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「ミリア、おかえりー!!」
「ミチカ!待って、止まって!!」
大きな音と共にミチカが床に転ぶ。
当たり前だが、突き飛ばしたわけでもハグしようとしたミチカを避けたわけでもない。
「はい、と言うわけで今日のクラスミーティングはミリアがちょっと面白いことになってる話からはじめます。」
直後に入ってきたノオギが淡々と言う。
「つまり、触れれないし触れられないと。」
「簡単に言えばそうなるね。」
ノオギがみんなに伝えたことを確認するようにコウヤがもう1度聞いてきた。
「それって生活できるの?」
「今のところ人だけだからなんとかなってる。」
「本当だ。ティーなら触れるんだね。」
不思議とか困惑とかをいったん置いておいて状況が面白いとでも言わんばかりの声で聞いてきたのはユウガだった。
そして、自身のティーを使って触れてきたのはリンカだった。
(見た目とかではなくティーはティーってことなのかな?)
リンカのティーは人の腕だ。
一時期は勝手に12号館の中を徘徊していたが、今はリンカがしっかりと両腕で抱えている。
「俺のは…、ダメか。」
言いながらコナミは机の上にペンを立てた。
伸びるインクは体を通り抜ける。
そして後ろの壁にペチャッと小さな音を立てて到達してからペン先へと戻って行った。
「ミリア自身がティーになったってわけじゃないんだよね。」
シロイヌのティーに確認をとるようにテルマが言う。
ティーは1度大きく吠えたあと、興味を失ったように一つ大きくあくびをした。
クラスメイトはこれで全員。
自身も合わせて7人、メンバーに変わりはなさそうだ。
「とりあえず、みんな席に着いて。情報共有はミーティング後に気が済むまでやってください。」
ノオギに促されいつも自分が使っている席に向かう。
(ここからみる光景もずいぶんと久しぶりだなぁ…。)
向かって右側3列目。
前はひとつ空けて、1番前の列にミチカ。
その隣のブロックにユウガ。
斜め後ろのブロックにはテルマで、1番離れたブロックにはコウヤとコナミとリンカが座っている。
広い教室を贅沢に使っている。
「ミリア以外には何度か説明しましたが、あらためてもう1度説明します。まずは今月末は実技試験が実施されます。ティーの能力を発表してもらう場でこのクラスは最終日31日の予定ですが、事前にどんなパフォーマンスを行うかを箇条書きでもいいので提出してください。」
そういえば入学してすぐの頃に長期課題、自身のティーの研究を発表をレポートと実技で行うと説明を受けた。
前回10月はレポートだったので、今回はパフォーマンスだ。
「次にプロモーション。申し込み期間が終わって今週から実施期間に入りますが、例年プレパートリーのAクラスはほぼ全員が申し込みをしています。」
プロモーションと聞いてパッとなんのことなのかわからなかったがとりあえず話を聞こう。
「勝敗によってこのクラスは失うものも得るものもないですが、今後の評価点には関わってくるので決して気を抜かないように。」
特に大した説明がなかったと思っていたら、ノオギが指を動かし薄い冊子を1つ飛ばしてきた。
受け取れば表紙にはプロモーションについてと書かれていたので知りたいことはこれを見れば解決するのだろう。
「最後にレクリエーションですが、今月中は試験のこともあるので大掛かりなことは控えてください。」
先生たちも忙しいということだろう。
そこからさらに小さな注意事を2つ3つ。
久しぶりのクラスミーティングはあっという間に終わった。
「つまり、特権をもらうために別のクラスの人に勝負を挑むと。」
プロモーションについてわたされた冊子を見ながら、他のみんなから補足説明をもらう。
特に用事らしい用事もないので、みんなで1212室に移動する。
先ほどみんなとは別でもらった冊子に一通り目を通した。
授業や課題で出される評価は先生たちが求める力があるかどうか。
プロモーションは、私が持っている力の得意なことを見てくださいと自分自身でアピールする。
そのために年に2度、申請式で再評価の機会が与えられる。
「特例を除いてBCDの中で自分が所属しているクラス以外の人、AクラスはSクラスの人と対戦ってかたちでやるんだ。」
もちろん複数の先生たちが評価のために審判として立会う。
万が一にも大きな事故が起こってからでは遅い。
「確かに私たちは失うものも得るものもないね。」
プロモーションで目覚ましい成績を出すと景品が用意されている。
寮の移動、クラスアップ、そして単純な評価点アップ。
入学してすぐは複数人で1つの部屋。
1人部屋に憧れるのは当たり前だ。
BかDまでのクラスは月曜日から金曜日までほぼ隙間なく授業が入れられている。
Aは約半分、Sは数時間。
学習面に関しては課題提出とテストでの確認が主になっていて自由な時間が多い。
学習方法など合う合わないは別としても、うらやましく見えてしまうのだろう。
単純な評価点アップは苦手な面では点数が期待できないので、技術面で補わせてくださいというもの。
あまりにもな場合を除いて進級の時などにあと一つ評価材料がほしい場合などに使用される。
Sクラスに所属しているとそのどれもが魅力には欠ける。
挑戦することに意味があるとは言うが、挑戦される側はいまいちヤル気が出てこない。
「オベロさんが言うには、このイベントは楽しむものだって。」
コウヤが言った。
「挑戦者を迎え撃つ、相手は自分たちを引きずり落とすために必死になって向かってくる。そういうものだって。それに…。」
そこでコウヤが言いにくそうに一度言葉を詰まらせた。
「ティーを思う存分使えるチャンスってめったにないから、自分にもティーにもストレス発散になっていいって。」
「あぁ、あの人なら言いそう…。」
思わず同意してしまった。
実際にはもっとめんどくさい内容がだらだらとあるんだけど、
ここで必要なのはこれくらいかなぁとか思いながら話させてます。
その時が来たらまた追加で書くだろうさ、
だって年に2回ある行事だもの…。




