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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
137/276

27





昨夜スオウがティーを待たせていた場所とは反対に出る扉を開けるとホテルの建物裏手に出た。



ゆっくりと降りてくる大きなティー、それにともなって起こる強い風に飛ばされないように踏ん張る。




「今年も空の旅は快適でしたか?」


スオウが声を張って問いかける。



「今年は雪雲も少なくてとっても飛びやすかったよ。」


ドラゴンのティーから降りてグローブやら何やらと細かな装備品を外しながらオベロが答えた。




「今年は1人なんですね。」


笑いをこらえるような声でエイタが問いかけた。



「一応誘ったけど、昨年のでこりごりだったみたい。」


オベロもまた笑いながら答える。



オベロのティーが首を伸ばしこちらを見る。


自分の顔よりも大きな顔がズイっと近づいてきて、触れるか触れないかのところで擦り寄ってきたので手を伸ばす。





「空の旅、お疲れ様です。寒くなかったですか?」


ひんやりと冷たい体表から喉を鳴らす振動が伝わってくる。




「あれ結構見てて怖いよな。」


「口を開けたらパクッと胸くらいまで一口でいけそうだよね。」


「人の肉の味覚えるのは勘弁してほしいなぁ。」


スオウ、エイタの言葉にオベロが笑いながら付け足す。



ドンっと背中に衝撃を感じたかと思い振り返れば、いつの間にか大きな姿になっていたスオウのティーが居た。



「2人とも賢いから噛まないですよね。」


喉を鳴らす振動が両方から伝わってくる。




「これはあれだ、動物系主人が1度は通るティーによるちょっと洒落にならない怪我をしないタイプだ。」


「そういえばタモンも目があったティーは噛んだりしてこないって言ってたなぁ。」


「ティーたちからはどう見えてるんだろう?」


エイタの言葉に他の2人がうんうんとうなずく。



そうしている間に強い風が吹いて体を震わせたオベロのティーが小さくなり主人の元へと飛んで行った。



「中に入ろうか。」


オベロの言葉にみんなでうなずいて足早に建物の中へ戻る。






「先輩が来たってことはみんなもそろそろ到着する感じですか?」


手続きを済ませたオベロと一緒に2階のカフェスペースで話すことになった。


2人のティーに膝上を占領される状態が3人のティーになったため膝の上は丁寧にお断りした。




「僕は今年出発遅めに出発したから先に出発したみんなも2、3日中には着くんじゃ無いかな?」


ほんの少し外に出ていただけだが身体は冷えきり、温かい飲み物が沁みる。



「ミリア、少しは落ち着いた?」


「はい。」


「…おい。」


「落ち着いてない話をしたばっかりでしょうが。」


オベロの質問に即答したのに、他2人からツッコミが入る。



正直これ以上話を広めても良い事はない気がするので言いたくはなかったのだが、しっかり察したオベロに対して黙秘はできなかった。



「なるほどそれは確かに落ち着いてもいられないね。」


2度目になる話を終えてオベロの言葉でみんな一息つく。




「まぁ大まかな話は聞いてたけど、確かにそれじゃあ心落ち着かないよね。」


オベロ曰く学園に報告の手紙が届きその話はすぐにタモンに伝わり、オベロや他の数人の耳にも届いているそうだ。




「本気で隠そうとされたら、僕ショックで交友を深めるために一緒に空の旅に連れ出すところだったよ。」


(無理に隠さなくてよかった…。)


オベロの話し方は冗談めいていたが、昨年の話を聞いているのでスッとお腹の底が冷えたような気がした。




「今度はもっと魅力的な場所でっていうのが気になるね。」


それは最後に聞いた言葉。




「何を持って魅力的と言うか。」


「そもそも何でミリアに接触してきたか。」


「それはやっぱりあれじゃないかな。」


スオウとオベロは心当たりがあるようだ。




「どうやってやったのかわからないけど、他人のティーを奪えるんだよ。」


「そりゃあ、唯一無二の能力が欲しくなる。」


2人の言葉に嫌な記憶が蘇る。




「バラ殿で会った時、自分のティーの感覚で言うなら美味しそうだって言われたのは…。」


「つまりそう言う事だろうね。」


「ティーが摂取することで、その力を身に宿すことができる。」


オベロの言葉はこの場にいる誰もが予想していたが、声には出さなかった言葉だ。



「そんな能力って…。」


「無いとは言い切れないよ。神様の話には子供を食べる親がいれば、親を食べた子もいる。」


代表的な話ではそうだが、宿敵や他人ならなおのことそう言った話はないわけではない。




「何はともあれ、ミリアのティーが抵抗できてよかった。」


「他の人ならその場で奪われてた可能性があったって事ですもんね。」




 

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