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アニミ物語  作者: カボバ
1月編
169/276

5




「確かに大きい何かに変身したのって入学の時にあった実技試験の時だけかも。」


ユウガが言った。




「積極的にしたいってならないけど、そういう機会があるって確かに大事だよな。」


「問題は、対戦に向かないティーよね。」



この中だと筆頭でミチカ、次にテルマだろうか。




「私がいない間、他のクラスの人たちってどうなの?噛まれない程度にはなったのかな?」


いつの日か見た阿鼻叫喚を描いたような光景を思い出す。




「クラスや入学時期によるけど、比較的早い人たちは噛まれない呼びかけに答えてくれる無視されないくらいはできるようになってるよ。」


それなら大きく成長しているのだろう。



「数を増やす、大きくなる、何かしらを生み出す。ぼんやりそんなことができる人たちもAクラスにはいるっぽいんだよね。」



ティー自身の大きさが変わるというのは、動物のティーだとほとんどのティーが標準的に行うことができるらしい。


なので、ある程度ティーとのコミュニケーションが取れるようになったら最初にチャレンジする課題だと言っていた。




(あぁ、確かにあの3人が好き好みそうで楽しみにしていたのがよくわかる…。)




「ねぇ、ひとつ提案があるんだけどいいかな?」








Aクラスより人数が圧倒的に少ないSクラス。


そのためプロモーションを行う日は複数日ある。



すでに話し声が騒がしい多目的室Aにみんなで入る。


一瞬話し声が途切れたが、すぐにまた今度は声を少しひそめるように始まった。




ふと見たことのある人物を見つけた。




「あの子、先月Aクラスに異動になったんだって。」


「そうなんだ。元気そうでよかった。」


ミチカが小声で教えてくれた。



4人ほどでかたまっていた女子生徒の中の1人、ホオリに小さく手を振る。


少し戸惑いはあったようだが、手を振り返してくれた。




「さぁ、みんな準備はいいかしら?」


この場の微妙な空気にユノカの元気な声が響く。




今回の審判件立会いはユノカとノオギ、それからアマジのようだ。



「Sクラスは誰から行くか決めてる?」


そう言われてすぐに挙手する。




「ルールは決めた?」


「はい。」


ユノカとやり取りしている間に他のみんなは部屋の隅に移動する。



SクラスとAクラスのプロモーションでは挑戦される側が内容を決めることができる。


さすがにただの殴り合いなどは許可が降りないだろうが、そこは事前にノオギに相談済みだ。




「私からコレを取ることができたら私の負けでいいです。」



最近気にする余裕もなかったので随分と髪が伸びた。



少し高い位置で縛りその上から真っ赤なリボンを結ぶ。


動いても簡単には外れないだろうが、どちらかの端を引っ張れば簡単に解くことができるだろう。




「そう、ルールはそれでいいわね。」


ユノカがこちらとAクラスの人たち、両方に確認するように声を上げた。


誰も異論を口にしない。




少し話し声が大きくなる中でも、冷静な判断ができているのは2パターンのようだ。



何人かはティーに話しかけているし、もう何人かはこちらの様子をうかがっている。



(チャンスがあるとしたらこのうちの誰かかな…。)




「それじゃあ、最初は誰から行く?」


「先生。」


さぁ希望者を募って始めようとしたユノカに待ったをかける。




「ミリアさん、どうしたの?」


目だけを動かしてAクラスの人たちを見る。




(18人…。まぁ多いけど、楽しめる人数かな…。)



「全員で。」


事前に相談していたノオギ以外の2人、そしてAクラスの人たちがそれぞれに驚いた顔をする。




「私、帰ってきたばっかりで身体動かしたくてうずうずしてるんです。だから全員でかかってきてください。」


あの3人が楽しみだと言っていたのがよくわかる。


きっと今、顔がニヤけているだろう。



そしてその顔をどうとらえたのかAクラスの人たちはさらに驚いた顔をしている。



「とりあえず、10分。そのあとどうするかはまた話し合いましょうか。」


ノオギの言葉で話はまとまる。




「それじゃあ、ミリアさん準備はいい。」


「いつでもどうぞ。」



開始の合図より少し間が空いて室内には様々な音が響いた。






「まぁ、結果はわかりきってるよね。」


コナミが退屈だと言わんばかりの声でそう言った。


10分後に開始時と変わらぬ場所でリボンどころか袖ひとつ乱すことなく立っていた。




まず物理的に距離を縮めようとすれば、足を取られ転ぶ。


次にティーに指示を出して奪取を狙うも、影をちょっと伸ばし死角からつついてやればティーの集中力は持たない。



そんなことを1度もしくは2度3度と繰り返せば、大半のティーが戦意喪失し主人の指示を無視する。




Aクラスは圧倒的に動物のティーが多く、数人居た物のティーもコナミほど量と精密な指示はできておらず簡単に防ぐことができた。





「せめて、走って逃げるくらいのことはしたかったかな。」


実際手を少し動かすことはあっても一歩も動かなかったのは残念だった。




「ミリアさん余裕そうだけど、希望者だけで2回戦やる?」


Aクラスの人たちにユノカが聞いたが、誰も返事をしない。




「コウヤ。」


Sクラスのみんなが見ている方を見て呼びかけた。



「やろうか?今日は1回くらいとれるでしょ?」


「よし、昨日のリベンジだ…。」



そう言いながら立ち上がるコウヤ。



そして、気合十分と言わんばかりにコウヤのティーが鳴き声を上げた。




 

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