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アニミ物語  作者: カボバ
冬祭り編
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90/419

18



招かれて入室する。その部屋はとても不思議な部屋だった。


重厚感のある革に光沢のあるベロア、大木を切り抜いたような造形に背板や座面まで1本1本丁寧に仕上げられた木製。革製・布製・木製のありとあらゆる種類のソファーがひと組ずつ、向き合ってセットされている。


テーブルには可愛らしいこれまた意匠の違うランプと一輪挿しが飾られており、少し変わった小さな喫茶店のような空間だった。



「どう、私たちの部屋。置く場所が足りなくて隣の部屋の壁取ってもらってまで作ったお気に入りの部屋。」


「すごく素敵です。」


よく見れば入ってきた扉と同じ並びにもう一つ扉があり、部屋中央の壁や天井にはかつてあった壁を取り払った時の名残が新たな意匠としてそんざいしていた。



「さぁ、座って。」


シモミは部屋中央の革製ソファーに座ると手招きして呼び、テーブルの上にあった小さなベルを鳴らした。



「いつものお茶をお願い。後でもう1人お客様とチヨミも来るから。」


部屋に音もなく入ってきたブラウニーズにそう言う。


少し待てばすぐにポットに入ったお茶と小さな菓子器にキラキラとした砂糖菓子を山盛りに盛り付けられた状態で出された。



「ありがとう、また後から呼ぶね。」


シモミがそういうとブラウニーズはまた音もなく部屋から出ていく。


お茶はレモンのような爽やかな香りのするものだった。



「今週は色々と大変だったでしょ?」


「そうですね。たくさん助けてもらいました。」


「今のうちに聞いておきたい事ない?」


ポットから自分の手でお茶を継ぎ足しながらシモミが言う。




「チヨミはダリアの後に受け取りだからもうしばらく時間がかかるだろうし、アズハを呼んでくるならさらに時間がかかるだろうしね。私これでもかなりの情報通よ。」


そう言ってお菓子をひとつ取り食べる。



「その情報に対して私は支払いが必要ですか?」


「いらないわ。強いて言うならこれからも花園に居てくれることかしら。」


その言葉に首を傾げる。



「花園ってね、長続きしないクラブなのよ。除名除籍の数は他のクラブに比べても多いわ。」


「やめることができるんですか?」


コウヤの兄の例があるので問題を起こした場合は辞めさせられる場合があることは薄々気付いていた。



「自分で辞めたいですって言うのは無理よ。でも、何か問題を起こしたり明らかに続けられない状況だと判断されたら除名もしくは除籍っていうことが起こりうるわ。最近だと、飛行士で除籍者が出たって聞いたけど、ミリアも関わってるんでしょ?」


「その話は噂になってますか?」


「そうね。誰が学校に来なくなった、何かあったらしい。兄弟が関係しているようだ。そんな噂をたくさん集めて頭の中で煮詰めて繋ぎ合わせる。ミリアが関わってるかもって言うのは私たちの勝手な憶測よ。」


つまり確信があって言ったわけではないと言うこと。




「花園は女性の多い、そして女子生徒の憧れるクラブ。でもその内情は女子生徒の嫌なところをぐちゃぐちゃに押し込めたような場所でもあるの。」


ミリアも心当たりがあるでしょ。と言われ先ほどの事を思い出す。




(あれは嫉妬とか妬みというより、殺意だったような…。)


「そうやってある人は心を病み、ある人は攻撃的になり。12の神殿を守っていくのも厳しくなっていった。」


慢性的な人員不足の理由ははそういうところだったのかと妙なところで納得する。



「先代様も最後は除籍だった。まぁ私たちが初めて会った時には、いつ切れてもおかしくないような細い蔦に片手でぶら下がってる状態だったけどね。」


つまりは誰の目から見てもギリギリだったということだ。




「私たちの生まれは南33。アズハより少し遅れて学園に到着して、入学したその日に花園に連れてこられた。」


そこで見たのは私たちからみれば大人と言って差し支えない女子生徒があの子はまだ来ないのかって喚き散らしている様だった。


なんのことだかわからないうちに双子姫として別の先輩がいろいろ面倒を見てくれた。




「肌寒くなってきたある日、先代様が笑ってる声が聞こえて見に行ってみたら私たちと同じクラスの子を抱えて笑ってたわ。」


思い出すだけでも恐ろしい、あの時の顔は今でも夢に見る。



「嫌だ、やめて、かえして、助けて。って言う動かない子供をずっと欲しかった人形を手に入れた時のように愛でている光景は、私たちだけじゃなくその場にいた正気の生徒たちをも飲み込むほどの狂気。」


その光景を見た者たちは先代様に心酔している者か同じ狂気に取り憑かれた者。


またはすでに諦めている者以外動けなくなっていた。




「その後すぐになぜか花園メンバーしか開けられない扉を開けて入ってきた大男が、先輩たちを押し除けて先代様に何かを言ったと思ったらアズハを取り上げた。」


そのまま先代様は倒れてその場は大騒ぎ。


入り口付近で震えてるしかなかった私たちと、大男の前に立ち怒鳴りつける1人の女子生徒。


パンッと乾いた音がしたかと思えば頬をおさえてよろめき座り込む女子生徒に大男がひと言何かを言ってその横を通り過ぎた。



そして部屋を出る前に2人に向かって手招きをしてきた。




「とにかくもうその場には居たくなかったから、私たちはこれ幸いと着いて行ったわ。」


クラブハウスの外に出たら世界樹と海底神殿の主が待っていて、それぞれよくがんばったねって褒めてくれた。




「その後、私は海底神殿に。チヨミは世界樹、アズハは茶会にそれぞれ保護されることになったわ。」


先代様はそのまま除籍。


新しい主を選ぶにも一悶着ありつつ、当代のバラ姫様が就任。




「その年の冬祭りは開催されるのかも怪しかったけど、バラ姫様と先輩たちが頑張って何とか成功させたわ。」


深く頭を下げ花園に戻ってきてほしいと言うバラ姫様見た時はとても衝撃的だった。





「その年は私が11時、チヨミが1時の神殿を担当したんだけど会期が終わると自分の足で立てない状態になってしばらく入院。これまで長い時間離れて過ごすことがなかったから気が付かなかったけど、私たち2人は離れて過ごすとティーが不機嫌になって体調を崩すみたいなの。まぁ、それはまた別の話ね。」


まぁ半日くらいならぜんぜん問題ないから一緒にいないのを見て周りが大慌てするんだけどと笑いながら言う。




「先代様の後は今の所除籍も除名も出てないよ。今回ミリアを強引に花園に連れてきたのは、人手不足っていうのもあったと思うけど、あの先輩へのバラ姫様なりの嫌がらせっていうのもあるのかもね。」


「話を聞かせてくれてありがとうございます。」



バラ姫様が姉さんに何となく攻撃的な理由も、バラ姫様の言葉に何処かトゲがあるところも何となく納得できた。





「この学園にあるいろんな伝説の中でも埃を被った、忘れられた話よ。」


それでも時間潰しになったならよかったと言ったところで扉が開いた。





 

 

誰に語らせたら一番短く話してくれるか選手権(脳内会場)で優勝したため語ってもらいました

 

参加者6名で一番長い人だと三倍くらいの分量になりそうだったなんてこともあり、

でもいつか番外編なりなんなりで他者目線も書きたいとも思ってる

 

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