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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
134/276

24





7の数字というところに引っかかるものを覚えた。



「それってトランプの数字が7ってことですよね。」


「そうだよ。4人揃ってる上に、4人とも歳が一緒で全員変わり者と有名なんだ。」


スオウが諦めたように言う。




「大変言いにくいですが、姉さんの紹介でハートの7にはお会いしました。」


「…あの野郎。」


エイタが小さい声で悪態を吐く。




「まだ話が通じる人でよかったな。」


「まぁ、揃わなければ1人ずつは普通の大人たちだよな。」


普通というところにだいぶ疑問符がついていたような気がするが、気にしない事にしておこう。




「まぁ、俺たち学生は本当に何をするわけでもないんだよ。」


「大人たちは情報交換やら商談やらで忙しそうだけど、俺たちは本当に置いてけぼりだよな。」


「強いて言えば派手な衣装に面を付けて、入退場で大盛り上がりされる。4日間広い屋敷に閉じ込められて、美味しいご飯を食べれる。それだけ。」


エイタは本当にそれだけでつまらないとでも言いたいようだ。




「今年の面ってなんですか?」


「今年はシカだな。」


「面?シカ?」


いよいよ話についていけず、口に出してしまった。




「壁の外に出て屋敷までの移動中は面をかぶるんだよ。」


「面は東西南北それぞれで違って、東の街なら動物のシカだな。」


「毎年思うけどあれかぶると誰が誰だかわからなくなるんだよなぁ。」


「それも目的だろうな。表立って仕事してる大人たちならいざ知らず、俺たちが不特定多数に顔を知られていいことばかりじゃないだろしな。」


もし個人的に知らない人物から何かを求められても確かに困ると納得する。





「さて、そろそろお開きにするか…。」


「ミリアは俺が送って行きますよ。」


「俺も一緒に行くから待っててくれ。」


そう言っていつの間にか両手で抱えられるほどの大きさになったスオウのティーを手渡してきた。




立ち上がったスオウが声を張って食事会と旅の終わりを宣言する。


その言葉に各々が盛り上がりそして時間をかけて数人ずつが階段を上がっていく。


この食堂の上がそのまま宿になっているようだ。




「それじゃあ、2人ともおやすみ。ミリアはまた機会があったら寮に遊びにおいで。」


そう言ってシンも行ってしまった。



「さて、俺たちも帰ろうか。」


スオウにティーを返そうとするとティーは腕にしっかりしがみつき抵抗したため、ホテルまでそのまま抱いてやっててくれと言われた。


しっかりと上着を着込み外に出れば、雪は止み風の無い灯りの消えた耳の痛くなるほど静かだった。


それでも口を開けばあっという間に体温を口の中から奪われかねないほど寒く無言で並び歩いた。



そうしてホテルに到着すればハウニと別にもう2人のスタッフが出迎えてくれた。




「それじゃあ、お先に失礼します。おやすみなさい。」


しがみつき抵抗するティーを取り上げたスオウとその様子を面白そうに見ていたエイタに挨拶する。



「うん、おやすみ。」


「おやすみ。」


2人はそれぞれのスタッフに連れられてカウンターに案内され、ハウニと共にその横を通り部屋に戻る。





「ミルなのですが、夕方ごろから熱を出してしまいまして…。」


エレベーターの中でハウニが言う。



「それじゃあ、しばらくは会えませんね。」


「明日病院に連れて行こうと思います。」


ハウニは言いにくそう言う。




「私のことは気にせず、付いていてあげてください。」


放棄するわけではないが、仕事を一時的に離れることに対する罪悪感があるのだろう。



必要であれば別のスタッフを手配しますと言われたが、今さら新しい人に気を使うのもめんどくさいと言う本心を隠し丁寧に断った。


エレベーターが7階についたところで、ここまでで大丈夫ですとそのままハウニを下がらせた。




1度は寝室で寝ようかと準備をしたが気が変わり枕と毛布を持って奥の部屋に行き部屋の中央にクッションを集めそこで寝た。






「おでかけ?」


翌朝、遅めの朝食を食べたあと部屋には戻らず隣の複合商店に行くための扉を出たところでエイタとあった。



「毎日の散歩みたいなものです。」


本当は兄からの手紙を拾いに行くのだが、それをはっきりと伝えるわけにもいかない。




「そう、街中はもうほとんど探索した?」


「いえ、訳あって昨日夕食に誘われるまでホテルと隣の建物以外どこにも行ってません。」


「何かあったの?」


これははたして言っていいことなのだろうかと悩む。




「ここじゃあ、誰が聞いてるかわからないね。」


そう言ってスオウは紙を1枚取り出した。



「昼2時に11階、スオウさんの部屋で話そう。これ持ってればエレベーター操作できるから。」


そう言ってわたされた紙は自分の部屋があるフロアまでエレベーターを操作するためや部屋を開錠するためのものより簡易的だが、ホテルのカードキーのようなものには違い無いのだろう。



「スオウさん、今他の人たちの見送りに行ってるはずだから戻ってきたら話ししておく。」


「もう出発しちゃったんですね。」


昨日一緒に夕食を食べただけだが、少し寂しくなる。




「ハンターは行事が多いからこの次は参加すればいいよ。」


顔を見て察したのだろう。



「それじゃあ、またあとで。」


そう言ってエイタは去って行ってしまった。




 

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