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カラカラとなる音で目が覚める。
彼女が手に大きなベルを持ってそれを、手首を使って軽く振りながら音を出している。
昨日は可愛らしい鈴のような音の目覚ましだったが、今日の音はガラスのコップに色々な固いものを入れて降っているかのような高い音も低い音も混じった不思議な音だった。
一階のに降りて洗面を済ませると脱衣所で用意されていた制服に着替える。
それが終わるとダイニングテーブルに用意されていた朝食を食べる。
焦げ目のついたトーストを頬張るのを確認した彼女はおもむろにキッチンのカウンター隅に置かれているラジオを付けた。
あまりに馴染みすぎていて今までその存在に気が付かなかったラジオからは天気予報が流れてくる。
学園内というよりはこの辺り一体の天気予報のようで知らない街の名前がいくつも出てくる。
今後のためにも早く覚えなければなぁと思いながら朝食を終える頃、来客を告げるベルが鳴った。
彼女が玄関へと小走りで向かい客人を迎え入れる。
「お久しぶりです、かわいいレディ。」
そう挨拶したのは壁をこえた先で制服を作るためにあった女性だった。
「お久しぶりです、素晴らしい制服をありがとうございます。」
まずはすべての希望を叶えた制服を作ってくれた感謝を伝える。
「今日はその制服の再調整とそのほかの服の相談で来ました。」
女性がそう伝えたところでまた来客のベルがなる。
彼女が今一度対応しているかと思えば今度はすぐに中に招かず扉を閉めた。
小走りでキッチンに向かい何かを準備しは閉めたかと思うと大きめなトレーを手に持ち女性と私を2階へと追いやった。
1番奥の部屋に入ると彼女はトレーを渡してきた。
トレーの上には保温ポットとティーセット。
それから焼き菓子の乗った皿があった。
彼女がガラスの方を向き一度手を叩くとそれまで外が見えていた窓すべてが不透明になり明かりは入ってくるが外は見えない状態になった。
もう一度手を叩くとどこからか丸いテーブルと2脚の椅子が出てきた。
トレーを再び持ち机の上に置くと深々とお辞儀をして部屋から出ていった。
「きっと私たちがいたら邪魔になるからここでゆっくりしててってことなんでしょうね。」
「そうなんですね。」
女性が机の横に持っていた大きなカバンを置きながら言った。
「引越しにはたくさんの人の出入りがあるものですから。」
外が見えなくなった窓の外からいくつもの足音や物を置く音が聞こえる。
「改めて自己紹介させてください。私はツユカ。学生専用服飾店『銀の針』2号店を任せられています。」
「ミリアです。改めてよろしくお願いします。」
数日前にあった時は名前すら聞いていなかったと思い、改めて自己紹介をしお互い握手をした。
「まずは制服の再調整。それから今後の私服の相談と式服の相談をしましょうか。」
そう言いながら四角い敷物を敷きその上に立つように促された。
「私服と式服?」
靴を脱ぎ用意された薄手の靴に履き替えてから敷物の中央に立ってから疑問に思った言葉を聞き返した。
「学園の学生の制服一式と作業着と運動着、それから部屋着や下着まですべて支給品になります。」
それはすでに理解している。
今着ているものはすべて用意された物でありいつも新品のようだ。
「それとは別に休日に着る私服を購入することができます。」
確かに起きている時にいつでも制服を着ているのはだいぶ窮屈だ。
「自分が好きな服を服屋で購入する生徒もいます。そのための服飾店も古着屋もあります。」
せっかく着たい服を買ってもあっという成長期というのは間に大きくなる。
購入する場所もあれば売る場所もあるというのは必然ということだろう。
「ただ一部の生徒様方には私服に関して一つのプランを紹介させていただいております。」
そう言って身体中を採寸する手を止めて今一度、鞄の方に戻り一枚の紙を取り出した。
「シーズンごとに私服をレンタルするサービスです。」
書類を見せられ説明を受ける。
季節ごとに専門家が選んだ服が届くサービス。
サイズはもちろん好みや流行まで考慮して送ってきてくれる。
しかし、多少高額のため一部の生徒にしか利用を勧めてないとのこと。
「ですが、入学早々こんなところに住むだけの方には問題なくご利用いただけると思います。」
当たり前のようにそう言われた。間違えないが、どこか嫌味も含まれる。
「それから式服ですが、あなたはトランプであると伺ってます。」
お互いに一度書類から目を上げ向き合う。
「トランプの方々は年に5回集まり、勤めを果たさねばいけません。その時に着用する服を式服と呼びます。」
今から1番近い着用機会は12月の冬祭りと年末年始の会ですねと付け足される。
また一つ疑問が増えた。
今抱えている疑問を早急に解消したい気持ちを今一度しまい込んだ。
「年末年始の会は年ごとに東西南北の伝統的な衣装を元にした式服を着用いただくことになります。今から製作には取り掛かりますが、3ヶ月もあればあっという間に別人になってしまいます。こまめに採寸に訪れさせていただきますね。」
にっこりという顔が恐怖に感じる。
今この場でできる調整はすぐに行い、それ以上の調整は月曜日までに届けてくれることになった。
私服は勧められたサービスをそのまま利用契約することにした。
そのための手続きは書類一枚で終わった。
その際に一度学生証の提示をお願いされた。
「・・・・。」
「どうかしましたか?」
先ほどまでとてもおしゃべりだったツユカが学生証を見て黙った。
「いえ、トランプを間近で見るのは初めてなもので。」
そう言いながら学生証に手を伸ばすが大きく弾ける音と共にその手が弾き飛ばされた。
「大丈夫ですか!?」
「えぇ。トランプは持ち主だけを愛する。そう聞いていましたが、ずいぶんと重い愛みたいですね。」
手をプラプラと振って無事なことを教えてくれる。
「本当は新入生が来たら店を任せられる私たちが会ってそれから適切な人に仕事をふるべきなのですが、まさか店舗を任せられた最初の年に人に任せられない仕事が来るとは思いもしませんでした。」
ツユカはしみじみと語り始めた。
「まだまだ勉強中の身であり若輩物ではありますが、卒業までよろしくお願いします。」
そう言って再び手を差し出された。
「こちらこそ、まだ右も左もわからない状態で迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします。」
今度はしっかりと握手を交わした。




