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あとがきが騒がしい…
(体温を感じない…?)
少しでも気持ちに余裕があるうちに今自分に起こっていることを確認する。
まず飲み物。
人形にお願いして出してもらったが、全然飲みたいという欲求が出てこない。
カップを持って無理やり口の中に流し込もうとしたが、唇に触れる直前で気持ちが強く拒否をする。
もう1日近く何も飲み食いしていないのに、それでも欲しいと思わないのは明らかに異常だ。
強く意識をして両手を合わせる。
ゆっくり時間をかけて行ったおかげもあって、今回は崩れることなく触れられた。
でもそこで不思議なことに気付く。
気のせいかもしれないとしばらくの間合わせた指をずらしてみたり指を絡ませたり握ってみたりした。
そこで違和感の正体が、体温を感じないと言うことに気付いた。
触っている感触はある。
しかし肝心の伝わってくる感触がこれは人の皮膚を触っているのかと疑問を寄越してきた。
他人の手というのも何か違う。
あくまでも触っている、触られているというのはわかるのだから。
そうやって考えていれば、ふとした瞬間に指の形が崩れる。
(何がしたいか、何が起こってるのか。もう少しわかりやすく教えてよ…。)
気持ちの整理ができず八つ当たりのようなことを考えながら肘掛けの方に倒れる。
窓の外を見れば、空は夕暮れの色を薄く広げ始めていた。
考え事をしているうちにあっという間に時間が過ぎたようだ。
あっという間に過ぎたのか、時間が経つ感覚すら燻らされているのか。
人形がまたブランケットを持って、目のない顔でこちらを覗き込んでくる。
「飲めなくてごめんなさい。」
それだけ言えば人形はブランケットを置き、冷め切ったお茶を片付け始めた。
食器の触れ合う音が離れていきその後に続いて水を流す音などが聞こえていたがやがて部屋の中は耳の痛くなる静寂が戻ってきた。
夕焼けの色が空の向こうに引っ張られていく。
そのうちにまた庭の炎の灯りが部屋に影を作り始める。
視界の中に黒い粉がほんの少し舞っているのが見えた。
手を伸ばし頭を触れば、ブワッとその量を増やし周囲に舞う。
ギュッと目を閉じてしばらくしてから開ければたくさん見えていた黒い粉のようなものは消えていた。
しかしまた舞い始める。
今度は体を少し動かしただけで視界のほとんどを覆うほどに舞い始めた。
(いっそ全部散らしてしまったらどうなるかな…。)
ふと考えた事に遅れて恐怖心がやってくる。
両手で顔を覆い自分が考えていたことに対して自問自答する。
そうなってしまった時、戻ってこれる保証はない。
その不安があり、その答えは誰も教えてくれないからこそ恐い。
「ミリア、大丈夫か?」
「先輩…!」
顔から手を離し見上げようとした。
しかし腕を動かした瞬間、両方の手のひらが黒い霧状になって消えた。
ドッと早くなる鼓動に急かされるように口で大きく深呼吸をする。
ゆっくりと手のひらが元の形に戻ってくる。
それでも治らない鼓動に再び頭を抱える。
「ミリア、そのままでいいから聞いてくれ。」
タモンは左斜向かいのソファーに座ったのだろう。
目を開けて確認することはなかったが、声が移動しながら話を続ける。
「今ミリアはきっと自分がいなくなりそうな気がして、それが怖くて仕方がないんだろ。」
そう見えているのかそれとも何かしら情報があるのかわからないが言っていることはあっている。
「ティーが今まで無意識に引いていた境界を超えてきて、自分自身がティーと同じ存在になるような感覚。でもそうなったら自分自身はどうなるんだろうって不安。」
今まで漠然と負っていた不安が言葉で言い表された。
しかしそれで安心とはならず、より理解できる形での恐怖になる。
「俺のティーを説明する。」
急に話が変わった。
「登録名は接続。他人にティーを繋げることでさまざまな効果を発現する。過去に1人も居なかった世界でただ1人、俺だけの能力だ。」
顔を少しあげ目を頑張って開きタモンの方を見る。
片方の袖を捲り上げ、以前にも見せてもらった刺青のような黒い線のうち1つを指先で摘む。
皮膚が裂けるわけでもそこに事前に埋め込まれていたという風でもなく、1本の線が出てきた。
「効果はわかりやすいものから入力と出力。俺が考えていることを直接伝える事ができるし、逆に読み取ることもできる。思考に限らずさまざまなものをやり取りできるが、線の強度には限界がある。」
単純にパイプの役割というわけだ。
「次に同期。さっきの入力と出力を同時に行って均等にする。さっきと違うのは存在そのものを限りなく均等にするから、一時的に繋がった相手のティーを使うことも可能だ。」
お互いをそれぞれの情報として足して均等に割るような感じだろうか。
「あとはハブ。」
そういいながら1本の線を出している方の腕を少し揺らす。
すると腕だった物はどんどんとその形を変え、たくさんの線が集まって解けるように形を崩していった。
「俺を中継地点にして何人でも何十人でも繋げてその効果を発現する事ができる。」
1体1のやり取りではなく1対多数も可能という事だろう。
「ブースター、バッファー、ゲート…。いろいろな事ができるが、今は必要ない。」
それだけ時間をかけて手探りで使い方を探してきたティーだという事だろう。
「俺が今からミリアに使おうと思っているのは、バックアップ。どんな状態になっても必ずミリアを人の形に戻す。」
解けていた腕を元の形に戻し、再び1本だけ出た線を掴んで立ち上がった。
座っている正面までくると膝をつき線を持った手を首筋まで持ってきて止まった。
「もし嫌なら言ってくれ。」
突然何を言い出すのだろうと思ってしまい、ほんの少し首を傾げる。
「繋がってしまったらその間だけ俺はミリアと同じものを見る。知られたくない事も頭に浮かんだ瞬間俺にも伝わるし、ティーと何があったかも知ってしまう。」
情報はノートとペンのような片方が動かなければ成立しない関係ではない。
常に新しい事が足されて行ってそれを止めることは不可能だ。
これから何が起こるかわからないが、それを知られてしまう事への懸念を今さら確認している。
「先輩は優しいです。」
タモンが何を言い出すのかと目を見開く。
わざわざ自分のティーがどんなもので、これから何をしようとしているかまで説明してくれた。
そしてデメリットとも言えない事まで言って止めるチャンスをくれた。
「今までたくさん助けてもらって、いろいろ話もしてくれた。そんな先輩が最善だと思って使ってくれようとしてるティーを、それっぽっちのリスクで断るわけないじゃないですか。」
タモンの手に両手を添える。
その手が震えているように感じたが、果たしてどちらの手が震えているのか。
「ちょっと私の中で駄々こねてるじゃじゃ馬に挨拶してきます。あとのことは、よろしくお願いします。」
手を押しタモンの手を首に当てる。
タモンの手以外に何かが触れたという感覚はなかったが、途端に触れた部分から根を張るように何かが体内に入ってくるのがわかった。
「…あぁ、任せておけ。」
その返答を聞いた直後、頭痛とは違う無理やり眠りに引っ張られるような感覚が襲ってきた。
抗えない眠りもティーを使うことで起こる気絶も体験したからこそ、どちらとも違う感覚に戸惑いながら抵抗はしなかった。
やっと出せたー
どのキャラよりも早くに固まってたのになかなか出せなったティー
最初は「いらすとやにあるインターネットの神様」的な最近の人の生活が変わったことで出てきた比較的新しい信仰から生まれた感じにしようかなぁと思ってたんだけど、
色々見てると古い神話やらなんやらにも似たような存在がいる…。
それこそネットどころか電気やらなんやらもないのになぜかいる…。
そしてそのほとんどがミッシングリンク…。
(神話の中にいるお前いつの間に誰から生まれてきたんだよ枠)
調べているうちに面白くなって、一枠につめこみました。
そのうち過去話とか書ければいいなぁとは思うけど、
今のところ予定なしです。




