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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
5/245

4




教会は街の外壁に接している。


普段子供が街の外に出ることは禁止されている。


家族などで理由があって外に出ることはあっても、子供の好奇心をも抑え込むほど強く何度も何度も念を押されて育ってきた。


高い位置にある窓だけでは些か薄暗かった荷台の中の灯りを鎧の人が点けてくれた。



(えっと…。)


どう見ても外から見た時と今中にいる場所との大きさが一致しない。



勉強机にベッド、簡易的なキッチンに幾つかの扉と上へと続く梯子がある。




「これから少し長い旅になるので、その間の身の回りのことはお任せください。まずはこの旅車の中をご説明します。」




灯をつけるスイッチの場所、トイレと浴室の場所に着替えの置き場と汚れた衣服の回収籠の場所。


衣服について下着はシンプルなものを、洋服はこれから向かう学校の制服が用意されていた。



「長旅になりますが、その間はこちらの教科書であなたがこれから向かうところの基礎的な勉強をしてください。」


そう言って、鎧の人が勉強机にずっと持ったままだった本を置いた。 



「隅から隅まで全てを覚える必要はありませんが、到着後にテストを行いどれくらい理解しているかの確認が行われます。」



テストと言われて少しドキッとした。


父のように力自慢ではないし、母のように聡明でもない事を早くに理解した生活を送ってきた。


なのでわからないところを家で母親に聞くということに苦手意識があったせいか、自分の力で勉強をするという行為自体は苦手意識はない。


それでも平均より上だが頂点ではないという成績だった。



「最後にこちらにどうぞ。」


そう言って、鎧の人は梯子の方を指差した。



「私は上がることができませんが、よければ上がってみてください。」


促されるまま梯子を登る。



そこは屋根裏部屋のような場所だった。


まっすぐ立ち上がることはできないが腰を少し曲げれば移動も簡単だ。


そして三角の大きな窓から走る木の馬が見えた。




「こちらにはあなたが見える位置の窓が少ないですが、そこからなら駆け抜ける外の景色を見ることができます。」


ハシゴの下から鎧の人の声が聞こえる。


確かに鎧の人はこの場所で行動するのは難しいだろう。



窓以外何もない場所から降りて再び鎧の人のところに戻る。



「それでは約2ヶ月の長旅、よろしくお願いします。」



鎧の人はそう言うとビシッと敬礼した。


すると鎧の繋ぎめや関節がカタカタと動き出す。あっという間に鎧はバラバラになり乗り込んできた扉の前にいつの間にかあった箱の中へと一つ一つ収納されていく。


カチャカチャという音と光景に唖然としていると最後に残った頭の部分が箱の方へフワフワと浮いたまま移動しながら声をかけてくれた。



「お腹が空いているようでしたら、キッチンの方に軽食をご用意いたしましたのでお召し上がりください。」


そう言って箱の1番上に鎧の頭部が着地した。

 





まず本は6冊、まずタイトルを確認していくことにした。


1番上には入学案内と書かれた本と言うより小冊子が乗っている。



次に基礎学力と書かれた本。パラパラとめくると四則計算・読み書き・絵図など知識の確認と反復練習の本だった。



次にわかりやすい歴史と書かれた本。数ページ確認したが、授業の合間などで行われていた読み聞かせで聞いたことのある内容ばかりだった。

読み聞かせでは何度も聞いたことのある話も今まで本として手に取ったことはなかったので、これは面白そうと興味を引かれた。



次に地理と書かれた本。


こちらの本は開くと右に左にあらゆる方向にパタパタと広げることができ大きな地図になった。

表面は世界地図、裏面は学園周辺地図と書かれていた。


右側と下部には注釈欄があり地図に書かれた記号に合わせて様々な説明が書かれていた。


元の本の形に戻すのに苦労した。



次にティー図録・代表的なものについてと書かれた本。これはそのままティーについての本だった。


項目が多かったため目次の途中で見ることをやめた。



最後は何もタイトルなど書かれていない本だった。中身は白紙だ。

たぶん自由に使っていいと言うことだろう。


勉強机の上にあった手のひらと同じくらいのメモ紙の束から3枚取ってそれを丁寧に折り最初の1ページと最初の1ページ目と大体真ん中、そして後ろから数えて25ページ目にそれぞれ挟んだ。


そして再び勉強机から筆記用具を取り出し1ページ目の左上に毎日の記録と書いた。



何か新しいことを始めるなら記録を取ることは大事だと父から言われた。


父の部屋には父が若い頃から書いている稽古日誌があったし、今でも日々の出来事を1日の終わりに記録するのだと教えてくれた。



何の意味があるのかとか今は考えなくてもいいから日記をつける癖をつけなさいと母から言われた。


何でもいいから一日3行書きなさいと言われたのは幼等教育に通い出して最初の誕生日に日記帳をプレゼントされた時だった。



初めのうちは食べたもの・新しく知ったものや人の名前・寝る時間だった。時より母がそれを見ては褒めてくれた。


だんだんとそれが文章にできるようになり、わからない単語を調べるようになった。


最近では3行で終わる日もあればページいっぱいに書くこともあった。



それを母に言うと私も同じだと笑ってくれた。





このノートの半分は記録と日記にしようと決めた。



それは似たもの同士である両親がつけてくれた習慣を忘れないためだ。





8月10日から18日まで毎日更新予定。

20時前後の更新を予定しています(その後はどうするか検討中)

 

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