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アニミ物語  作者: カボバ
1月編
187/276

23





カラカラカラカラ。




彼女が手に持った大きなベルを鳴らし始めれば頭上に咲いていた花がその一部分を粒にしてカゴめがけて落ちてくる。



それと同時に木に残った花が天井を目指し始めた。




スッと頭の上の花も抜ける感覚がしたかと思えば、目の前の人に乗せた花と一緒にゆっくりと上っていく。


目の前の人と一緒に2つの花を目で追い自然と首が上を向く。



ゆったりとした光景だった。




花は天井に着く頃になって2つが身を寄せ合うようにぶつかり、そしてあっという間に種子のようなものを作って今度はゆっくりと下りてくる。





あまりにゆっくりと下りてくるものだから、カゴに到着する頃にはほかの花たちとっくに役目を終えていて先に眠りについたようだ。


カゴの中を見ればカラフルな中に2つだけ白い石があった。



よく見れば白というより銀や鈍色などの金属近い色をしているようにも見え、ものすごく細かい小さな粒が周りの色を反射しながら輝いていた。




カゴいっぱいになった状態で1階に戻り来客が来る前に3人で袋詰めをする。


真っ黒な人も袋に入った状態のものをわたせば、器用にリボンを結んで別のカゴに並べてくれる。




(この感覚は覚えがある…。)


冬祭りの準備中にユリ殿で姉さん監修の元、たくさん作った紐の束。



あの時は複数の両腕を出して作業していたが、目の前の真っ黒な人が作業している時と伝わってくる感覚が似ている。



しいて言うなら、あの時ほど違和感というか異常感がないことが違いだろうか。




カゴの中に残った2つの石。


意識していた訳ではないがそこに残る2つの石を手に取った。



「これ、もらっていいかな?」


カゴに並べた完成品に不備がないか確認しながら数を数えている彼女に問いかける。




すぐに彼女はにっこりと笑いうなずいた。


それからすぐにコンコンと窓を叩く音が聞こえ来客を告げる。



小さなブラウニーズたちから回収した石と見比べてみれば、違う色だということがすぐにわかる。




「ねぇ…。」


何人目かのブラウニーズを見送ったあと横に立っていた真っ黒な人に声をかける。




「今度の発表の時も協力してくれる?」



そのために少し練習が必要かもしれないけどと付け加えれば、少し考えるようなそぶりは見せたもののすぐに首を縦に振ってくれた。


それから訪ねてくるブラウニーズたちの応対をしながら、真っ黒な人にどんなことをしたいかを話す。



翌朝一緒にベッドに入ったはずの真っ黒な人はいなくなっていて、石が1つしか手元になかった。



「おはよう。」


影に向かってそう言えば、小さく波打ち答えてくれる。



朝と言ってもずいぶんと遅い時間まで寝ていた。




「こういう時はいつも起こしてくれないね。」


ベッドからおりて着替えを準備しながらいうと笑うように細かく波打つ。




それから遅めの朝ごはんを取り部屋に戻ってユイトに手紙を書き部屋の窓から出した。


内容は昨日のお礼とその後大丈夫だったか、それからちょっとしたお願い。



すぐに返事は返ってこないだろうと思っていたが、さて今日は何をしようかと考えているうちに彼女が返ってきた手紙を捕まえて差し出してきた。



「ありがとう。」


暖炉の前で封を切り、中を確認すると思わず笑ってしまった。












「…というわけで週末も色々ありましたが、私は元気です。」



「この子がこんなに化け物に育ったのは先輩のせいでもあると思うんですけど?」


「俺が責任とれる範囲超えてるな。」




月曜日、いつも通り午前中はミーティングがあり週末の発表順を決めるよう言われた。



意見を言う間もなく除外された私と、発表そのものをしないリンカと2人で見守る中で順番が決まっていく。



おおよそみんな想定はしていたようであっさりと決着がつき午前中は終わる。




そして昼食が終わりしばらくした頃に迎えにきたタモンの隣には姉さんも着いて来ていて、


移動しながら主に金曜日の出来事を話した。




「お願いされたから、行っただけですよ。」



「まずお願いされることがおかしい。」


「普通はまず外の人間を頼ることなんてないし、頼られたからってノータイムで出向かない。」



ひとつ言い訳すれば、二つ鋭い返球が返ってくる。





「まぁ確かに人を食うような奴らではないんだよな。」


返す言葉は鋭かったが一応フォローもしてくれた。


「だからって良かったとはならない。」


それはそうだと納得する。




「こればっかりはもう酷い目に合わないと治らないかもな。」


そういったタモンを姉さんが小突く。



「そうならないように先を歩いた私たちが引っ張ってあげるべきなんじゃないの?」





姉さんの標的がタモンに移ったことで、少し精神的余裕が出て横にはいつのまにか真っ黒な人が出てきていた。



二人はまだ気づいていないようだ。


人差し指をたててシーという動作をすれば、真っ黒な人も真似をする。




 


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