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アニミ物語  作者: カボバ
1月編
175/276

11




(まぁ、姉さんくらいしかあそこまで色々言ってくれる人はいないわけだし…。)


翌朝少し遅めの時間に家を出てもらったメモを見ながら目的地を目指す。




昨夜はいつもより遅い時間にいつもより疲れた顔をして帰ってしまったせいで、ずいぶんと彼女を心配させてしまった。


そのせいで余計に世話をやかれ、朝も目が覚めるまでいつもの起床時間を過ぎても起こさなかった。



彼女は私以上に私のスケジュールや何をしようとしているのか把握していると感じる時があるのだが、あながち間違っていないのかもしれない。





(前回来た時は連れてこられただけだったけど、また来ることになるとはなぁ…。)


入学してすぐの頃、コウヤと一緒に連れてこられて病院のような場所。



正直、また来ることになるとは思っていなかった。




コウヤはあの後も何度か来たと話してくれた。


兄と直接会うことはないが、兄と兄のティーの様子を伺うために。



1度、両親が来ているタイミングでコウヤも来てしまったときには酷く罵られるのではと覚悟を決めたそうだ。


しかし予想に反してかけられた言葉はやさしいものだった。




誰がどうやったか、どう諭したかわからない。


しかし最悪の場合、あなたたちのやったことは息子を2人とも1度に失う可能性があったということに気がつかされた。





そう言いながら2人はコウヤに謝ったそうだ。



そのことを話してくれたコウヤは最後に目を閉じながら言った。



「両親から出た言葉は、もう兄さんが戻って来ない前提で話しているみたいで気味が悪かった…。」


それ以来コウヤは両親と会うこともなく、何度か来た手紙に返事をすることもなかった。


兄のもとを訪れるたびにまだ諦めていないティーにひと言だけでも声をかけて帰る。






(さて、どうしたものか。)


建物の入り口まで来たはいいが、ここから先どうしようかと悩む。



姉さんからもらったメモには建物を示す数字と部屋を示す数字だけが書かれている。


しかし中に入ったところでこの部屋に辿り着ける自信がない。




前回入ったときはついて行くだけだったので辺りを見回す余裕があったが、案内板などがあった記憶もない。




(まぁ、ここで立ってても何も進まないか…。)


とりあえず中にいる人を見つけて場所を聞けばいいと軽く考え足を進めようとしたとき服の後ろを何かに引っ張られた。



「…私が倒れたら、私だけじゃなくてあなたも怪我しますよ。」


足を止めればすぐに地面に何かが落ちた音がして振り返ると、リンカのティーがいた。




「ミリア、おはよう。」


少し離れた場所から小走りで駆け寄ってきたのはティーの主人だ。




「おはよう、リンカ。」


「こんなところで何してるの?」


リンカは自身のティーを拾い上げながら聞いてきた。




「先輩に会いにきたんだけど、部屋の場所わからないなぁってなってたところ。」


「ここにいるの?」


「私が場所を間違ってなければ。」


そう言って姉さんからもらった紙を見せる。




「私わかるよ、ついてきて。」


リンカはそういうと建物の中へと入っていったので、あとをついて行く。





「リンカ、ありがとう。」


「うんうん、いいよ。それに1人で歩かない方がいいよ。」


後半はなんでそう言ったのかよく意味がわからなかった。



前を歩くリンカは廊下の中央ではなく、扉のある方を大きく空けるように扉には近づかないように歩いて行く。


それが意識してそうしているのか、それともそういうルールがあるのかはわからない。



でも普段は服の中に入れている自身のティーを腕に抱えたまま歩いているリンカは、後ろ姿からでもわかるほど周囲を警戒している。




「ここ。」


廊下を進む間、結局隣家に声をかけることができないまま目的の部屋に辿り着いた。


目的の場所を教えてくれたリンカはそのまま迷いなく扉を開けた。




「リンカ、ダメだよ。まずはノックとかしないと。」


何が行けないのかわからないと言った表情のリンカが振り返る。



「いいさ、ここの奴らは大人も子供もノックなんてしないやつばっかりだから。」


ずいぶんと久しぶりに聞く声はとても穏やかなものだった。



「お久しぶりです、お元気でしたか?」


「うん、そっちも元気そうだな。」


勉強していたのか読書をしていたのか、それなりに広い部屋なのにベッドと机それから椅子が部屋の隅にポツポツと置かれている殺風景な部屋。


タモンは持っていた本を置き、2人とも早く入れと中に招き入れ扉を閉める。




「アズハから聞いたのか?」


「はい。そのかわりにいろいろしゃべらされました。」


昨日のことは思い出すだけでも少しぐったりする。




「ありがとうな。本当は俺がやらなきゃ行けないことだったけど、ちょっと寝坊しただけでなかなか外に出れない状況になったから。」


「どっちが言っても、結局はどっちも締められますよ。」



姉さんはそういう人だ。




「ところで…。」


タモンは続く言葉を言いにくそうにし、ティーを持ったまま入り口近くに置かれていた椅子に座っているリンカの方を見る。



「クラスメイトのリンカです。部屋がわからなかったので案内してもらいました。」


「そうか、ありがとうな。」



タモンがリンカの方をちゃんと見てお礼を言うと、リンカは嬉しそうに顔を綻ばせどういたしましてと返した。





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