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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
139/276

29





2日もすればミルはすっかり熱も下がったようで、ハウニに手を引かれながら図書室にやってきた。


ハウニは元気になった途端行くと聞かなくてと申し訳なさそうに言うので大丈夫だと制した。




「おや、その子はミリアの新しいお友達?」


ミルと一緒に絵が多めの本を読んでいると、エイタがやってきた。




エイタのティーがこちらへ主人よりもひと足先に飛んでこようとしたが、一瞬体を震わせギリギリ手の届かない机の上に降り立った。



しばらくコチラをジッと見たかと思うと羽を膨らませ全身を振動させるような唸り声を上げながら時より嘴をパチパチと鳴らしている。




(これは私じゃない…。)


飛んでいる時は確かに目が合っていたのに、今は目線が合わない。




「…ダメだよ。」


飛び掛かろうかとするようにその場で足踏みまでし出したので、手でティーの視界を覆うようにしてゆっくりと声をかけた。



一瞬ハッとしたように姿勢を正し、そしてキョロキョロとあたりを見回したかと思うと飛び上がりエイタの方へと戻って行ってしまった。




「お部屋に戻ろうか。」


ミルは何をされたかわかっていなかったが、それでも怖かったようでかけた言葉に急いでうなずく。



「またあとで。」


「うん、またあとで。」


エイタに短い挨拶をしたあとミルの手を引いて部屋を出る。





よほど怖かったのだろう託児室に着いた後ミルはしばらく抱きついた状態で離れなかった。


いろいろ声をかけたが首を横に振ったり時々小さくくぐもった声を上げるだけで離れようとしない。



昼時になり探しにきたハウニが引き取るまでその状態が続いた。


短く事情を説明して、あとのことをハウニに任せる。




エイタを探すべきかもう部屋に戻ってしまおうかと考えながら1階を歩いていると、3人に遭遇した。



「やぁ、ミリア。」


「こんにちは。」


見たところ3人ともこれから出かけるようだ。




「学園から出発した組がもうすぐ到着するみたいだけど、ミリアも一緒に行く?」


ここに居ない面々とタモン以外がまもなく到着するのでその出迎えに行くようだ。



(到着予定の人で知り合いなのってユイトさんとバラ姫様くらいだしなぁ…。)


断ろうと考えていると3人のティーが一斉に飛びかかってきた。



オベロとエイタのティーは飛んで肩にとまり何か全身を擦り付けるような仕草をして、スオウのティーは足を登ろうとくるぶしのあたりに手をかけている。




「ちょうどいいや、行かないならその子たちをしばらく見ててよ。」


さて何を訴えているのかと戸惑っているとエイタから何かを耳打ちされたオベロが言った。



「外は寒いし目立つからさ、僕たちが出かけてる間ちょっとの間面倒を見てて。」


引き離そうにも服の破れない絶妙な力で抵抗されてどうしたものかと思っていたら、オベロがそれがいいと言わんばかりに提案した。




「それでこの子たちが納得するなら。」


おそるおそるそう言いながら確認するが、誰も異論はないようだ。




「それじゃあ、行ってくるね!」


オベロがそういうとギャウっと短い鳴き声を上げ主人を見送った。




3人が行くのを見送ったあとこの目立つ状況から早く脱却しようとスオウのティーを抱える。



(とりあえず2階でいいか…。)


カフェスペースに座れば常駐のスタッフがすぐに飲み物のリクエストを聞きにきてくれる。





「お久しぶりだね、お嬢さん。」


撫でつけるたびに静電気なのか少し逆立ってしまうスオウのティーの毛並みをなんとかしようとしていたら後ろから声がかかった。




「アダンさん、お久しぶりです。」


尻尾の大きな青い毛並みのビーバーを連れたアダン。


普段は8時の街にあるギルドでインテリアプランナー兼職人として働いている彼も古参のトランプだ。




「いつからティーたちの保育園をするようになったの?」


「一時的に預かってるだけですよ。」


フクロウにクマにドラゴンを連れている様子を保育園というのはあまりに奇妙すぎないかと思ったが、そう言われてしまうのも仕方ないと思えるほど奇妙な光景なのは本当なので飲み込んでおく。




「懐かれるからってそのままにしておくのもよく無いんだけどね。」


飲み物が運ばれてきて、一言断りを入れてからアダンも座る。



「コチラにはいつ到着されましたか?」


「昨日だよ。時間が遅かったから会うのは君が最初さ。」


「そうでしたか。」


アダンのティーはオベロやエイタのティーが何やらちょっかいをかけているが我関せずと言わんばかりにそっぽを向いた。




「それで、君にティーを預けてその3人はどこに?」


「もうすぐ学園を出発した人たちがこちらに到着するとのことで、出迎えに行きました。」


「君は行かなくてよかったの?」


「私が行って変に気を使われるのもよく無いので…。」


それに知り合いも少ないですしと付け加えれば、2人で苦笑いするしかない。




「ここも人が増えたから今日来る組はまとめて違うホテルに滞在することになるだろうし、会うのが気まずいなら行かなくてよかったかもね。」


顔を合わせたわけではないが、アダン以外にも昨日一昨日でちらほらと到着している。




「まぁ、問題の先延ばしには変わりないですけど。」


「君はいろいろ抱えすぎなんだよ、わかってる?」





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