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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
8/243

7




いつの間にか部屋の中には無数の物が飛び交っていた。


そして小さな人形が私の手を引く。

よく見ると頭部がカラフルなまち針がたくさんついている。


引かれるがまま少し開けた場所に行くと複数の巻き尺が飛んでくる。



ある巻き尺は肩幅を測り、ある巻き尺は裄丈を測る。


それぞれが目的の箇所を測っては女性のところに飛んでいき女性が一つずつ手に取りその数字をチラリと確認してスケッチの隅に書き足すとまた別の場所を測りに飛び回る。





 


「随分とお疲れですね。」



結局、馬車の旅に戻ったのは日もすっかり暮れた頃だった。



あのあと女性はほぼ自分の世界に没頭し、私は身体の隅々までそれはもう隅々まで測られた。



制服と一言に言っても普段着から季節の行事着まで用意するものは多いのだそうだ。



そして基本的に着ているものは下着まで全て支給品なのでそれはそれは細かく測られた。




しかし子供は成長する生き物、今測っても来週にはまた大きさが変わることがあるのは当然だった。


なので部屋を出る時に女性は「学園に着いたら再度採寸と調整をさせていただきますね。」と予告をしたのだった。




(今だけ、数日間だけ成長止まらないかなぁ…。)


そう思わずにはいられなかった。






15の内側に入ってから、その旅の風景は大きく変わった。


これまで野山をコンパスの針が指し示す方向にただ真っ直ぐ進むような風景だったのに、今は舗装された道を進んでいる。



そして食生活も変わった。


これまではいつの間に搬入されていたのかわからない食材を鎧の人が調理して出してくれていた。


それが内側に入ってからは決まった時間に外から持ち込まれるようになった。



おおよそは宿屋や飲食店の前に停まると待ち構えていた店の人が鎧の人に出来上がった料理をわたす。



それを鎧の人が受け取り、テーブルに並べ再び出発する。それが朝昼晩行われる。



この時鎧の人は少し怖く感じる。


私には必ず席に座りしばらく動かないように言い含めてから食事の受け取りに向かうのだが、私も外の人もそれぞれがそれぞれに興味がある。



だから私は受け取る方を見てしまうし、店の人もあわよくば中を覗こうとする。



そうした時鎧の人はわざと大きな音を立てる。


大抵の店の人はそれでおそれをなしてそそくさと戻っていってしまうのだった。





「ここから先は学園に入られてからも来ることができる場所になります。」


鎧の人の話によると、学園は外に出ることはできないと言っても本当にがんじがらめにされる訳ではないのだ。


最初の内は学ぶことも多いので、自由な時間は少ないかもしれない。


しかし学びだけで身につかないことも多くある。



自分のための時間が増えたとき、時間をかけて自分のティーの力を使う道を探す時、この壁の内側なら自由に行動できる機会もある。


そうでなくても長期的な休暇には学園を出て壁の内側なら好きに過ごしてもいいのだそうだ。


申請に時間はかかるが壁の外の人と会うこともできる。



そういった時に利用してもらうために彼らは食事の提供という形で店を売り込んでいるのだそうだ。



言われてみればなるほど、店の名前の入った紙ナプキンや名刺サイズの店の紹介がついていることが多い。






内側に入って2日目、陽の光が地面を真っ赤に燃やす夕方の時間。なんの予兆もなく馬車が停った。



「少々お待ちください。」


鎧の人がその体が組み上がるよりも素早く外へ出ていった。




「馬車を降りずにこちらからご覧ください。」


そう言って開けられた扉の前まで導かれた。




言葉を失うと言うのはこのことだろうと思った。


教会。


というには豪華すぎる建物がそこにはあった。



はるか上まで続く鐘楼に夕陽を浴びてキラキラと光る鮮やかな窓。


壁は白色が輝きを帯びていてその影すら青く見えてしまう。




「こちらはグランセス学園。あなたが通う学園の姉妹校になります。」


神の力を借りるティップス学園と神の意思を汲み取るグランセス学園。



先生も通っていた学校だ。




「もしかしたら在学中にこちらの学生と交流する機会があるかもしれませんのでご紹介のために立ち寄りました。それではそろそろ出発しましょう。」



そう言われてうながされるまま中に戻りまた馬車は動き出した。




 


8月10日から18日まで毎日更新予定。

20時前後の更新を予定しています(その後はどうするか検討中)

 

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