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アニミ物語  作者: カボバ
世継榾編
124/276

14





「それで話を戻しましょうか。」


疑問から話が大きくずれてしまった。



「簡単に言うとね今回がその特例に当たるかもしれないわ。」


「へ…?」


思わず間抜けな声が出てしまった。



「そもそもなんで騎士学校の生徒がわざわざ警備隊として滞在するかってことよ。」


そういえばそうだ。考えてみればタイミングが良すぎる。




「今月末にはトランプの集まりが行われる。どう言うイベントかはあとから先輩にでも詳しく聞いてちょうだい。」


「そのための警備として招集されたと。」


「そう言うことよ。」


偶然といえば偶然だし、そうではないといえばその通りのことだった。




「まずは返信を考えましょうか。」


姉さんが大まかな案を出し、私が手紙として清書する。



私だと出せない可能性があるため姉さんが翌朝出発前に出しに行く事になった。




「それにしてもタクヤが会いたいって言い出すなんてね。」


クラスメイトへの手紙は今夜は書けそうにないなぁなどと考えながら兄に出す手紙を書いていると姉さんが言った。



「それは私も意外でした。」


距離的な問題と性格的なものなのか手紙のやり取りはこれまで年に1度、それもお互い手本のような文章でしかやり取りしていなかった。




「正直、顔も朧げなのよね。」


「実を言うと私もです。」


1度ペンを置いた。





「全然覚えてないわけじゃ無いんですけど、家族での思い出も席が1つ空いた状態のことの方が鮮明で…。」



当たり前といえばそうなのだが、いざ思い出そうと思ってもなかなか思い出せないのは心苦しい。




「今回会いたいって手紙が来ても、私もってなるよりどうしようってなってました…。」


姉さんは黙って聞いている。




「まだ会えるかもわからないのに今あって何を話せばいいんだろうとか、ぐるぐるぐるぐる考えちゃって。」


手紙は最後に名前を書き封筒の方に宛名を書くだけなのだが、一向に動いてくれない。




「いいんじゃない?」


吹き出すように出てきたその言葉に顔を上げる。



「明日会うわけでも無いんだからゆっくり考えればいいのよ。」


それもそうだと納得する。




先ほどまで重かった手が軽くなったような気がして、一気に書き上げ封をする。



「姉さん、お願いします。」


「了解。それじゃあ、今日はさっさと寝ちゃいましょうか。」


そう言ってもう1度おやすみの挨拶をしてから部屋に戻った。






少し悩んだが、個別での手紙の返信は次回にして今は無事に旅を続けている旨を1通だけ書いて出すことにした。




「申し訳ございません。ミリア様の面会は許可が得られれませんでした。」


次の週末に15の街に着いた。




先週出した手紙にこちらから面会をお願いするので、そちらからも面会をお願いしてほしい内容を書いた。


いざ壁に付けるようにして立っている建物に向かい、外の人との面会を申し込む。




外に出られない中に入れないその唯一の窓口となる建物の受付で、いくつかの紙に記入し確認を待つ。


そして戻ってきた職員に言われたのが姉さんは問題ないが私はダメという事だった。





「ご家族との面会という事でしたが今現在プレパートリー生でトランプのおひとりという立場から許可が得られませんでした。」


そもそもプレパートリー生だという点で許可が降りずさらに今1番警戒されるべきトランプという立場がここで障壁となった。




「どうする、ミリア?」


「姉さんだけでも兄に会ってきてくれませんか?」


何となく予想していた事とはいえここで姉さんに頼むしかないのはむず痒い。




「わかったわ、どこまで話す?」


「兄に隠し事はしたくないので、姉さんが話せることと兄が疑問に思うことは全部話して大丈夫です。」


「了解。」


話はまとまり姉さんだけが手続きをおこなって面会に臨む事になった。




「ミリア、ホテルに行っててもいいのよ。」


面会には行けないのでこちら側の待合で待たせてもらう事にしたが、先日の1件から不特定多数の人が出入りする可能性のある場所に1人で居ることを姉さんは不安視する。




「今回はちゃんと警戒しておきますし、姉さんと居るのも今日が最後だから待たせてください。」


姉さんは明日にはまた出発してしまう。



姉さんに任せられるのはこの旅ではこれが最後と言う事と、寂しさとが相まってしまった。





「わかったわ。行ってくる。」


そう言って姉さんは建物の奥に案内されて行ってしまった。




待合には誰もいない。


特にすることもないので本を取り出して読んでみるが集中力が続かない。


ぼんやりと窓の外を見て降る雪を眺める。



いっそうたた寝でもできればこの退屈で心落ち着かない時間もあっという間に終わらせることができたのかもしれないが、残念ながらそれも難しそうだ。



(退屈な時間は何をやってもうまくは行かない…。)


読書も寝ることも諦め窓の外を見る。


時間を忘れらるわけではないが、雪が降るというこれまでの人生で限りなく少なかった体験を満喫できるチャンスとして過ごす事にした。






「ただいま、ミリア。」


昼過ぎに面会に向かった姉さんが帰ってきたのは日が暮れてしばらく経ったころだった。




「姉さん、おかえりなさい。どうでしたか?」


「話はしてきたわよ。」


その話は夕飯を食べながらしましょうと言って建物を出た。




今夜までは泊まる場所も一緒だ。


外はもう真っ暗で雪が降り続いており街灯の灯りのおかげで歩く事に困りはしないが人通りは少なく寂しい。





 

よいお年を(2024.12.31)

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