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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
35/276

34





「久しぶり、ここがミリアのティールームね。」


立ち上がり扉を開けると姉さんが居た。



「姉さん、何もないですけどどうぞ。」


とりあえず部屋の中に迎え入れる。



「そうね。まだ来たばかりだもの何もないわよね。」


部屋の中を見回しながら姉さんが言う。




「ベランダがあるじゃない。いいなぁ私の部屋窓はあるんだけど、せっかく上の階なんだから外の空気も吸いたいわよ。」


「姉さんの部屋はどこ?」


「私はこの1つ下の階よ。誰も入居してないはずの上の階に上がっていく気配がしたから見に来たの。」



話からするに姉さんも自分の部屋にいたようだ。




「色々買い揃えてミリアだけのティールームを作らなきゃね。」


「姉さんの部屋を見に行ってもいい?」



自分だけの部屋を作るにしても参考が欲しい。

と言うよりまだ個人の部屋が増えるのかと内心ため息が出そうだ。



自宅は彼女があれやこれやと取り計らってくれていたが、ここではそうもいかないだろうしなどと色々と考えが頭の中を駆け巡っていく。




「もちろん。」


そう言われて姉さんと一緒に部屋を出る。



ベランダのある廊下を通り階段を降りる。


階段を上るために先ほどは曲がった角から奥へと進み1番奥にある扉を姉さんが開けた。




「ようこそ、私のティールームへ。」


明るい木の色にしっかりとワックスのかかった床。


壁が見えないほど置かれた棚には大小様々な瓶が置かれていてそのどれもが色とりどりな中身を外に出さないように納めていた。


天井から吊るされたサンキャッチャーがだいぶ傾きまもなく夕日に変わろうかとしている太陽光を一筋捉え部屋の中の輝きを一層幻想的なものにしている。


高い位置にかけられた鏡は縁取りの彫刻が見事で、その上に飾られている振り子時計は大げさな音で時を刻んでいる。




「ここって…。」


遠い記憶の中だが見覚えのある空間に思わず息をのむ。



「懐かしいでしょ、やっと最近完成したのよ。」


その空間の中央に置かれた背の高いテーブルに、これまた随分と高い位置にある丸い座面の椅子。


姉さんですらも小さくジャンプして飛び乗るように座りクルリと回って振り返った。




「あの街にあったお菓子屋さん。私の唯一無二の思い出の場所。」


姉さんと私が生まれ育った街。


その街1番のお菓子屋さん。



誰もが甘いお菓子と夢のような空間で過ごすひとときを買いにくるそんな店。




「あの時のままですね。」


「もちろん全部が本物ってわけじゃないのよ。」


そう言って姉さんが近くの瓶を手に取り蓋を開ける。


すると中に入っていた鮮やかなジャムがのったクッキーがその姿を煙に変える。




「私の夢の中の光景をこの子の力で少しずつ少しずつ作っていったの。」


姉さんが蓋のあいた瓶を元の場所に置くと、煙が瓶の外に出ようとする。


そこをすかさずティーが捕まえ、一度口の中で咀嚼して瓶の中に煙として出していく。


すると瓶の底に落ちていく煙がゆらゆらとクッキーに姿を変えていく。





「全部が全部夢の光景ってわけじゃないけど、それでもすごいでしょ?」


そう言う姉さんにうなずいて答える。



「ミリアも時間をかけて作ればいいわ。」


クッキーでいっぱいになった瓶の蓋を姉さんが閉める。



「ミリア、今から少し出かけましょうか?」


「今から?」


時計を見ればもうすぐ17時になろうかというところ。


外はまだ明るいが、夕方の日差しに片足を入れているような様子だった。




「部屋を作るためのお店の場所と街をあんないするわ。今の時間なら生徒も少ないだろうし。」


そう言って手を引っ張られ部屋を出る。



下へと降りていく途中、一つの扉を姉さんがノックする。



「反応がないってことはまだ下にいるわね。」


それだけ言ってまた歩き出した。


出入り口の前まで来るとくるりと振り返り下に向かう階段の前まで行く。



「先輩!ミリアにお店とか案内してそのまま帰宅します!!」


姉さんが大きな声でそう言うと、一呼吸おいてチンと磁器を叩く音がした。



きっとティーカップをスプーンか何かで鳴らして返事の代わりにしたのだろう。





建物の外に出て区切られた敷地から外に出ると舗装された道路だった。



「街はここから右に行ったところよ。この隣もクラブの敷地だけど私たちが使うことは滅多にないから公園として開放してあるわ。」


木々が植えられ濃い緑を見上げることもできれば、歩く視界の先には花弁が溢れかえりそうなほど綺麗に咲いた花壇が並んでいる。



公園を過ぎると道に沿うように建物が見えてくる。




「通りの中の店はだいたい飲食店よ。この街に住んで商売している大人たちも多いから何軒かは今からの時間が営業開始時刻ね。」


足早に通りすぎていく店の中からふわりと食べ物のいい匂いがしたり、何を言っているかわからないがにぎやかな声も聞こえてくる。



「頼めば持ち帰りもできるしクラブハウスに配達してくれる店もあるけど、その辺はおいおいね。」


通りを抜けたと思うとそこは綺麗な円形の広場だった。



「ここがこの街の中央広場。そして今歩いた通りが8番街。」


広場の反対側にも通りが伸びており、その通りから左に建物一軒挟んでまた通り。




 

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