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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
143/276

33







「ミリア、ちょっと出かけたいから、付き合ってくれる?」


ユイトはそう言って立ち上がり手を引いてくる。





ハウニを1人にするための口実だろうことをすぐ察してユイトについて行く。



と言っても下の階の共有スペースに行けば誰かに会ってしまう可能性があるため、ユイトが滞在している12階に移動した。






ユイトのティーがここに着いてからやけに擦り寄ってくる。



「あぁ、きっと疲れたんだ。」


ユイトはそう言って部屋の奥、プライベートエリアのさらに奥にある部屋に案内してくれた。




(何でも作れるとは聞いてたけど、本当に何でもあり…。)


屋内庭園とでも言えばいいのだろうか。




水を張った床、あちらこちらに設置された高さの違う水盆からは絶え間なく水が溢れ流れを生んでいる、



中央を横断するように橋がわたされ奥には長椅子が置かれている。





「僕は別に必要ないからティーが安らげる場所にしたんだ。」


部屋を見回していたところでユイトが捕捉してくれた。




ユイトのティーが離れたと思ったら水に飛び込み泳ぎ始めた。


これが本来の姿なのだろうが、何か不思議なものを見たような気分になる。



「何か飲み物でも用意する?」


「いいえ、大丈夫です。」



案内されるがまま1番奥の長椅子に腰掛ける。







「聞いてもいいですか?」


「…いいよ。」


何を聞こうとしているのかユイトはすでにわかっているように返事した。




「ティーは何を見たんですか?」


ほんの少しの間、いったい何を見たのか。


残念ながら今知っていることだけでは答えに辿り着くことはできなかった。





「それを聞いてどうする?」


質問に質問で返され思わず驚く。



「知られたくないことですか?」


「うーん、できればそうしたい。でも、必ず知ってしまう時が来るなら今言ってしまいたい気持ちもある。」


横に座ったユイトはたまに水面から飛び上がる自身のティーを見ながら言った。






「例えばさ、ほんの少し先の未来が見えるって言ったら信じる?」


「それが、ティー由来なら。」


それなら別段驚くこともしないかもしれない。





「前に僕のティーが使うのは豊穣の力って言ったけど、本当は少し違うんだ。」


ここで一息。





「わかりやすく言えば豊穣、でもその力は別に植物でも生き物でもかまわない。生きてるものなら選ばないのが俺のティーの力だ。」



部屋のどこかで大きな水音が鳴る。





「ティーが最も好むのは生まれてきた瞬間。そして今にも消えそうだけどかろうじて灯ってるその輝き。」


ここまでの言葉で何となくこのあと続く話が理解したくなくとも頭の中で理解し始めた。





「僕のティーが見せてくれる未来は、それの火が消える瞬間。でも今すぐってわけじゃなくて、数ヶ月から数年先の事の場合が多い。」


どんなに元気な人でも、ある日突然体調を崩しそのままということはある。





事故や他者からの要因ではなく見ることも感じることもできなかった。



そんなことは少なくない。





「それだけの猶予があれば、回避できる可能性ももちろんある。だから学園中を回っていろんなものをティーと一緒に見てるんだ。」


初めて会った時、12号館で見たと言われた。



それはたまたま目撃したわけではなく、植物の調子を管理しながらティーが未来を見てしまう人物が居ないか一人一人気付かれないように見ていたということだろう。





「それじゃあ、あの子も…。」


「うん、今のバランスが悪い状況が続けば今の環境だと大人になるのは難しい。」



「そうだったんですね。」




だからユイトはハウニを呼んでほしいと言い、治療法まで示してくれた。





 

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