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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
152/276

42





「何かありそうだったら、窓ぶち破ってでもすぐに逃すからね。」


「それできちゃいそうでウケる。」


そう笑ったのはグルコだったが、笑っているのは1人だけだった。




「ミリア、この人たちは色々とすごい人たちだけどその何倍も変な人たちだから危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ。」


「わかりました。」



「やっぱりひどいな。」


クロルがため息のようにそう言った。




「そういえば、オベロさんはどうしてここに?」


今頭の中で予想できているそれぞれの接点のなかでオベロだけが唯一浮いている。




「僕も拐かされた。」


「おい。」


ロジルがツッコミの言葉を入れるが、オベロは気にせず続ける。



「この人たち誰が最初にミリアに会うか勝負してたんだよ。」


そこで先に捕まり、話をすれば面識があることもバレて連れてこられたと言うことだった。




「ちょっと説明が難しいけど、ミリアに会う確率を上げるためにここに居たんだ。」


条件はわからないがそういう能力ということだろう。



「その賭けは私の勝ちね!」


そう言って4人で何かをやり取りしている間、オベロがこちらにやってくる。





「ちなみにこの人たち、なんの集まりだかわかる?」


「話に聞いたので予想はできます。」


「その忠告をした子は後から褒めなきゃね。」


「ぜひそうしてあげてください。」


事前に漠然とだが教えてくれた2人には感謝だ。






「俺たち4人はもともと神につかえてその言葉を代弁するべきティーを持った。」


急に離し出したのはロジルだ。




「でも、人とは少し変わったきっかけからトランプに選ばれて転校までした。」


次の言葉はハング。




「もともと神に一生を耳を傾けるのもごめんだったし、これ幸いと人生楽しんださ。」


タバコに火をつけながらクロルが言った。




「今じゃ4つの街をそれぞれ支えるいい大人。そんな未来、あなたの年齢の頃なら想像もできなかったわ。」


これまたおもしろおかしそうに言うのはグルコ。





「俺たち7の数字を持つ4人。」


「生まれは他人。それでも関連を持つ数奇な4人。」


「だから楽しくおかしくやってるさ。」


「面白いことがあったら、いつでも教えてね。」



4人の視線がこちらに集まる。



その時、全身に感じ体を震わせた感覚がなんだったのかわからない。



しかしそれを敵意と認識し波打ちながら広がる自身のティーを両手で強く床を叩くことで止める。


ティーは意思を察してかスルスルと足元の元あった影の大きさまで戻った。




「自分に向けられた気配に敏感に察して、護ろうと行動できる。」


「それでいてちゃんと止めることができる主の冷静さ。」


「悪ふざけが過ぎたな。」


「ごめんなさいね、試すようなことをして。」



4人の視線がそれぞれ外れると全身に纏っていた緊張も解けいった。




「やっちゃえばよかったのに、この人たちたまには痛いめ見ないと反省しないって。」


何もせず見ていたオベロがそう言った。



「できるできないは置いておいて、さすがにここで揉め事起こしたくはないですね。」


「2人ともなんか怖いこと言ってる?」



「それよりもそのティー何?」


ワクワクした声できいてきたグルコ。



オベロのティーは相変わらず離してくれる気がないので、今度は集中して影を広げる。


そして影でできた腕を一本出して軽く振ってみる。



「私のことを1番大切にしてくれて、いつも護ってくれるティーです。」


今度は4人の視線が影の腕に集まる。




「ちなみにさっき君がティーを止めなかったらどうなってたの?」


ハングが疑問を口にしたので考えてみる。





「一度中に入れて、どこか離れた場所に吐き出されてたんじゃないですかね?」


やらなかったことを想像するのは難しい。



何よりこちらのお願いは聞いてくれるが意思疎通とまではいかないから余計に想像できない。




「これ、中に入れるの?」


興味津々なのはロジルとグルコだ。




「許可と繋がりのない人が入るとかなりヤバいらしいですよ。」


オベロの補足に2人の興味が少しそれた。




「その気になれば部屋どころかこの建物全部飲み込めるよね。」


「さすがにこの大きさはやったことないですけど、できると思いますよ。」



今までで1番大きく広げたのは12号館の多目的室だが、2つある多目的室を飲み込んでもまだまだ広げ足りないとさえ感じたことがあった。





「そうなったら4人ともどこに行ってたんでしょうね?」


オベロのその言葉は4人に対する脅しだった。






「悪かった、噂は聞いてたがなんとでもなるだろうと思ってやり過ぎた。」


そう謝罪したのはクロルだった。




「あの子は一切抵抗できなかったらしいですよ。」


オベロの言うあの子が誰を指しているのか。



「その話は今よそう…。」


ハングの言葉に話題は沈黙をもって流された。




「でも奇妙なティーだね。」


その沈黙を明けさせたのはグルコの興味だった。





「動物のティーが懐いてるってことはそう言うことだろ。」


「他人のティーに好かれるってどんな感じ?」


グルコの言葉に少し考える。




「これは好かれてるんですかね?」


相変わらずオベロのティーは自身の足元に抱くようにして立ち上がることを許してはくれない。




「たくさんの神様がいるってことは、その中で仲がいいやつもそうじゃない奴もいる。」


神話なんていうのはわかりやすく言えば得意不得意と仲不仲が影響を与えて今の世界が作られているなんて話が多い。



「そんな神様の1部であるティーが主以外に尻尾を振って尚且つその言葉に耳を傾ける異常さを知った方がいい。」


そう言われてもとは思ったが言い返しようがなかった。





「それを本人に言うのはちょっと酷くないですか?この子達は好意を一方的に向けられてるだけですよ、自身のティーからも他人のティーからもね。」


「それで大きな事件が起きてからじゃ遅いって話だ。」




 

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