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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
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(確かこの階にも共有スペースがあったはず…。)


来た時はまず自分の部屋にたどり着くことが最優先だったためスルーしていたが、2つ隣の部屋があるべき場所の入り口には扉がなかった。




歩いて近づき誰もいないか耳をすませてみるが何も聞こえない。


さすがに誰もいないことを確認するためにティーを広げるのは、誰かいたときに大変迷惑なのでやめておいた。



中には入らずそっと外から部屋の中を覗き込む。


中は大きな窓に複数のグループが同時に過ごせるように配置されたソファーやテーブル。


それから壁沿いに本棚が見えるが置かれている本はスカスカで、いいものがありそうな気配はない。



冬が始まる前に訪れた双子の花姫の部屋を思い出すような部屋に誰もいないことで安心していたせいか、それとも悪意も敵意もなかったせいか気が付かなかった。





「…捕まえた!!」



女性だとしても高いと表現したくなる声と共に後ろから抱きしめられて、自分でもびっくりするほど体が跳ねた。



「あぁ、暴れないで。あなたに悪さしたいわけじゃないのよ。」


心底楽しそうな声の主はガッチリ掴んで離してくれない。




「クロル!回収してちょうだい!!」


少し張った声で呼びかけたのは聞いたことのある名前の相手だった。



パチッと音がしたかと思うと、先ほどまでいた場所とは違う部屋にいた。




「やぁ、ミリア。君も捕まったんだね。」


その聞き覚えのある声はオベロだった。



オベロのティーが寄って来る。


今はいつものように手に乗るサイズではなくこの場にいる大人たちよりは小さいが私からは見上げるほどの大きさだった。




ある程度近寄ると首をこちらに向けてのばして来たので擦り寄られるのかと思ったら、肩のあたりの服を引っ張ってきた。




「やだ、なになに?」


突然のことに後ろにいた人物が驚き手を離す。



そのままズルズルと引き寄せられティーの足元まで来るとそれで安心したようだ。




「手出さないほうがいいですよ、今の機嫌だと僕でも間違えなく噛まれます。」


綺麗に揃えられた足の上に座らされ、そのまま卵を抱えるように包まれた。




「クロルさん、お久しぶりです。」


その部屋に元からいた人たちの中でオベロ以外に知っている人物がもう1人。




「元気そうで何よりだが、君は今の状況にもっと危機感を持った方がいい…。」


眉間にこれでもかと言わんばかりに深く皺を寄せたクロルが言った。




「もう大丈夫だと思ったら離してくださいね。」


上を向いてオベロのティーにそう言えば、振動するような鳴き声で同意を示してくれた。



「今すぐ出てくる気はないと。」


「ここが1番安全と思うので。」




部屋の中には6人。


自分とオベロ、クロル以外は面識の無い人物である。




「いいじゃん、その歳で今すぐここから逃げ出さない肝がすわってる。」


オベロの横に座ってそれまで何も言わずこちらを見ていた男性がそう言った。



「俺はロジル、俺は君のやり方を支持するね。」


「ありがとうございます…?」



この場合の返答がはたしてあっているのかよくわからないうちに返答したため変に語尾上がりの感謝になった。




「まぁそこから引き摺り出す方法がないわけでもないが、そうなったら無傷ではすまなそうだ。」


そう言ったのは今までクロルの横に座ってこちらには背を向けていた男性だった。



「初めまして、新しい後輩。俺はハング。」


「初めまして。」


こちらに顔を向けることなく挨拶を交わしたので、次に会ってもわかるだろうかと不安になる。




「私はできれば、出てきてお話ししたいけどなぁ。」


そう言って横にしゃがみ込みこちらを覗き込む女性。



「しばらくしたら安心してくれると思うので、それまで待ってもらえると助かります。」


無理に説得するよりも、ちゃんとこちらの言葉を理解してるなら納得してもらった方が後々起こる面倒も少ないだろう。




「そっか、ならそれでいいや。私はグルコ、よろしくね。」


グルコはそう言ってソファーの方に行ってしまった。



「気が済むまでそのままでいいからね。」


オベロがティーにそう言う。




「それはないだろう、俺たちは新しい仲間と交友を深めたかっただけなんだからよ。」


「それで9月に何をやったか、もう忘れたわけじゃないですよね?」


いつも楽しそうに喋るオベロの声色が今日は平坦に聞こえる。




「あれはすっごく怒られたね。」


「マジで半端なかったな。」


「まぁ、生きてたしいいんじゃね?」


「事故だから。」




そこまで言われるとは一体何があったのだろうか。




聞きたいけど、聞きたくないと言う矛盾の感情。








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