてくるみたいですね。」
「そうなんですね。」
考えおよばないところで色々とあるのだろうと深くは考えないことにした。
「あっ、そういえば…。」
姉さんの採寸が終が終わるのを待ってツユカは帰り支度を始めたところで声をあげた。
「こちらを私の上司経由で預かってまいりました。」
そう言ってツユカは真っ赤な便箋を差し出す。
「花園代表様からあなたに宛てた手紙だそうです。」
とてつもなく周りくどい方法で届いたその手紙を彼女が差し出してきたペーパーナイフで開ける。
「・・・・。」
中に入っていたメッセージカードには簡潔に短く要件だけ。
それを目で追い終えるとすぐに熱をもたない炎で封筒ごと燃えて消えてしまった。
「それでは金曜日に届けさせていただきます。」
ツユカは一通りの様子を確認したのち、足早に帰って行った。
「内容はなんて?」
「『何かするつもりなら必ず相談を、私はいつでも歓迎する』だそうです。」
「ふーん…。それで、ミリアは何かする予定があるの?」
「まだ様子見です。」
そんな話をしていたが、翌日ユリ殿に行くとまたしてもゴミが散乱していた。
今度は門の前や壁沿いに散乱しており、女子生徒が1人倒れている。
「姉さん、お願いします。」
「わかったわ。念の為、ミリアは中に入っててね。」
それだけ言い残して姉さんは鍵をわたすと早足で行ってしまった。
「さてと…。」
倒れている女子生徒には見覚えがあった。
何度か一方的にだが見たことがある。
(念のため…。)
女子生徒の足を陰で掴む。
それから肩を揺り動かしてみる。
「・・・・。」
唸り声を上げながら目を覚ます。
「おはよう、君は確かBクラスの人だよね?ここどこだかわかる?」
時々、許可をとって他のクラスの様子をみんなで見ることがあった。
その時に比較的ティーを懐柔しておりコミュニケーションが取れている子として記憶に残っている人物の1人だった。
(たしか濃い瑠璃色のインコ…。)
噛んだり攻撃的ではないが飛んでくれずいつも肩に乗っていたティーの姿が見当たらない。
「頭が痛い…。」
「何があったか覚えてる?」
少し体を起こそうとしたがすぐに起き上がるのを諦めてうずくまり頭を抱えていた。
「朝、早く目が覚めたからティーと一緒に散歩に出て…。そしたら何かとってもいい匂いがしたから振り返って…。それ以上は覚えてない。」
よく見れば靴は片方しか履いておらず、手も顔も傷だらけだ。
「ありがとう。もうすぐ大人たちが来るから動かないで居て。」
「…わかった。」
そうしているうちに姉さんと警備隊の人たちがやってきた。




